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出来損ないと呼ばれ追放された魔王の子供は国を創造し王となる  作者: aosakishinnosuke


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8/12

遠征

虚無の核を砕いた三日後。


空に、小さな黒い点が残っていた。


消えない。

閉じない。


アークはそれを見上げる。


「……入口だ」


ゼルが腕を組む。


「向こうが本体ってわけか」


都市中央塔に市民が集まる。


恐怖よりも先に理解があった。


終わらせなければ、また来る。


アークは告げる。


「遠征する。

戻れる保証はない」


沈黙。


そして――


「行ってこい!!」


誰かが叫ぶ。


拍手が広がる。


ゼルが笑う。


「背中押されすぎだろ」



兄弟は門をくぐる。


感覚が消える。


音も重力もない。


そこは“空間の前段階”。


無限の黒い海に、

白い点が浮かんでいる。


それが――虚無の本体。


惑星より巨大な“思考構造”。


「観測体、侵入確認」


声ではない。


存在の揺れ。


ゼルが低く言う。


「……あれが親玉か」



ゼルが断界を放つ。


届かない。


アークの創造も弾かれる。


虚無はここでは絶対存在。


「世界は誤り。

無へ回帰せよ」


黒い波が広がる。


兄弟の身体がほどけ始める。


存在が希薄になる。


アークが息を吐く。


「ここは……俺たちのルールじゃない」


ゼルが笑う。


「だったら持ち込めばいい」



アークは目を閉じる。


都市を思い出す。


笑い声。

市場。

橋のきしみ。


「クリエイト――《遠隔同期》」


白い線が門を越える。


都市リベルタと兄弟が繋がる。


ゼルの力が戻る。


虚無が揺れる。


「外部定義……侵入」


ゼルが吠える。


「ここは俺たちの世界だ!!」


断界が通る。


虚無の外殻が裂ける。



内部は記憶のない空間。


ただ“否定”だけがある。


虚無の意思が形を取る。


巨大な影。


「なぜ存在を選ぶ」


アークが答える。


「誰かが笑うからだ」


ゼルが続く。


「壊す価値があるからな」


虚無が暴走する。


兄弟を飲み込む。


アークの光が消えかける。


ゼルが手を掴む。


「離すなよ」


「最初からそのつもりだ」



二人の力が重なる。


創造が“存在の理由”を与え、

断界が“否定”を切り離す。


アークが叫ぶ。


「存在は誤りじゃない!」


ゼルが叩き込む。


「選択だ!!」


光が爆発する。


虚無の核心に触れる。


そこには――


何もない。


ただ“恐れ”だけがあった。


消えることへの恐れ。


アークが静かに言う。


「お前も……存在したかったんだな」


白光が包む。


虚無が震える。


「理解……」


黒がほどける。


消滅ではない。


変換。


虚無は白い粒子となり、

世界へ還る。



兄弟は門の前に立っていた。


都市が見える。


空は青い。


ゼルが息を吐く。


「終わったな」


アークが頷く。


「今度こそ」


二人が帰ると、

市民が迎える。


歓声。


涙。


誰かが叫ぶ。


「おかえり!!」


ゼルが笑う。


「ただいま」


アークも笑う。


世界は続く。


壊れながら、

直しながら。


それでいい。

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