2.第9章 知の体系3-3
「書庫蔵には、何千万冊という蔵書があります。」
「そのシバルバ族の知の体系を、マント族に渡してしまうと云うのですか?。」
「蔵書は、暦に関してや、四季の出来事、作物の事、建築、医療等々、ひいては、各種族の暮らしぶりまで書かれている。」
「大切な、シバルバ族の知識の宝庫ですよ。」
「先ほど、父上が言ったばかりではないですか。」
「武の力も必要だが、知の力も必要と!。」
「その知の財産を、マント族に渡してしまうなんて、だめですよ。」
「解っているコアトル。」
「ワシは、国禁を犯したことになる。」
「この事をヤコック王に伝えたら、王は、ワシに罰を与えなければならなくなる。」
「また、この計画は、阻止されてしまうだろう。」
「そうなっては困る。」
「だが、次期王子のお前には、伝えておかなければと、思ったのだ。」
「ゴ族のシュバランケが、武の力でこの星を支配しようとしているのなら、マント族のフンアフプには、知の力で対抗して欲しい。」
「ワシは、そう考えたのだ。」
「神からの啓示もそう出ていた。」
「ワシの見立ては、間違っていないと思う。」
「そしてコアトル。」
「一旦、事が起こり、おまえが困った時には、マント族の所へ行け。」
「その時のマント族は、今のマント族とは比べ物にならない位、知の力を持った種族となっているはずだ。」
「どういう意味ですか?。イサムナ。」
「今日は本当に遅くなってしまった。」
「この事は、誰にも言わないでくれ。コアトル。」
「マント族が、蔵書を盗み切るまでには、時間がかかる。」
「書庫蔵が空になった事が発見されるまで、他言は無用だぞ。」
「私は寝室に戻るとする。では、おやすみ、コアトル。」
「イサムナ!。」
コアトルの呼びかけに、振り向きもせず、イサムナは、部屋を出て行ってしまった。
ベッドの上でコアトルは、窓の外の星空に浮かぶ二つの月を見ていた………。
イサムナは、何を僕に伝えたかったんだ………。
すると、窓の外の暗闇が、急に明るくなった。
炎が上がっている、あちらこちらで火の手が上がっている。
その中を、逃げ惑う人々。
黒い影が、人々を追いかけまわし、家々に火を付けている。
何が起こっているんだ。
逃げ惑う人々の中から、マヤウェルが走って来て、コアトルの所に来た。
大きく口を開けて、何かをコアトルに伝えようとしている。
必死に話しているが、その声がコアトルには、聞こえない。
「どうしたの、マヤウェル!。」と…そこで、コアトルは目が覚めた。
「夢かっ。嫌な夢を見た。」
「コアトル!。起きなさい!。学校に遅れるわよっ!。」
母である王女ヴェールの甲高い声が聞こえた。
コアトルは、寝汗でびっしょりになった下着を着替え、登校の支度を始めた。
コアトルにとって、何と長い一日だった事か。
また、いつもの日常が始まるのだろうが、それは、昨日までの日常とは、風景が違って見える。
不吉な悪夢は、悪夢のままで、終ってくれることを願う。
二十一世紀最大の、冒険活劇譚は、コアトルの活躍にかかっている。
進め!!!。
コアトル!!!。




