2.第10章 春分の神事3-3
ウサギ狩りの競技は、円形の大拳闘場だけでは足りず、宮殿前の大広場も会場となった。
王族、一般人共に入り乱れて、何百人もの選手達がいた。
観衆達も合わせると、何万もの人々で、ごった返した。
ヤコック王の思惑は、成功したのだ。
10人弱の一つのグループが、規定時間内に、会場に放たれたウサギを馬上から弓で射止める。
矢羽根には、それぞれ色が付けられていて、誰が射止めたウサギかが、解るようになっていた。
馬を操る馬上の技術と、弓を射る技術の高さが問われるのだ。
そんな事は無いはずだが、他の種族が襲って来た時に、対抗する為の技術となる。
ヤコック王は、国の人々すべてに、高い技術を求めたのだ。
プオー プオー プオ――――。
ドン ドン ドン―――。
競技開始のラッパと、太鼓の音が鳴り響いた。
2つの会場に観衆達の、注意が集まった。
エカリーは、コアトルの姿を必死で探していた。
コアトルは、どちらの会場なのだろう?。
会場が、2つあるなんて知らなかった!。
人混みを掻き分けて、拳闘場と大広場を見て回っていた。
選手達の中に、コアトルが居ない。
エカリーの両親も一緒に来ていたので、共に探したが、見つからない。
「そんなはずは、無いのだけれど…。」
円形拳闘場の高い位置から、全体を見渡していた時。
群衆を掻き分け、掻き分け、こちらにやって来るコアトルを見つけた。
「コアトルー――!!!。 こっち!!!。 こっち!!!。」
エカリーは、夢中で叫んだ。
その声が聞こえたのか、コアトルも気が付き、すっと右手を上げ、大きく手を振った。
そして、その右手には、薬瓶が握られていた。
エカリーの、「あかぎれ」を直すための塗り薬だ。
競技開始だと云うのに、エカリーの為に、塗り薬を持って来たのだ。
コアトルもエカリーを、必死で探していた。
エカリーは、コアトルの優しさに感激し、自分の両手を胸に押し当て、群衆を掻き分けて、コアトルに駆け寄って行った。
競技直前なのに、エカリーの為に塗り薬を届けに来たコアトル。
優しい心を持った少年勇者。
また、コアトルに心配をかけまいとするエカリーも、優しい心を持った少女。
ウサギ狩りの競技は、どんな展開を見せるのか?。
気になる処ですが、今はここまでで。




