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出会いと別れ その3

 どれくらいその場で立ち尽くしていただろうか。頭の中を整理するのにかなり時間を用いたらしく、気づくと不審がる視線が幾つか感じられた。

 視線から逃れるように足を踏み出すと、宿屋通りを抜け、何気なく気持ちを落ち着かせるかのように王都内を歩き続けた。

 やがて、気持ちも落ち着いた頃。それまで感じていなかった感情が脳内を支配しているのに気が付いた。


「腹減ったな……」


 何時の間にそれだけの時間が経っていたのかと思わずにはいられなかったが、やはりどんな心理状態でも腹は減るものなのだろう。

 何処かで昼食を食べようと今いる場所を確認すると、そこは巨大な噴水が目印の王都のメイン広場であった。


「ギルドで食べるか」


 飲食店を探すのも悪くはないが、安くて味もいいものを提供してくれるギルドが目と鼻の先にあるのならそちらを選ぶのが妥当というものだろう。

 それに、まさに同業者の宝庫であるギルドならパーティーを組んでくれそうな人物の目当てが見つかるかも知れない。ソフィアの件を忘れさせてくれる程の。


 二十四時間年中無休のギルドは、今日も今日とて人で溢れていた。

 依頼を終えた、或いは今から依頼に向かう同業者の方々がカウンターに殺到している。飲食スペースも同様に、依頼終わりの打ち上げか、或いは成功成就の景気づけか、はたまた単に食べてるだけか。スペース一面、個性豊かな装いの同業者達の姿で埋まっている。

 これだけ人がいればパーティーを組んでくれそうな人物の一人や二人直ぐに見つかりそうではあるが。今はまず、先ほどから激しい主張をしている腹の虫を黙らせなくては。


「えっと、とりあえず……」


 空いているテーブルを見つけると、慣れた動作でスタッフを捕まえ定番となった料理を注文する。

 程なくして、今日は回転が速いのか頼んだ料理が運ばれてくる。

 空腹を満たす為の料理かとも思ったが、次々に口に運んでいる内に、どうやら心も満たしてくれる効果があったようだと感じづにはいられなかった。



 空腹を満たし心も満たしてくれた料理を堪能し終え、会計もそつなく終えて。気持ちも新たにパーティーを組んでくれそうな人物の目星を探しに行く。

 とは言え、同業者に片っ端から声を掛けていくという方法はあまりよろしくないだろう。黒騎士の噂が飛び交ってるのに、さらにそこに変な噂が重なってしまっても困るし。

 ではどうしようかとギルド内を歩き回っていると、いつも見慣れた依頼掲示板の直ぐ近くに、別の掲示板がある事に気が付く。


「あ、こんなのあったのか……」


 その掲示板に張り出されている紙の内容を見た瞬間、どうして今までこの掲示板の存在に気が付かなかったのかと自分を責めづにはいられなかった。

 その掲示板は、所謂パーティーメンバー募集の掲示板であった。募集の内容も、今回限りの一時的なものから長期的なものまで、様々なもので溢れている。

 もしこの掲示板の存在をもう少し前から認識していれば、どれ程今の気持ちが変わっていただろうか。


 いややめよう、過ぎてしまった事を今更悔やんでも仕方がない。今はただ、この掲示板と出会えたことに感謝し、そして自分に合ったパーティーメンバーを見つけよう。


「ん……、んん」


 とは言ったものの、選択肢が多いとそれはそれでまた悩むところだ。長期的に組む前提だから一時的なものは除外しているが、それでもかなりの数がある。

 新米さん大歓迎とか、初めての人でも安心とか、まるでアルバイトの募集のような文言も目に付く中、募集側の情報や希望する項目等。一つ一つ目を通す。

 しかし、なかなか自分に合っていると思うものが見つからない。


「よー、お困りか?」


 別に早急の事でもないし一度出直すかとも思った瞬間、誰かが後ろから声を掛けてきた。

 一瞬別の誰かに対してかとも思ったが、今この場には自分以外他の人の姿は見当たらないし、この声は自分に向けられたものであると認識せざる得ない。

 振り返って声の主を確かめようとすると、何故かそこには誰の姿もなかった。


「え?」


「おいおい、何処見てるんだよ。下だよ、下!」


 しかし、姿は見えずとも声は聞こえてくる。これは一種の幻聴か、はたまた恐怖体験か。まだ昼間だというのに。

 等と思っていると、下を見ろとの指示が飛んでくる。その指示に従い視線を下へと向けると、そこには先ほどの声の主であろう生物の姿があった。


 視線の先にいたのは、身長一メートルほどの二足歩行しているトカゲかはたまたヤモリか、に似た亜人であろう生物だった。

 マフラーなどを巻き、腰には不釣り合いな剣を備えているあたり、少なくとも何処かの誰のかペットという訳ではなさそうだ。

 しかし、こっち(エルガルド)に来てから色々な亜人を見てきたが、彼或いは彼女、は一体どんな種族の血を引いているのだろうか。少なくとも、自分は似た者を見た事はない。


「どうした? オイラのこのカッコイイ姿に声も出ないのか」


 自分自身でカッコイイと言ってしまうのもどうかとは思うが。それ以上に、おそらく彼と呼ぶのが相応しいであろう亜人の容姿は、どちらかと言えば可愛いと部類するのが妥当だろう。

 もしカッコイイも付け足したいなら、カッコ可愛いと言ったところか。


「いや、まぁ、それはさておいて。君……、は一体何者なんだ?」


「おいおい、母ちゃんに言われなかったのか、名前を聞くときはまず自分から名乗るって」


「そ、そうだったね。自分はショウイチ、見ての通りギルドのメンバーとして活動している者です」


 この年齢不詳の謎の亜人君に丁寧に接する必要があるのかと思う者もいるかも知れないが、自分としては丁寧に接するは得策だと思うのでそうしている。下手に高圧的に接しては、しこりが残り後々面倒なことになる可能性が高いからだ。


「オイラカルル、気軽にカルルって呼んでくれ。オイラもショウイチと同じくギルドのメンバーだ。こう見えても剣の腕前は天下一品なのだ」


 自己紹介を終えると、どうだと言わんばかりに胸を張る。客観的に彼の剣の腕前を見た事が無いので何とも言えないが、自分で公言するあたりある程度はあるのだろう。


「それで、カルル。自分に一体なんの用が?」


「そうだった。ショウイチ、ショウイチは今まさにパーティーメンバーを探してたんだよな」


 カルルは身振り手振りを交えながら、どうして自分に声を掛けたのかを説明し始める。

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