2.第21章 対峙1
王宮のある神山は、ひときわ高くそびえ立った山だった。
そのため緑山や銀山等、他の山々を見下ろす形になっていた。
神山からは、周りの山々から火の手が上がり、各村々が制圧され、ゴ族の軍隊に落とされて行く状況が、刻一刻と解った。
「シバルバ族がゴ族に蹂躙され、侵攻され、ついにこの神山だけとなったか。」
王宮のテラスから、山々の状況を見ていたヤコック王は、深い溜息と共に言った。
後ろには武科長のカサス、卜占科長のイサムナが控えていた。
カサスが答えた。
「ゴ族の軍隊は、訓練された兵士達と鉄製の剣、弓、槍、盾、装備も充実しています。」
「我々との軍事力の差は歴然です。」
「だが神山は攻めづらい山、籠城してゴ族の侵攻を防ぎ切りましょう。」
「蓄えた食料は十分にある。」
「シバルバ族の衛兵達もこの日の為に、戦いの準備をしてきました。」
「思う存分、力を振り絞ってゴ族を蹴散らしてやります。」
イサムナがゆっくりと話し出した。
「ヤコック王様。」
「冬至の神事の生贄に読ませるシバルバ族の『創世神話』を、皆に教えてあげたいのですが。」
「人々は皆、ゴ族に殺されるという恐怖に取り付かれています。」
「せめて、精神的な安心を与えたい。」
「『創世神話』を読んで聞かせてあげて、安心させたいのです。」
「それは良い考えだ。」
「すぐ卜占科の方で手配して、人々に伝えてやってくれ。」
ヤコック王は快く了解した。
毎年の生贄の為の物語が、今や神山の人々の為の物語となってしまった。
死の恐怖は、すぐそこまでやって来ていたのだ。




