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森の中を歩いていると、フェンリルが迎えにきて家に帰ります。
「フェンリル、話があるの。」
『なんだ?』
ジョバンニさんに聞いた言い伝えをフェンリルに伝える。その為、王家に囲われる可能性がある事、それは嫌なので、マリウスさんと婚約した事、守るために一緒に住もうと言われている事を話して、女神の加護とは何か、ここから離れても大丈夫なのかを聞く。
フェンリルは、
『はぁー。なんだその話しは?繁栄など・・なんでそんな事になってるんだ?』
呆れているみたい。
『おまえは、精霊が見えているか?』
「精霊?」
『小さな人型だ。見えぬか?』
「人・・・見えないけど、最近、蛍みたいなのを見るよ?光ってる丸い玉みたいなのが、フワフワ浮いてる?んだけど、消えちゃうの!それは、精霊じゃないんでしょ?」
『いや、精霊だな。丸い玉じゃなく、人型に見えるようにならねば・・・まぁ、もう少しか・・・
おまえは、女神の加護を受けているが、覚醒するには、まだ時間がかかる。それに、おまえを囲っても繁栄しない』
「えっ、繁栄しないの?」
『ああ、女神の加護が国に影響するなら、女神は加護を授けないだろう。欲深いヤツらは繁栄すると思っているから、おまえを欲しがるんだ。おまえが婚約した者は、おまえを利用しようとか考えてないだろうな?人間より森の方が安全だ。我がいるからな。』
フンと、そっぽを向いて言う。
クスッ。かわいいなぁ。
「ありがとう、フェンリル。」
抱きついてナデナデする。
モフりたいけど、まだ話さないとね。
「私は、ここを離れてもいいの?マリウスさん、婚約者がね、一緒に住んで守るって言ってるんだけど・・・ここにいた方がいいなら、説明しないといけないでしょ?フェンリルの事も言わないと・・・」
『おまえは、その婚約者といたいのか?婚約者を信じられるのか』
「うーん。まだ、よくわからない。マリウスさんとは、知り合ったばかりだし、これから、お互いを知っていこうって・・・森は、安全だよね?フェンリルがいるし、安心できるもの。でも、フェンリルは、街に一緒に行けないでしょ?強いのはわかっているけど、その大きな体じゃ、みんな怖がって大騒ぎになるよね。それに、王家や貴族なんて、関わりたくない。私の事を知ったら、何をしてくるのかわからないから、不安だよ。でも、自分も貴族なのに、王家より私の気持ちを優先してくれた。自分の利益がないのに、婚約者になってくれて、私を守るって言ってくれたマリウスさんを信じようと思ったの。」
『そうか、それならその婚約者を連れてこい。我が、見定める。よいな。』
「わかった。ありがとう、フェンリル。」
さぁ、思いっきりモフモフを堪能しよう。