2.第20章 みなごろしの山1
影山の村は、神殿のある神山からは遠く離れていた。
特産物はトマトで、農耕を日々の仕事としていた。
冬の間は蓄えた食料で細々と暮らしていたが、日の出と共に畑に出て行き見回る事は、毎日の日課だった。
昨日の「冬至の神事」で、生贄が略奪された事など、一般の農民には知る由もなかった。
いつものように畑の様子を見に、外に出てみると、黒装束の一団が麓から登って来ていた。
黒光りのする鉄の帽子をかぶり、黒い衣服には鉄の板が縫い込まれている。
そして黒いマントをひるがえし、手に手に剣を持っている。
農民たちは、いぶかしんだ。
シバルバ族じゃない。
黒い髭を生やした、あの姿は?。
下界に住む種族のひとつ、「ゴ族」なのでは?。
「おいおい、おまえさん達。 影山に何しに来たんかねぇ?」
近づいて来たゴ族の大男が、剣を構えて答えた。
「冬至の神事に失敗した、シバルバ族を殺しに来たのさ!!!」
そう言うと剣を一振り、農民の首を切り飛ばした。
首から鮮血を吹き上げながら、農民は仲間の方に5~6歩後ずさりして、その後ばったりと大の字に倒れた。
キャーーッ!!!。 ウワー―ッ!!!。 ウオォ―――!!!。
そこから大殺戮が始まった。
シバルバ族の村人達は、いっせいに逃げ惑った。
ゴ族の兵士達は、シバルバ族を次から次へ、次から次へと殺して行った。
男も殺された。
女も殺された。
老人も殺された。
子供も殺された。
生まれたばかりの赤ん坊も殺された。
無抵抗の彼らを殺して行った。
シバルバ族と名の付くものは、すべて殺された。
影山に駐在していた武科の衛兵が剣を持って抵抗したが、ゴ族に取り囲まれ、切りきざんで殺された。
同じく駐在していた卜占科の術者は、老婆であった。
家のドアを蹴破って、ゴ族が侵入して来た。
「お前らの来る事は、わかっておったぞ!!!。」
「神に仕える我らシバルバ族を襲うとは、神の罰が与えられるぞっ!!!。」
「すぐに、引け―っ!!!。」
ゴ族の兵士はニヤリとすると、
「神の罰は、与えられている。おまえらシバルバ族になっ!。」
そう言うと、一突き、剣で術者の老婆の心臓を貫いた。
影山の麓から、次から次へとゴ族が押寄せ、次から次へとシバルバ族が殺された。
白い雪の大地に、真っ赤なシバルバ族の血が染まった。
家々は火を付けられ、村全体が炎と化した。
「夏至の神事」で脱走した剣士の村がある影山に、シバルバ族はいなくなった。
みなごろしの山。




