23 好みのタイプじゃないんです
この回と次の回あたりから流れが変わります。
サスケ=カイというのは先ほどの幽霊作戦で確定した。
現在のサスケからヒロインへの好感度はマイナスだと思うので私的にざまぁ!と思っている。
ヒロインからされた数々の仕打ちの恨みは忘れない。忘れないが流してもいいとは思っていた。
情報集めの為に表面上だけ友達のフリをしているからだ。…性格が許容範囲内だったら普通にお友達をしても良かったし、私も転生者だとバラしても良かった。
逆ハーを目指すなら絶対に協力しないけど誰か一人を一途に思うのであれば協力したかもしれない。
あの中から選んでいいよ、と言われても私はお断りしますけどね。
ゲームとしてなら良いキャラでも現実で出会えば友人としても付き合いたくない連中が多すぎるんですよ。
昔にドはまりして公式グッズを買い漁ったキャラでも現実にいたら近寄りたくもないし。
まぁキャラ設定が特殊でしたからね、その人。
作中で主役を食って一番人気を誇ってたけど、二次元なら大好きだけど!
現実にいたらただの犯罪者だから。
世界観的に許される行為しかしてなかったとはいえね、現代日本の価値観に合わせたら普通に犯罪だ。
あの世界に転生していたとしても全力で逃走を図ります。…遠目で観察だけならしたいけど。
だってあの声は魅力的だし!見た目も好みのキャラデザだった。ドはまりして続編が出る様に貢ぎまくりましたからね。
だからお気に入りのキャラがいるゲームに転生して、両想いになろうとするのはいい。
情報という名のアドバンテージもフル活用すればいいさ、強くてニューゲーム気分を味わえばいい。私は無理だったけど。
だけどさぁ!
私が気に食わないのは他人を貶める行為を平気でする事だ。
私に対する扱いもそうだけど攻略キャラに対してもそう。きっと本命であるサスケに対してだって同じ事をする。根本的にゲームのキャラだという認識なんだよヒロインは。
自分がゲームと同じ行動を取ったら同じ様にキャラが好いてくれると思ってる。
私は蔑ろに扱っても親友でいてくれる?そんなわけがない。
こちとらこの世界で十六年生きてきた一人の立派な人間で自分の心と考え方を持っている。そこに前世の記憶の一部とか感覚とかが絡んでくるせいで変人扱いされる事もあるけど個性ですと言い張るくらいには開き直っている。
ゲーム上ではヒロインはセルリアに一切絡まなくても共通イベントとかでは親友の体で話が進む。
セルリアとの友情イベントは一つもなかったし、攻略キャラとの絡みも一切ないキャラだった。
ただ只管にヒロインに便利情報や現在の攻略キャラの好感度を教える便利キャラだ。
エンディングにはどの個別ルートにも出演しないくらいの気配の薄さだ。
私だってゲームをプレイ中は気にしなかった。よくあるお助けキャラだな、くらいにしか思わなかった。
だけどさ、この世界では私も一個人として生きているんですよ。
ゲームではただのヒロインのお友達で一切背景が見えないキャラでも、三人も姉がいる事や忍者を多数雇っている家だって事も何もかも語られていなかったけど。
普通に家族がいて、この学園に来るまで普通に暮らしていた。
ヒロインが何歳の頃に前世の記憶が戻ったかなんて知らない。でも、例え記憶が戻ったのが学園入学の前日だったとしても“ユシル”が生きてきた十六年があるから今がある。
他の攻略キャラも同じ。
この学園に通う前の十六年がしっかりあって。この学園を卒業した後もしっかりと人生は続く。やり直しなんてきかない一回きりの人生が。
ゲームと同じ一年間だけの人生を歩む為に生まれたのでは決してない。
例えゲームと同じ問いかけをしても違う答えが返ってくる場合もあるし、同じ答えを言ったとしても別の意味合いの場合だってある。
当たり前だ、ここにいる攻略キャラも、ゲームでは名前が出てこなかった人も。
生きているのだから。
ゲームだと思っているヒロインよりも真面目に自分の人生を歩んできたのだ。
攻略キャラの人生だってレオーネ様がいたせいかゲームとは違う。違う人生を歩んできたから性格だって変化する。
その事に気付いていないはずがない。
なのに無視している。
