32 うちの子はあげれません!
ユシルとの距離感はそのままに二週間が経過した。
攻略キャラからのちょっかいの頻度は上がっているが、上手く逃れる事ができている。
メルーセやお姉様がフォローを入れてくれるおかげです。本当にうちの使用人は優秀です。
サスケは私に直接的な危害が及ばない限りは影から見守るのに留めるそうですよ、まぁユシルの本命がサスケである以上は出張られるとより面倒ごとに発展しそうなので構いませんが。
「そろそろアバズレが仕掛けてくると思うっす」
お姉様の部屋は一人部屋だからか、戻ってくるとサスケが待機しているという状態が普通になりつつあるし私もそれを受け入れてはいるけれど。
女子寮なので普通に男子禁制なんですよね、身内ですらよっぽどの理由がないと一階にある応接室での面会が主流となっている。
「ユシルが仕掛けてくるって…どういうこと?」
毎回過ぎてもう指摘するのを諦めたが、やはりアバズレという称し方はどうかと思う。聞く方の身にもなってくれ。
「だって、そろそろレポートの提出日じゃないっすか」
「ああ…」
私とユシルの不仲を大々的に知らしめたレポートは、あと一週間で締め切りとなる。
一人で書いているからと締め切りを延ばすなどの恩情は一切得られなかったが、無理をいって提出方法を変えてもらったのだから妥当な判断だ。
ただ我儘を許すだけでは追従する者がでる。
サスケが資料集めを手伝ってくれたし、お姉様からは詰まった時に視点の変換などをしてもらったおかげで大体は終わっている。
後は精査と肉付けで規定枚数まで膨らませれば完成だ。
「それがどうかした?」
「他の誰かに声を掛ける事もせず、かといって自分でレポートを作成している様子もないっす」
続けてされた報告に納得する。
つまりはなんとか私のご機嫌を取り共同で作成しましたという体裁を取りたいという事か。
「取り巻きに手伝ってもらえばいいのに」
虫はお姉様に夢中だし、王太子は理由はわからないけど今はユシルと一定の距離を置いているらしく周りにいるのは王弟と侯爵と騎士の三人。
だが一人は教師だし、残りの二人だって成績優秀者。ユシルが望めば課題の手伝いくらい喜んでするはずだ。
上手く手伝ってもらう箇所を分散すれば三人に全てを任せる事だって可能だと思う。
「その取り巻きなんすが…最近ちょっと様子がおかしいんすよね」
「どういう風に?」
その三人のイベントは五番目まで全て終えているはずだが…もしかして六番目を解放してしまったとか?
「ようやくあのアバズレの本性が分かってきたのか、少し不審に感じているみたいっす」
予想とは正反対の答えだった。
そのきっかけはアレかな?
私が侯爵に対して情報を集めろ的な事を言ったせいか?
侯爵個人や周りの人たちにとっては良い傾向と言えるが、そうしたらユシルは孤立無援になる。もともとが攻略キャラ以外と親交を深めていないし。
「それで焦ってますます墓穴を掘ってるってとこっすね」
う~ん…これが“物語”であればざまぁな展開も嫌いではないし、むしろスカッとするけれど現実となると途端に後味が悪くなる。
全く関係のないところで起こった事ならニュースを聞く感覚で同情したり一緒になって糾弾する事も可能だが、いかんせん私とユシルの距離は近すぎて他人事にはできない。
ゲームと違って私たちの人生はこの後も続いていく。今後ユシルに真面な縁談がくるかは学園に通っている間にどれくらい名誉挽回できるかにかかっている。
軌道修正するなら早いに越したことはない。
ユシルがこの世界をどう思っているのか知らないが、今までの言動からしてゲームの世界に入っちゃった☆とか思っててもおかしくはない。
まさかやり直しが効く世界とまでは思ってないよね?
今回は上手くいかなかったからやり直しすればいいやとか思ってないよね?
そこまでゲーム脳をしているとは思いたくないが…ユシルの前世が幼い子ならば可能性はある。その場合、ゲーム終了後はどうなると思っているのだろうか?また入学時からやり直しとか?
エンドレスループとか単なる罰でしかない。
ゲームの様に攻略キャラの誰かを攻略したのなら数年後も描かれているし、不自由のない生活は送れるだろうけど…ユシルの本命ってサスケみたいだしな。
今のサスケの好感度的には無謀の一言に尽きるが仮に攻略できたとして…サスケがうちを辞めるのは少し困る。なんだかんだと言って優秀なので余所に奪われたくはない。
サスケ本人もそれは不本意なのではないか?なんといってもうちの家族大好き人間だし。
とするとユシル込みでサスケを受け入れるという事になる。…遠慮したい。今のままのユシルでは認められない。うちの子はあげられません!
前世の年齢を足せば私の方が年が上なのでこの感情は可笑しくないと思う。
例えば自分の身内が女のせいで道を踏み外そうとすれば止めるくらいするよね?聞き遂げられるかは別として。
おそらくというか間違いなくユシルは続編をプレイした事がある。
サスケルートも当然プレイ済みだろう。
既に本性が暴かれてはいるので何も知らない状態よりは難しいが、逆ハールートに入るまでの手並みを考えれば攻略される可能性は十分にある。
本人の為にもサスケの為にも、ついでに私の為にもそろそろユシルの目を覚まさせるべきか…。
その為には私も転生者とバラしてでもここは“現実”なのだと諭すのが一番かな?
私が攻略キャラに興味ないのは見ててわかってるだろうし。あ~でも本命は私の使用人だ、実は私の本命もサスケなんでしょ!とか言われたら言い訳が難しい。なんせ思い込みは目を曇らせる。侯爵の様に。
おそらくユシルが絡んでいなければ彼は今回の件も冷静に判断を下した事だろう、そもそもユシルが関わっていなければ口出しとかしなかったと思うけど。
「う~ん…」
明日、少し話してみようかな?
改善が見られる様ならレポートの手伝いくらいはしてもいい。私のレポートは私一人のレポートとして提出させてもらうけど。
レポート提出最終日は一週間後、その更に一週間後には学年末テストが控えているので締め切りを延ばしてもらえたとしても今度はテスト勉強の時間がなくなってしまう。
学年末テストが終われば学園行事として残すは卒業パーティーだけになる。
学生の準備としては女子生徒はドレスやアクセサリーの用意だがこれは数か月前から準備をしていないと本番に間に合わないし、基本は親が用意してくれる。婚約者がいれば本番前に贈り物される場合もある。
卒業パーティーだけは学園の生徒でなくても参加可能だ。
最優秀生徒の発表とか各種表彰なんかもするし、学園外に婚約者がいる場合はパートナーとして参加も出来る。ついでに保護者も参加しようと思えば可能。
この年になると婚約者がいない方が稀だが、いない場合もあるのでエスコートは絶対に必要というわけでもない。
卒業生でもないし、友達同士での参加も可能です。
…ゲームをしている時は何とも思わなかったけど、こんな大規模なパーティーで婚約破棄とか王太子最低だな。社会的に殺しにかかってるじゃん。実際に修道院送りになってるし。
レオーネ様もそのお友達のシア様もケイト様もユシルにはちょっかい出してないから大丈夫だと思うけど…ユシルが虐めを捏造するほどではないと思いたい。
評価、ブクマ、誤字報告ありがとうございます!
今日からまた毎日更新していきます。




