第1話「ようこそ、バディズソウルへ」(挿絵あり)
「火蜥蜴の灼熱の息吹よ。我に集まりて破壊の炎となれ。ファイアーボール!」
魔法使いの杖から放たれた火球が、二人の剣士へと襲いかかった。
爆発、その寸前。
二人は人間離れした跳躍で左右へ散る。
直後、火球が岩場に着弾し、爆炎が巻き上がった。
「くそっ!」
悪態をつく魔法使いを、その前に立つ味方の剣士が嗜める。
「高所は取れてるんだ。そのまま撃ち続けろ」
魔法使いは緊張した面持ちで頷いた。
二人ともまだ若い。中学生くらいだろうか。まだ少年と言ってもいい年齢だ。
一方、火球をかわした二人の剣士は、余裕の表情で念話を交わしていた。
非常によく似た二人だった。
年は二十歳くらい。
両手に一本ずつ、合計二本の剣を手にしている。いわゆる二刀流だ。
身を包むのは、機動性を重視した軽量の革鎧。
荒れ果てた岩場を、オリンピック選手もかくやという速度で駆け抜けていく。
「セイバー×キャスターだなぁ」
「バトロワ初挑戦のニューBだろ?」
「ストーリーモードなら強いんだけどな」
「まあ、勉強してもらおうぜ。ライト」
「あいよ、レフト」
二人が左右へ分かれた。
挟撃。
少年剣士が魔法使いを守るように前へ出る。
右手に片手剣。左手には盾。金属鎧を着ていて守りは硬い。
その左右から、ライトとレフトが一気に距離を詰めた。
四本の剣が迫る。
(オレが耐えれば魔法使いがきっと仕留めてくれる。)
少年剣士は覚悟を決め、盾を構えた。
……来る!
そう思った。
だが、予想していた金属音は鳴らなかった。
「なっ……」
ライトとレフトは、少年剣士の左右をすり抜けていた。
二人の狙いは最初から、その後ろ。
魔法使い。
通常なら、前衛を無視して背中を晒すなど自殺行為だ。背後から攻撃されれば軽装のセイバーではひとたまりもない。
だが。それは攻撃する時間があれば、の話だ。
少年剣士が振り返った時には、もう遅かった。
四本の剣が魔法使いへ殺到する。
一閃。
二閃。
三閃。
四閃。
立て続けの斬撃に魔法使いのヒットポイントがゼロになり、身体が光の粒子となって宙へ霧散した。
《RIGHT KILLED HENRY》
《TEAM SCISSORS +1 POINT》
システムメッセージが脳裏に響く。
ライトが振り返り、少年剣士にニヤリと笑った。
「悪いけど坊主。セイバー×キャスターは、バトロワじゃ相性最悪だぜ」
レフトが反対側から回り込む。
前後から迫る、四本の剣。
それが少年剣士がゲームオーバー前に見た、最後の光景だった。
用語集
ファイアーボール:キャスタークラスが使用する炎属性の範囲魔法。中程度の攻撃範囲と高い威力を持つが、弾速が遅いため直撃させるには工夫が必要。
セイバー:剣士。高い攻撃力と機動力を備えた花形クラス。攻撃重視の二刀流や両手剣、防御重視の片手剣+盾など、装備によってビルドが派生する。
キャスター:術士。全クラス最大の攻撃力と範囲攻撃を持つクラス。火力重視のスタッフ型、バランス型のワンド型、機動性重視のリング型などのビルドがあるが、どのビルドも防御力は非常に低い。
ニューB:ニュービー(新参者)とランクBを掛け合わせた言葉。バトルロイヤルへの参加条件がBランク以上であることから、参加したばかりのBランクプレイヤーをこう呼ぶ。




