第6話:お兄さんと無邪気な妖精たち
炭焼き小屋に戻ると、アヤと共に一人の男が立っていた。
子どものような見た目だが、作業服を身にまとい手拭いで汗を拭く姿から察するに、マリナの言っていた『先生兼用務員のお兄さん』なのだろう。
そんなことを考えていると、男は笑顔でアスカ達に声をかけてきた。
「おっ、君が今日来たっていうアスカさんだね?」
「はい。今日からお世話になります。」
アスカが挨拶を返すと男は「ははっ!」と笑う。
「礼儀正しいね。でも、そんなに畏まらなくても大丈夫だよ。俺はケンイチ。この炭焼き小屋と畑の管理、あとは力仕事全般を任されてる。」
ケンイチはそう言って親指を立てる。
「はぁ………。ルリさんはどうしたんですか?」
アスカはそれに返事しつつ、アヤに尋ねる。
「部屋に着替えに戻ったよ。あっ、燻製食べる?」
アヤが燻製を一つ差し出してきた。
「いえ、私は——。」
「「あーっ!!」」
アスカは断ろうとしたがそれを遮り、誰かが声を上げる。
声のした方を見ると、ケンイチが立っている。と、その後ろから二人の少女が現れた。
「アヤちゃん!新しいの出来たの?!ちょうだいっ!!」
赤毛の少女が目を輝かせながらアヤに飛びかかる。
「おなか空いたですっ!!さっさとよこしやがれ~!!」
栗毛の少女もそれに続くようにアヤに飛びかかった。
アヤはひょいとそれをかわすと、二人をなだめる。
「ど~ど~。……いいかいお二人さん。まずは目の前のお姉さんに挨拶からでしょ?」
「ん?」
「お?」
アヤに言われてようやく気づいたのか、少女達の目がアスカを捉えた。
「新しい子だ!わたしコナツ、よろしくおねがいしまーす!」
赤毛の少女―コナツが手を挙げて挨拶する。
「知らない子だ!ヒナコはヒナコですよ!よろしくおねがいします!」
栗毛の少女―ヒナコも続いて挨拶する。
「アスカです。よろしくお願いします。」
挨拶を返すと、二人はアスカの方へ近づいてくる。
「ねぇねぇねぇ!アスカちゃんはどこから来たの!?」
「え、えっと、町から来ました。」
「町から!?すごーいっ!」
「アスカちゃんもくんせー食べるですよ!!」
「い、いえっ、私は―」
キャッキャッと笑う二人にもみくちゃにされるアスカは、二人の勢いに圧されてしまうのであった。
その後、制服に着替えて戻ってきたルリによって二人の追求から逃れられたアスカは荒くなっていた息を整え、ルリの勧めもあって燻製を一つかじる。
「……大人の味ですね。」
スモーキーな香りに香辛料と野性味の強い肉の味が広がる。何の肉なのだろうか。
「イノシシ肉だよ。昨日獲ったやつだから、新鮮なやつ。」
ケンイチがそう言って力こぶを作って見せる。子どものような見た目の彼ではあまり様になっていないが。
「狩猟までしてるんですね。」
「基本は罠だけどね。銃もあるけど、ほとんど使うことは無いかな。」
「それでもすごいです。」
彼も大人なのだと、そんなことに感心するアスカであった。




