水着回!
「いかがでしょうか? シロー?」
そう言って迫ってくる、メロンの様にたわわに実った二つの胸が揺れる。たゆん。
「私はどうでしょう?」
こちらも負けずに存在を主張する、わがままボディが迫ってくる!
どうしてこうなった。
美しい砂浜、青い空の下で二人の美少女が水着姿で迫ってくる。
唐突に始まった水着回にはもちろん、相応の理由があった。
「トレース?」
「はい」
次の日の朝、食堂でエルとキャロルと向かい合って座り、朝食をとる。
朝からかわいい女の子達と一緒にいられるのは嬉しいものだな。
実に爽やかな朝だ!
話の内容は全く爽やかではないが。
「シローがこの惑星に来てから、『神』と名乗る存在と話をするまでの行動を
トレースする事でポイントが得られるか試して欲しいのです」
「それはいいけど、大した事はしていないぜ? 日常的な行動の様な・・・」
「昨日、粒子砲の攻撃でポイントが得られるという事がわかったので、成果が無くても構わないのです。一応確認をしておく、という程度の事なので」
「まぁ、いいけど」
「では、最初にシローが発見されたビーチへ行きましょう」
「私も同行しますわ」
「キャロルは別にいいんじゃないの?」
「まぁ、私を除け者にして、エルと二人きりになりたいんですの?」
「違うし」
そんな、いちゃラブコメみたいな会話をしつつ、また御者無し馬車に乗って
俺にとっての「始まりの地」である砂浜へやってきた。
前回と同じく人は全くいない。
「それで、何をすればいいんだ? また砂浜の上で倒れていればいいのか?」
そう言って振り返って二人を見ると、彼女達は水着姿になっていた!
「いつの間に水着を着たんだ?」
「最初から服の下に着ていたんですよ」
白いワンピースの水着を着たエルが答える。水着姿が眩しすぎる!!
胸元が大胆にカットされていて深い谷間が・・・やはり、エルは着やせするタイプだった!
「私の水着姿はどうですか? シロー?」
黄色いビキニを着たキャロルは素敵な笑顔で、はちきれそうな豊かなボディを
惜しみなく晒していた。布の面積が小さすぎないか、それ。
天国はここにあったんだ・・・
感動のあまり立ち尽くす俺を二人は波打ち際まで引っ張っていった。
そして、まるで迫られているかの様なシーンになっているのだが、もちろんそんな訳はなかった。
「シローはビーチまで出かけて女性の水着姿を見ていたでしょう?
もしかしたら、女性の水着姿を見るとポイントが増えるかもしれません。
いかがでしょうか? 増えていますか?」
そんなわけあるか! 何そのエロゲーみたいな頭悪いシステム!
そう言いたかったがエルは至って真面目な様子。マジなのか?
もし、もしも本当に、それでポイントが得られるというのなら、こんなに嬉しい事は無い・・・
俺は嬉しい予感に震えながら、そっとステータスを確認してみる。
ポイントは全く増えていなかった。ですよねー。
「残念だが、増えていない」
「そうですか」
「本当に残念ですわね」
「あぁ、本当に・・・?」
なぜかキャロルががっかりしている。見せたがりなのかな?
「では、次の段階へ進みましょう」
次の段階、だと! エルが大胆な発言を! いったいナニを・・・
「砂浜にうつ伏せになってください。発見時の状態を再現してみましょう」
そっちかよ! 紛らわしい言い方を! いや別に紛らわしくは無かった!
言われたとおりに砂の上でうつ伏せになる。結構砂が熱いんですけど。
「どんな感じですか?」
隣にキャロルが寝そべってくる。上半身を起こした状態で話しかけてくるが、
胸が、たわわな胸が水着からこぼれ落ちそうに! 凄い事になっている!
思わず胸をガン見してしまう。仕方ないんや、男ですから!
「シロー?」
しまった!ただちに紳士にならねば!
「もっと良く見てもいいんですよ? 遠慮なさらないでくださいな」
天使か! 「もっと見てもいい」。何て素敵な響きだろう。
こんな美しい言葉があったなんて!
「見てもポイントは増えなかったのでは?」
エルがいらん事を言う。よし、エルの事もしっかり見よう。ワンモアトライという言葉もあるし!
エルは横座りをしていたが、きれいな足が俺のすぐ頭の上にある。近すぎないか?
白い清楚なワンピースはエルに良く似合っているが、胸のところが大きく開いて
いてくっきりと深い谷間ができているのが見える。なるほどエロい。
「シローは発見されるまでおよそ12分間うつ伏せで倒れていたと思われます。
ですので今から12分間その姿勢を保ってください」
「えぇ、マジなのか、なぜ時間がわかったんだ?」
「シローの存在が感知されてから調査機がここへ到達するまでの時間が、約12分なんです。実際はもっと長く倒れていたかもしれませんが、とりあえず12分でお願いします」
「仮にそれでポイントが得られるとしても、効率が悪すぎるだろう? 粒子砲を撃つほうがはるかにましだろ?」
「えぇ、まぁそうですね。一応、ですから」
エルもあまり本気ではない様子。一応やってみるか。
隣ではキャロルが目を閉じて寝そべっている。ただのバカンスだよなこれ。
もちろんポイントは増えなかった。
起き上がって砂まみれの俺の体を、エルが刷毛の様なものを使ってキレイにしてくれた。
至れり尽くせりだな!
