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31 物語が始まるの遅くないですかねぇ?

攻略キャラ全員とようやく接触です。

はい、攻略キャラコンプしました!

脳内でくらい茶化さないとやってられない。

朝は始業時間ギリギリに、昼休みはお姉様とランチを共にする事で、放課後は脱兎のごとく帰る事で避けていた攻略キャラとの邂逅。

三日間で終了となりました。

イオリテールはお姉様が宣言通りに“お話”をして私とユシルの仲に口を挟まないと約束させたらしい。

王太子は忙しいのか、この頃はユシルとデートしている様子も見られない。

騎士と王弟は人がいる前で返り討ちにあったからか、遠巻きに視線を感じる事はあったが声を掛けてくる事はなかった。

サスケの報告によれば「悔しそうな顔をしてたっす」だそうだ。

きっとまたやり込められるかもという懸念の為、人前で話しかけられないのだろう。それを見越してこの三日はなるべく一人にならない様にしたのだから。

「聞いているのかセルリア・フォル・オルレンス」

聞きたくないんだよ、わかれよ。

ちょっと現実逃避するくらい許してくれよ。

運悪く人気のない廊下で呼び止められてしまったので仕方なく応対する。今すぐ走って逃げてもいいですかね?

できないけどね、それを口実に後で呼び出された方が逃げられなくなるから。

「どちら様でしょうか?」

嫌々ながら返事をすれば満足気に口端を歪めたのは侯爵だ。三日前の予想通りに接触してきた。

「これは失礼した。私はルオイ・テラ・トレストという」

あ、棒読みじゃないとか普通な事に感心してしまう。

画面の中では無音声か棒読みのどちらかだったので違和感を持ってしまう。

「なんの御用でしょうか?」

違和感を振り払い応答する相手は私の名前を知っている様なので敢えて名乗らない。もう取り繕うのも面倒だ。

「分からないのか?そんなはずはないだろう?」

厭味ったらしく言い放つ侯爵は二次元だと思えば許されるが現実にいると思えば殴りたくなる手合いだ。

手が出ないうちにお引き取り願いたい。

「さぁ?初めて会う方のご用事など予測も立てられませんわ」

用件なんて決まってるけどね、その用件までたどり着きたくないんです。

「ほお?オルレンス嬢がコレンス嬢に対してした事の覚えがないと?」

怒りを抑えて唾棄する様に言われた言葉には首を傾げる事で返す。むしろあっちの方が自覚してませんよ、私に対してした事を。

「コレンス嬢…、同室の方ですね?その方がどうかされまして?」

「惚けるな!貴様はユシルに対して無礼を働いたのだろう!?」

身分的には子爵令嬢(わたし)の方が男爵令嬢(ユシル)より上なんですけどね。

「全く身に覚えのない事ですわ、失礼ですがトレスト卿はどこからその様な話を聞いたのですか?」

あとせっかく最初はコレンス嬢って言ってたのにユシルになってるよ、隠せてないよ色々と。

「ユシル本人からに決まっている」

「つまりトレスト卿は当人の言い分のみを信じて私を糾弾しにいらっしゃったと…」

「ユシルは優しいからな、お前が反省すれば今まで通りの付き合いをしてやるといっている。感謝するんだな」

上から目線もいい加減にしましょう、貴様とかお前とか言っていい言葉ではない。あとユシルは優しくないよ、優しいなら言いつけたりせずに自分で話をつけにくるよ。例え本当に私が悪かったとしても。

「コレンス嬢が虚偽を仰っている場合もございますでしょう?」

「ユシルが俺に嘘を吐くわけがないだろう」

一人称すら取り繕えないのならトレスト侯爵が引退する前に別の後継者を立てる事を推奨します。

「それはトレスト卿の主観でしかありません。人は思い込みによって結果として虚偽を申してしまう事もありますわ」

ふぅ…とワザとため息を吐いた後に相手の目を見据えてハッキリといってやる。

「トレスト卿は問題が起きた時にどちらか一方の申し立てのみを聞いて判断を下すのですか?」

「それは…」

頷けるはずがない。

これに頷いたら単なる無能だ。もしも頷いたら容赦なく噂を撒いたけどね。

「それに目撃者の証言は集めたのですか?

