表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はぐれエルフちゃんと剣姫さん~生活魔法も使いよう~  作者: トルク
四章 もう1人のはぐれエルフ
35/72

アウラ、お姉ちゃんになる③

「キャロルさん!」

「あら?アーちゃんじゃない。どうしたの?」

「お願いです!ヒルダちゃんを、ヒルダちゃんを助けて!」

「おだやかじゃないね‥‥いいよ、アーちゃん。そのヒルダちゃんはどこだい?」


「治療院です!キャロルさんの鑑定のギフトでヒルダちゃんを看て欲しいのです!」

「鑑定で?そんな使い方したことないけど‥‥いいわ!アーちゃん、急ぐんでしょ?」

「はい!」


キャロルさんは私を抱っこすると


「治療院だね!ちょっと飛ばすわよ、しっかり掴まっててね!」

ドゴン!

き、キャロルさんが踏み込んだ地面が抉れました!

身体強化なんて使ってないのに‥‥


「うおおおおおお!どいたどいたぁ!漢女のお通りだよ!!」

ふええええ!は、速いです!


あっという間に治療院に到着。

私やエリーよりも速いんじゃ?


「さ。着いたわよ、アーちゃん!」

「え‥‥はい!こっちです!」

私はキャロルさんを診察室へ案内します。



「エリー!ヒルダちゃんは?!」

「アーちゃん、キャロルさんも!」

「アウラ‥おねーしゃん。」

よかったぁ。ヒルダちゃんはまだ起きてます。


「キャロルさん、この子がヒルダちゃんです。それで、ヒルダちゃんの頭の中、脳に出血がないか看てください!」

「え?頭の中?脳?」

しまった!

キャロルさんには医学の知識がありません。

ならば!


「とにかく、頭の中を鑑定してみて下さい!血液、魔力の滞る場所がないか!」

「わ、分かったわ。ヒルダちゃん、じっとしててね?『アナライズ』!」

キャロルさんによる鑑定、診察が始まります。


「ふぅん。何も異常は‥‥これは!」

「キャロルさん!」

やはり出血していたのでしょうか!


「右耳の上辺り、そう。この辺り。小さいけど黒い滲みが見えるわ!」

まずいですね‥‥とりあえず出血だけでも止めないと!


「エリー!キャロルさんが示した場所に治癒魔法を!血管を治して!」

「了解!」


エリーの魔力が優しい光に変わります。


「行きます!癒せ、『ヒール』!」

エリーの掌から溢れた光がヒルダちゃんの右側頭部に吸い込まれていきます。


「キャロルさん、どうですか?」

「ええ、滲みの広がりは止まったみたいよ。だけど滲みは残っているわ。」

やはり。血腫になる前に除去しないと‥‥

でも『脳外科手術』をするにも設備がありません‥‥


(愛し子、大丈夫?ねえ、愛し子ー)

え?誰ですか?

(あら、あなた。私の声が聞こえるの?)

はい、聞こえます。あなたは誰ですか?

(私は精霊、愛し子ヒルダの契約精霊よ。)

精霊さん?!

(あら?あなた‥‥そう。これも運命なのかしら。)

運命?いや、今はそんな事どうでも良いのです。

精霊さん、ヒルダちゃんを助けて!

(助けたいけど‥‥どうすれば良いの?)

ヒルダちゃんのここ、この辺りに血が広がっているのが判りますか?

(ええ。判るわ。)

そこに血があってそれが固まるとヒルダちゃんの命にかかわるのです!

精霊さん、その血だけを取り出せませんか?

(そんな事で助かるの?お安い御用だわ!)

ヒルダちゃんの右側頭部から黒くなった血が滲み出て来ました!


「!アーちゃん、滲みが消えたわ!!」

「はい!キャロルさん。精霊さんが助けてくれたのですよ!」

「精霊が‥‥?」


先生は綺麗な布でヒルダちゃんの側頭部を拭います。


「これが脳内出血‥‥なるほど、血が黒く変色している。凝固する手前だったみたいだね。」

「はい、間に合って良かったです。」


(ねえあなた。これで愛し子ヒルダは安心なのね?)

はい。もう大丈夫なはずです。

(そう。安心したわ。ありがとう。)

いえ、こちらこそヒルダちゃんを助けてくれてありがとう!

(ふふ。面白い子。いずれ話してあげるわ。どうしてあなたが精霊と契約できなかったか。)

え?本当ですか!

(ええ、でも今は‥‥)

そうでした、ヒルダちゃんが最優先です!

(ではいずれまた‥‥)

はい!



「アーちゃん?どうしたのかしら?」

「キャロルさん、ありがとうございました。これでヒルダちゃんは治ります!」

満面の笑みで微笑みます。


「あらあら。泣いてるの?」

そう言ってキャロルさんはハンカチで頬を拭ってくれます。


「あれ?おかしいな、うれしいのに涙が‥‥止まんない。」

「良かったね、アーちゃん。」

「エリー‥‥」

私はエリーに抱きしめられます。

ほっ、と力が抜けていきます。


「おねーしゃん‥‥」

「ヒルダちゃん、もう安心だよ。だから少し眠りなさいね。」

私はヒルダちゃんの頭を撫でます。


「あい‥‥おや‥しゅみ‥‥なさ、い‥‥」

スー‥‥スー‥

可愛い寝息が始まります。


「アウラ殿、いろいろと聞きたい事があるのだが‥‥」

「はい、先生。だけど今日は‥‥」

「分かった。また、後日説明願えるかな?」

「よろこんで。」

私は先生とお約束します。


「アーちゃん。ヒルダちゃんだけど‥‥どうするの?この街には孤児院もあるけど‥‥」

エリーやダカン父さまのお話しではこの国の政策で孤児に手厚いそうですが‥‥


「連れて帰っちゃ‥‥ダメ?」

「ふぅ。やっぱりそう言うと思ってた。」

ダメなの?エリー‥


「なら早速連れていきましょう。栄養状態も良くないみたいだし。」

「エリー!」

「良かったわねぇ、アーちゃん。」

「はい!ありがとうございます、キャロルさん!先生!」


そしてエリーは天使の様な寝顔のヒルダちゃんをそっと抱えます。


「お世話になりました。治療費は後ほど届けさせます。」

「心得た。アウラ殿、また後日。」

「はい。」


「アウラ‥おねーしゃん‥‥ムニャムニャ‥‥」

寝言まで可愛いなんて!

よし、私決めた!


今日から私、お姉ちゃんになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