「次はシローが利用したレストハウスへ移動して飲み物をとりましょう」
「ここで飲んでもいいんじゃないか?」
「同じ環境のほうがいいかもしれないので」
「時系列から考えると、管理事務所へ行ってカイと話をしたり、飯を食ったりするんじゃないのか?」
「食事なら何度もしたでしょう? その時ポイントは増えていたのですか?」
「いや、増えていない」
「でしょう? なので省略します」
というわけでまた馬車に乗って移動する。二人は両隣に座ってくる。
水着美少女に挟まれて座ると嬉しいな。水着キャバクラか! (2回目)
キャロルの豊かな胸が俺の腕に・・・あたっている?
これは、まさか、伝説の「あててんのよ」攻撃!
あれは確か背中だったような、しかし、腕でも嬉しいぞ! ワザとなのか?!
まるで接待されているような・・・そうかもしれないな。
何となくチヤホヤしてくれている様な、そんな気がしてきた。
まぁ特に何もしていないのに女の子が自分に好意をもってくれる! なんて思う方がどうかしているし、俺のやる気を出させる為にサービスしてくれている、と考える方が無難ではなかろうか?
確かに気分が良くなってるし。何という深慮遠謀か!
二日前に来た同じレストハウスで、今度はエルやキャロルと一緒にくつろぎながらジュースを飲む。
やはりポイントは増えないが、楽しいからもう、どうでもいい気がしてきた。
「あとは、もうする事無い様な」
「やはり、日常的な行動ではポイントは得られないようですね」
「そう言ったじゃん」
単に遊んでるだけ、みたいになってる。
ふと、レストハウスの中のバーカウンターみたいなスペースで男が働いている姿が目に入った。
バーテンダーのようだが、「自動人形」という表示は無い。つまり、人間という事だよな。
「この世界って働かなくても生きていけるよな?」
「えぇ、そうですね」
「急にどうしたんですの?」
「衣食住が保障されているのに働いてお金を稼ぐ意味があるのか、と思ってさ。
給料って、あるよな?」
まさか無償労働ということは無いだろうな?
「もちろんありますわ」
「ただ、保障されているのはあくまでも最低限度の、というものですから、
支給されるもの以上のものが欲しければ働いてお金を稼ぐ必要があります」
支給される服のリストを見たが、2000種類以上の中から選べる様になっていたんだが、これでも不満がある、という人がいるのだろうか?
「それに、生き甲斐とか、自分の好きな事を仕事の中で表現したいとか、働く理由はたくさんありますよ?」
それはそうだろうが・・・
「どうして急にそんな事を?」
「俺って軍人になったんだよな?」
「はい」
「給料の話を聞いていないな、という事に今気付いたんだ。給料ってあるよな?」
「いいえ、無いです」
・・・なんですと?
「すまない、もう一度聞かせてくれ」
「軍の場合、給料は無いです」
「なぜだ!」
ありえんだろ、それは!
「現在帝国が戦時下にあるという事はすでにシローも知っていますよね。
帝国の場合、自分たちから戦争を始めるということは無いのです。
常に相手から戦争を仕掛けられて、それに応戦する、という形になります。つまり防衛戦ということです。
自分たちの領域、家族、仲間、資産、社会システム、そういったものを守る為に
戦うのですから、そこに報酬は発生しない、という考え方です」
これは文化の違い、というやつだろうか。
「報酬が無くても構わない、という事か?」
「というより、敵に自分たちの大切なものを奪われたり、破壊されない為に戦うのですから、自分の為の行動に対して他者、この場合帝国の事ですが、他者に報酬を要求する理由が無い、という事です」
ぬぅ。それが帝国人の考え方、という事か。
「全ての帝国人が同じ考えなのか?」
「いいえ、そう考えない人も中にはいます。でも臣民の場合は志願制ですから、嫌なら軍に入らなければいいだけです」
「臣民の場合?」
「貴族や王族、皇族の場合、従軍は義務です。先頭に立って戦います」
貴族! 貴族とかいるんだ! そうか、「帝国」だったな。皇帝がいるなら貴族もいるよな。
「シローはお金が無くても困らないでしょう? 軍にいるあいだ、必要なものは全て支給されるのですよ?」
「軍にいるあいだはそれで良くても、退役した後は? 最低限の保障でみんな満足しているのか?」
「不足があれば、退役した後働くという選択もありますが、階級や従軍期間によって年金が支給されますよ」
あれ? 報酬を要求する理由が無い、とか言ってなかったか?
「それは報酬とは違うのか?」
「年金、ですよ?」
なるほどわからん。
その後、俺達は波打ち際でキャッキャウフフな水遊びなどを軽くこなして夕方まで時間をつぶして、宿舎に戻った。
実に充実した1日だった。また遊びに来たいね!
それから10日間、俺達は実験という名の「訓練」をしていた。
粒子砲を撃ちまくってポイントを稼ぎ、様々なシチュエーションを想定して
「シフト」を使い続けた。
この一連の訓練には「シフト」を掌握させよう、というだけではない意図が感じられる。
やけに物を運ばせたり、機体に搭乗させて機体ごと移動させる訓練を重ねたり、
何か明確な目的があるように思えるのだが、エルもキャロルも答えてくれない。
答える権限が無い、と言うだけだ。
そして、その時がやってきた。
「オオバ曹長、軍司令部より命令が下りました」
初任務、らしい。