いえ、聞いていただけたのなら少なくとも最初から糾弾する事はありませんわよね?」

「………」

身長差によりどうしても見上げる形になってしまうが冷たく睨む。

「当事者同士の話し合いでは収まらない感情や思い込みが邪魔をして物事を正しく判断できない事があるのは十分承知の上ですが…少なくとも介入してくるのなら冷静に判断できる方にお願いしたいものですわ。

どちらか一方に肩入れをする事無く公正に判断できる方ならともかく、最初から一方が悪いと決めつける様な方は論外ですわね」

せめてこちらの言い分も聞く耳を持ってから話しかけて来い。

「ではオルレンス嬢の話も聞こう」

「信用できないので結構ですわ」

悔しそうにされた譲歩を切り捨てる。

「トレスト卿はコレンス嬢に特別な思いがおありなのでしょう?それでは冷静な判断ができませんもの」

「そんな事は…」

「あら、特別な思い入れもないのに私は一方的に糾弾されたのでしょうか?」

「それは…」

「そもそも第三者の介入は必要ありません」

肯定も否定もしにくい質問をしてそれ以前の問題だと告げる。

ユシルがもう少し頑張ってくれないと当事者同士の話し合いもできない。

「却って拗らせるだけだと思いますのでご遠慮くださいませ、トレスト卿」

そもそも女の諍いに男が入ってくるものではない。拗れるだけだ。

碌に真偽を確かめる事なく一方的に断罪すれば反感を買うのは当然だ。現に私の機嫌はどんどんと低下している。

そもそも私を置いて帰った日に「心配した」とはいったが「置いていってごめんね」の一言もなかった。

メルーセが教えてくれなければ暗い校内をユシルを探して歩く羽目になったというのに!あ、なんかムカついてきた。

ここらでもう一回“話し合い”をする必要があるかもしれない。

攻略キャラとか面倒な相手に話しかけられるのは本当に止めてもらいたい。今まで通りに放っておいてくれてていいんですよ?是非そうしてください。

「お話がそれだけなら失礼させていただきます。私、こうみえて忙しいので」

レポートはまだ一行も手を付けてないんだよ、サスケが持ってきた資料を読んでるだけで。他の教科も勉強しなくてはいけないし。

淑女の礼(カーテシー)をしてから場を辞する。全く、無駄な時間を過ごしてしまった。

これからは今まで以上に一人にならない様にしなければ。

ボッチでなければ友人と寮に帰るまで一緒にいさせてもらう方法もあるんだけどね。

後ろから突き刺さる怒りの視線は無視だ。怒鳴りつけてこないという事は私が言った事に一理あると思ったからに違いない。今度は話しかけてくる前に裏をとってくるはず。

その時にユシルの言動の矛盾に気付いてくれればいいのだが…、無理かな。色ボケだもんな。

それにしても…卒業パーティーまで後二か月程というこの時期にようやく攻略キャラ全員に接触とか、物語が始まるの遅くないですかね?

あ、王太子とはまだ話した事ないか。

なんとなく話した気になってたよ。


部屋に戻ればやっぱり正座で待機していたサスケにまたカッコいいと褒めてもらえました。

程なくして戻ってきたお姉様に興奮した様子で私と侯爵との対決の様子を語る。その様子が幼児が一生懸命に母親にこんな事があったよと報告する様を想起させた。

「…優秀な方だと思っていたけれど、女性一人にここまでダメにされるのね」

ふぅっとため息を吐くお姉様は辛辣です。

「セルリアの言う通り片一方の証言だけを聞いて、もう片方を糾弾するなんて為政者としてしてはいけない行為ね」

ですよね、私間違ったこと言ってないですよね?

「イエウール卿やベキースタ教諭の件も含めてイオに話しておくわね?」

「どうしてそこにイオリテール様がでてくるんですか?」

「イオが父親のケオグジヤ侯爵にお話しすれば陛下の耳にも届く可能性があるでしょう?」

つまりは告げ口ですか、国の最高権力者に報告行くとか怖いな。

まぁ騎士や侯爵はまだしも王弟は完全な身内ですからね、ちょっと注意くらいしても罰はあたるまい。

て、ん?

「あのリオルド先生の件も…ですか?」

お姉様ってリオルド・ジャッロ・ベキースタが王弟って知ってるの?

「ああ…そうねセルリアは知らなくても不思議ではないわね。ベキースタ教諭は陛下の弟君なのよ」

「え?」

私が驚いた理由はお姉様がその事実を知っていたからだが、お姉様は純粋に私がリオルド先生の正体を知らなかったと思ったらしい。助かった。なぜ知っているのか理由を聞かれても答えられない。

「少し出自が複雑な方で…今は王位継承権を返上して一研究者兼この学園の教諭として過ごしておられるの」

「そうだったんですか…」

なるべくワザとらしくありません様にと願いながら頷く。

「ご本人は今の身分に不服はない様だし、むしろ生き生きと研究をしていると思われるわ」

お姉様、なんでそんな事まで把握しているんですか?

やはりオルレンス子爵家は忍者を多数雇っているだけあって情報戦には強いのでしょうか?




評価、ブクマありがとうございます!

いつもお話を読んで頂きありがとうございます。

明日(15日)はこちらの更新はお休みし、別の短編をupする予定です。

詳しくは活動報告をお読みください。

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