2.第14章 神話1
冬至の神事の生贄と決まって以来、エカリーは学校に来なくなっていた。
コアトルは毎日でもエカリーに会いに行きたかったが、ヤコック王はそれを許さなかった。
コアトルがエカリーに会えるのは、土日だけだった。
それでもコアトルは、毎日手紙を書いた。
エカリーも毎日、コアトルに返事を書いた。
二人の間を取り持ってくれたのは、大親友ポポルだった。
毎日毎日飽きもせず、二人の手紙を運んでくれた。
「二人の気持ちはわかる。俺のマヤウェルの時もそうだった。」
「どんどん手紙を書け。どんどん持って行ってやるから!!!。」
待望の土曜日、昼までの授業を終え、コアトルはエカリーの家へと急いだ。
エカリーの両親はコアトルを温かく迎えてくれた。
「コアトル王子。娘に気を使っていただいて、ありがとうございます。」
「どうぞゆっくりして行ってください。」
「娘のそばに居てやってください。」
「入るよ。エカリー。」
「また新しいお花が増えているね。」
「町の人達や、遠い村の人達まで訪ねて来て、毎日お花がいっぱいになっちゃうの。」
「天国ってこんな感じなのかなぁ…。」
「来年の豊作を願って生贄を差し出すわけだから、国中の人々が何かしらしてあげたいと、思っているんだよ。」
コアトルは話しながら、エカリーの傍らの椅子に腰をかけた。
その時、ベッドの脇のテーブルの分厚い本が目に付いた。
「何の本を読んでいるの?。」
「ああ、この本。お父上、ヤコック王様が直々に持って来てくれた本なの。」
「シバルバ族の成立ちを書いた『神話』の本よ。」
「神話???。」
コアトルはもう一度聞き返した。
代々生贄となる娘だけに、読み継がれている神話があった。