本命でもない攻略キャラとの恋愛を楽しんで、影で悲しむ人を無視している。
勝手にアピールされてその気になったらポイされる攻略キャラだって悲惨だ。今までに培った信頼を失ってしまうのだから。
信用というものは積み上げるのは大変でも崩すのは一瞬。
今は爵位の高さによって表向きは抑えられているかもしれないが、数年後に大事な部分で響いてくる可能性だってある。
ヒロインはどんなに少なくても六人のその後の人生を壊して歩いている。自覚もなしに。
自覚があればいいのかと言われれば当然いいわけがない。けれどマシではある。それなりの覚悟はあってした事だろうし。
あとゲームと違って王族に下手に手を出すと暗殺される場合もあるからね、使える駒だと思って近づいてきたやつが身の保身の為に口封じで…とか起こる可能性があるのが貴族の世界だ。
ふわふわと夢見心地でいられる世界ではない。それが許されるのは周りの人が守ってくれる環境が整っている人だけだ。
逆ハールートを攻略しないと本命を攻略できないから…と仮定すればある意味で一途ではある。
一途な女の子キャラは好きだ。
思ってる相手が本当にソイツでいいのかと百回問いかけたくなる様なクズでも〇〇ちゃんが好きなら応援するよ…と思えるキャラが好きだ。
恋に一途で純粋で。
駆け引きなんて出来ないで全力でぶつかる方法しかとれない子たち。
嫉妬も独占欲も激しいけれど、どんなに意中の相手に冷たくされても諦めずに追いかける姿は応援したくなる。
好かれる為の努力だってサボったりしない、全力でし続けている。
大抵は報われないけど、それでも好きだ。
でも私が好きなそういう子たちは。
思わず原作を大人買いするほどドはまりさせてくれる子たちは。
自身の愛を貫くけれど他人を貶めたりはしないんだ。
嫉妬で目を曇らされて、ライバルに偶に意地悪な事をしちゃっても。
他の見る目のあるキャラに言い寄られても、揺れる事なくたった一人の人を思い続けてる。
誰かに怪我を負わせたりなんて絶対にしないで、ライバルを出し抜くチャンスを自ら潰したり、意中の相手じゃなければハッキリと断る。
そういう子が好きなんだよ私は。
思われる事に胡坐をかくことなく。
試し行為だってしない。
他の誰かに惑わされたりもしない。
たった一人の人に愛を捧げて。
その為には自分の全てを捧げてしまえる子。
それだけ愛しているのに、相手の幸せの為に身を引ける潔さを持っている子。
意中の相手が脇役でない限り結ばれる可能性が極めて低い子を好きになってしまう。主人公に恋してたら初登場時点で失恋決定がわかってしまう。
そんな子が私のタイプなんですよ!
端的にいって好みではない。
目の前のヒロインも。
ゲームのヒロインも。
好みかどうかでいえば悪役令嬢の方が好みだ。
やり過ぎているのは認めるが、それもきっかけは全て王太子にあるといえる。
ちゃんと悪役令嬢と向き合ってこなかったツケが一気に噴出しただけだ。
浮気相手に国にも世間にも認められているいわば正妻である悪役令嬢が人のものに手を出すなという権利くらいはあるはずだ。
それが嫌なら最初から浮気宣言をしておけばいい。
政略結婚に愛が必要ないのはお約束。感情面での納得は無理だが嫌なら婚約破棄をすると脅せば悪役令嬢はどれだけ嫌でも憎く思っても、頷く他に方法はない。
ゲーム上では特に明言されていなかったが、この国は愛人制度が存在しているのだから。
それをしてしまえる権力を王太子は持っているのだから。
どうしてこんなにも思考がヒートアップしているのか…。
冷静な部分が問いかけてくる。
先ほど置いていかれた事や、今までのヒロインの私への扱いに我慢の限界が来たのかもしれない。
でも違う。
ヒロインが私を個人扱いしないように、私もある意味でヒロインを個人扱いしていなかった。
ただの同室、友人ですらない情報源。必要以上に関わらない様にしていたし、それはヒロインも同じだった。
そう思わなければ半年以上も“友人”という形を取れなかった。
これはアレだ。
ろくでもない女から家族を守らなければいけないと考える防衛本能の暴走に違いない。
評価、ブクマありがとうございます!




