お休み、狩り、防具新調
つ、疲れた…
冒険者って、こんなにブラックなのかと思ってしまった程だ。
そこまで思うほどに、私は精力的に働いた。
そのため、まだ子供なのに少しやつれてしまい、
カティさんに心配され、エレンさんに報告がいき、
遂には、ギルドマスターに強制的にお休みを言い渡された。
まあ、やってきたことがやってきたことだからなあ…
あの後に、第一公衆浴場を四日かけて綺麗にした。
男湯に二日、女湯にも二日だ。
浴場の汚れがひどくて、簡単には落ちなかったのだ。
そのために、片方に二日もかかった。
その間は第一公衆浴場は入浴禁止となった。
代わりに、第二公衆浴場に人が溢れて、それで管理人がまた、
一日中仕事をする羽目になっていた。
本当にブラック過ぎないか、この世界?
大丈夫?と問いかけられたら、泣きそうです。
管理人がその状態のため、第一公衆浴場を清潔にするための、
スライム探しまで私がやることになった。
サーチマップの魔法を使えば、街中でも簡単に見つかったけど。
私も私で眠れていないのだ。疲れでぐっすりとは寝るのだが、
精神的な疲労で疲れが取れない状態だ。
四日間、魔法を便利に使い過ぎたため、魔力衰弱も起こした。
依頼の達成報告をしに、カティさんに依頼書を出したら、
冒頭の出来事が発生したというわけだ。
現在、お休み二日目。
ギルド併設の酒場から、食べやすいスープ粥を朝食にもらった。
これが人の温かみかと、お休みの二日間の間の人の優しさで、
滂沱の涙を流す私に、周囲をオロオロとさせてしまった程だ。
そのせいか、そのおかげかはちょっとわからないが、
ほかの冒険者たちが、精力的に私が綺麗にした公衆浴場を、
綺麗に使うように、と市民に根回しをしてくれたようだ。
その話が美談となり、私が大人になってもついて回るとは、
このときは思わなかったけどね。
なんなんだよ、公衆浴場を綺麗にした少年天使って…
そして、市民からの評価、公衆浴場の管理人から話が通り、
領主様にも評価されたらしく、早々に私の階級は銅級になった。
異例の早さで昇級した。本来やっかみが来るはずなのだが、
どちらかというと憐みの視線のが多い。なぜだ!
もちろん称賛する声もあるんだけどね。
そんな中、私の様子を見にやってきた父。
なぜかギルドマスターから、浴場の件で父に注意がいく始末だ。
私はブツブツと父に文句を言われてしまったよ。
そして、以前に分けていたお金を父に渡して帰ってもらう。
この構図に、カティさんとエレンさん、ほかの職員たちが、
とても冷めた視線を父に向けた。
違うんだと言う父、私からも説明するも信じてもらえずに、
父の評判は最悪のものとなった。
エレンさんはあの場にいたでしょ!
と言っても、苦労しているのねの一言で流されてしまった。
ご、ごめんよ、父さん。
今度、母さんも連れてきて、ちゃんと説明してもらおうね。
父さんは若干涙目で、小さく「そうする」と呟いていた。
そんなすったもんだがあり、階級が上がった説明をしてもらう。
説明してくれるのは、私の担当と言ってもいいカティさんだ。
「銅級に上がるの早かったねえ、コースケくん。
偉いぞ、少年?依頼を選り好みして、中々階級が上がらずに、
腐っていく冒険者は数多くいたのよ。
ホント、多くの冒険者に見習ってほしいものだわ。
それで、説明だったわよね?まず、階級の説明をするわね。
階級は鉄、銅、銀、金、白金、金剛級と存在していて、
順番に上がっていくわ。
でも、金級からはギルドの高難易度の指名依頼も発生するわ。
これを避ける冒険者がいて、ほとんどの人が銀級よ。
誰しも命が大事だからね。危険な依頼は避けるわ。
だから、実力は金級以上の銀級の人も中にはいるわね。
そういう人たちとは、仲良くなっておくといいわよ?
大抵、気さくでいい人たちばかりだからね。
それに銀級は依頼を受けなくても、階級が下がることはないの。
銅級までは依頼を一定期間に受けないと、階級が下がるわ。
銅級は一年間依頼を受けなかったら、鉄級に戻るわ。
だから、気をつけてね。
あとは銅級からは、パーティの申請が出来るようになるわ。
鉄級までは個人の資質を見るため、一人で活動させているの。
パーティを作って組むのには申請が必要よ。
それからパーティに入るのにも出るのにも、申請が必要。
悪い人たちは、お試しと言って、パーティに参加させずに、
労働力として、君のような新人をこき使う人たちもいるから、
本当に、本当に気をつけてよね?
それじゃあ以上で、説明は終わりよ。
わからなかったことはあるかな?」
「いえ、大丈夫です。階級のこと、パーティの仕組み。
しっかりと理解しました。僕は銀級を目指そうと思います。
階級が下がらないようですし、目立ちたくないですからね」
「目立ちたくないは、もう無理だと思うわよ、コースケくん?」
「誰にだって、目を背けたい時はあります…」
「大変だねえ、君も…」
私は銅級からの説明を受けて、依頼書を見に行く。
常設依頼も結構種類が多いなあ。
薬草の採取や害獣の駆除、それと一つ上の銀級の魔物討伐か。
下の階級の依頼は受けられないって言ってたから、
もうペット探しや店番とかは出来ないなあ。
個人的な依頼なら受けてもいいみたいだけど、
報酬が払われなかったりなどのトラブルが多いらしい。
うーん、薬草採取って簡単なのかなあ?
ただの草を見分けるなんて、私には出来ないぞ?
それなら、害獣駆除の方がまだ簡単そうだな。
えっと、害獣は角ウサギと草狼?
街道で馬車の馬を襲うことから、害獣指定のようだ。
人を襲うこともあるが、大人ならまず負けることはないみたい。
怪我をすることはあるみたいだけど。
へえ、角ウサギは肉も食用可能なのか。
だから、肉も買い取り対象と。毛皮も大きければ買い取るのか。
全身余すことのない害獣って、素晴らしいな。
討伐部位の角も薬などに使われるそうだ。
うーん、生きたまま持ち帰ってもいいのかな?
川なんて近くにそうそうないだろうからなあ。血抜きがな。
毛皮の剥ぎ取りも下手くそだから、解体はギルドに任せたい。
あとで解体の受付で聞いてみよう。
銀級の常設依頼の魔物討伐も簡単そうに見えるな。
依頼報酬はそこまで高くないが、鉄級と比べたら多い方だ。
土狼、か。
こちらは牙が異常に発達した存在で、普段は群れで行動する。
だが、まれに群れからはぐれた存在が、街の外の草原に出没。
見かけたら討伐するように、とのことだ。
よし、大体方針は決まったから、解体受付に相談だ!
相談の結果、角ウサギ程度なら生きたままでもいいと言われた。
危険な生物は、生きたまま持ち込まないでくれとのことだ。
さて、昼食も食べたし、街の外に行きますかね。
うーん、外の空気はおいしいな!草原の香りもいい。
あの頃の都会にはなかった匂いばかりだな、こちらの世界は。
さてさて、簡易地図を出すために、サーチマップっと。
今回の対象は角ウサギがメインで、草狼は雑に狩る予定だ。
土狼に関しては、いたら倒すという方向で。
うん、あちこちに角ウサギいるね。
大きな籠を借りてきてよかったよ。これで持ち運びが楽になる。
さあ、角ウサギ狩りだ!目指せ、新しい防具、ローブの購入!
たくさん狩るぞー!
勢い込んだものの、すぐに籠が一杯になり、帰ることになった。
こんな簡単に狩りしていたら、草原の角ウサギが消えるかも?
そんな心配をしてしまうほどに、大量に取ってしまった。
なにせ見かけたら、即座に麻痺魔法のパラライズを打つだけだ。
あとは拾って籠に入れるだけ。ねっ、簡単でしょ?
ギルドに帰ってきたら、驚かれたよ。
こんな早さでこんなにも取ってきたのかと。
生きたままなので、買取金額も通常より高い。
私はもう一回行くのでと、籠をもう一つ借りることにした。
解体の職員さんが、程々になと言っていた。
職員の人でもやっぱり、そう思うよねえ…
私はもう一度草原で狩りをして、今日の狩りはやめた。
私は角ウサギ狩りをここ数日間繰り返している。
草原の角ウサギの個体数を確認する。ちょっと減った気がする。
そのせいで、飢えた草狼が多くなり、馬の被害が増えたそうだ。
少々、解体職員さんにジト目を向けられた。私悪くない。
そのため、今日は必然的に草狼狩りです。討伐部位は尻尾。
肉はまずい。毛皮もゴワゴワで需要なし。死体も放置でよし。
楽な狩りになりそうだな、と一人笑っていた。
今日も籠は二つ装備だ。たくさん狩るぞ、えいえいおー!
はい、こちらコースケです。籠が尻尾で一杯になりました。
二つともです。なので、強制的に帰ることになった。
今回の狩りは、ショックボルトで感電死させた。
一匹ずつ丁寧にやりましたよ。あとは尻尾を切るだけの作業だ。
単体魔法はこういうときに、不便だなと感じた。
まあ、連発すれば一度に二匹は狩れるんだけども。
ギルドに帰ると、呆れ顔をされた。
私も気をつけてはいるんですよ?生態系を壊さないようにと。
今回はちゃんと個体数を確認しながら狩りしましたから。
解体職員さんには、今日はもう休めと言われてしまったよ。
せっかくだから、防具屋に行こうかなあ。
数日でそこそこお金貯まったから、ローブを探そう。
防具屋に行くと、魔法付与されていて高いよ?と言われて、
そんなになのかなと値段を見て、顎が外れかけた。
最低でも、金貨が五十枚からだったよ…
なので、私は機能よりも見た目重視にすることにして、
中古の服屋を訪れた。
おー、意外と数があるね。これはありがたい。
さっそくローブを物色する。うーん、フードがあるのがいいな。
お、これなんかいいんじゃないと手に取るとやや大きい。
まあ、成長したらぴったりになるでしょと購入した。
購入したローブをさっそく着る。
深緑のロングコート風で、フードもあるから雨避けも可能だ。
結構しっかりした作りでカッコいいんだ、これが。
ついでに、ベルトとベルトに着けられる小物入れも買った。
これは先輩冒険者が教えてくれた。
野外で食事を取ることもあるから、最悪でも塩は持っておけと。
なので、調味料も物色した。だが、高かった。
代わりにハーブがないかなと探した。今度は見当たらない…
香りのついた乾燥した草がないかを店員に尋ねる。
それなら薬屋だよと店員に言われた。
段々とたらい回しにされている気がしてきたぞ?
そして、無事に薬屋で乾燥ハーブも購入できた。
ここまで揃えてなんだけど…
野外で食事する機会なんて、私にあるのかな?




