2.第1章 夏至の神事1
広大なシバルバ大陸の北方、切り立った山々が連なる一角に、シバルバ族の国はあった。
彼らは人間族で、金色の髪をなびかせた、優美な種族だった。
男たちは、金色のひげを思い思いに伸ばし、それを個性として、楽しんでいた。
女たちは、その美しい長い髪を、自分の好みに巻き上げたり、伸ばして編みこんだりしていた。
絹と麻で織りあげた服を着ていて、その白がまた、神秘的な光沢を放っていた。
シバルバ族は、王族と一般民に分かれていて、特に王族たちは、長いマントを着ていた。
王族たちの金色の髪とマントが、風に吹かれて佇む姿は、天使が舞い降りたようであった。
シバルバ族は自給自足で、切り立った山を削り取り、棚状にしてそこで農作物を栽培していた。
トウモロコシやジャガイモ、トマト、アボガド等を栽培していた。
おもにトウモロコシを主食としていた。
それを粉状にして、貯蔵もしていた。
牛や馬、リャマやアルパカを飼い、乳を飲みチーズを造っていた。
住まいは、切り出した石を積み上げて造った。
切り出した石は、ピラミッド型の祭壇の材料としても使われた。
ピラミッドの上の部分を切り取って、そこを祭事場としていた。
暗黒神と明白神への祭事一式を行っているシバルバ族にとっては、重要な建築物であった。
シバルバ族は、王族と一般民に分かれていたが、そこに対立は無かった。
ただ、婚姻は王族は王族同士で、一般民は一般民同士でと 決められていた。
王は、惑星シバルバの祭事一式を取り仕切っていた。
王族は王を頂点として、神事に関するあらゆる事柄に従事していた。
捧げ物の農作物や祭事用の刀剣、衣服を造っていた。
一般民は、農作業、農機具造り、石の切出し、運搬等々に従事していた。
貨幣は無く、物々交換で成立っていた。
王の基には、警護や取締りを行う武科と、暦を造り占術を行う卜占科があった。
子供が生まれると、卜占科の王族が占って、将来の住まいや仕事を決めていた。
農夫の子供が、卜占科によって特殊な才能を見いだされ、王族に入ると云う事もあった。
その子の特徴を見極め、その人生の道筋を見出していたのだ。
成人した子供が、自分で仕事を変えたいと云う申し出も、卜占科が対応して、本人の意向にあった状態に持っていった。
皆が自分の役割を心得ていて、労働と報酬を、快く行っていた。
それぞれの役割を心得ていたため、ねたみや嫉妬等とは無縁の世界であった。
困っている人が居れば助けるし、自分が困っていれば、助けてもらう。
何か問題があれば、武科と卜占科が、全て解決した。
どうしようもない問題が発生した時は、山移りと云って、住む場所を卜占科が決めて移住させた。
移住先には、仕事もあったし食事も普通にできた。差別されることは、なかったのだ。
取締りの武科はあったが、祭事用の剣の舞等で武力を誇示したが、実際その武力を使う事は何もなかった。
みな生きる事を楽しんでいたし、自分の存在価値を知っていた。
惑星シバルバの他の種族が、食うか食われるかの攻防と移動を繰り返す中で、シバルバ族は、この切り立った山々で定住生活を送っていた。
卜占科が年に二回、シバルバ大陸の中原に旅をする以外、他の種族との交渉も無かった。
ましてや普通のシバルバ族は、この国の事しか知らなかった。
神々に守られた生活。
シバルバ族は、惑星シバルバにおいて、ユートピアの世界に暮らしていた。
夏至と冬至に行う、年に二回の、最大の神事以外は………………。