2.第18章 決死行2
「どうしたコアトル。早く儀式の短剣を渡せ。」
ヤコック王が促したが、コアトルはじっとエカリーを見つめたまま、短剣を渡そうとはしなかった。
正面のエカリーの瞳からは、とめどなく涙が溢れているのが見えた。
「父上、お許しを!!!。」
そう叫んだ途端、コアトルは後ろから思いっきりヤコック王に体当りした。
そして一目散にエカリーの縛られている石板に走り込むと、その縄を短剣で断ち切った。
「コアトル!!!。」
「エカリー大丈夫だ。僕を信じて!!!。」
「コアトル、何と云う事をする。正気かっ。」
「衛兵!。すぐに二人共捕まえろっ!!!。」
祭壇の上で投げ飛ばされたヤコック王が、態勢を整えて叫んだ。
階段の両脇にいた衛兵達が、いっせいに最上階へと駆け登って来た。
地上にいた武科長のカサスも一目散に最上階を目指した。
神殿ピラミッドを見つめていた群衆は、あっけに取られて言葉を失っていた。
そして大きなどよめきが、鋭くとがった山々を駆けめぐった。
「みんな近寄るなっ。みんなを傷つけたくはない。」
衛兵に取り囲まれたコアトルが叫んだ。
その手には名剣ポポルが握られていた。
儀式の短剣は、エカリーに渡していた。
と、儀式の白衣の下からヒモの束を取出した。
そのヒモを、石板の下にあった、突起状の石にくくり付けた。
「逃がすな。絶対に逃がしてはならん。」
ヤコック王もポポカに造らせた名剣を引き抜き、コアトルにせまった。
グン・・グン。
コアトルはヒモが外れないのを確認すると、エカリーを抱きかかえ最上階から飛び降りた。
「ああーーーーーっっ!!!。」
群衆から叫び声が聞こえた。
コアトルは、ヒモを握り締め緩めながら下の段に降りた。
さらにそこで、次のヒモを取出し、石に結び付け下へと降りた。
あっという間にその行動を3回繰り返し、神殿ピラミッドの後ろの地面に降り立った。
「くそう、コアトルのやつ、事前に準備しておったな。」
今度は階段を駆け下りながら、カサスが舌打ちした。
「逃がすな。取り囲め!。神殿ピラミッドの裏側は崖になっている。後からは逃げられない、取り囲めっ。」
カサスが叫んだ。
やっと地上に降り立ったコアトルとエカリーだったが、神殿ピラミッドの背面で、衛兵達に取り囲まれた。
万事休す。
崖を背にして剣を持つ二人の前に、階段を駆け下りて来たカサスとヤコック王がやって来た。
その姿を見るとコアトルは、剣を鞘に納め、エカリーを抱きかかえた。
そして、切り立った背面の崖に向かって身を投げた。
「何?!?!。」
二人の姿は宙に舞い、崖から生える木々の中に消えて行った。
「何と云う事を?!?!。」




