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ダカン、戦慄する

武競大会当日。


エリザベートとアウラ殿は大会予選に向かうべく支度をしていた。


「うう。緊張してきた。」

「エリー、今から緊張してたら持たないよ?エリーはこの大会で優勝するのですから!」


この大会では装備に制約がある。

試合直前にあらかじめ用意された各種武器を選ぶ仕組みだ。

これは装備の優劣で勝負が決まるのを防ぐ為である。

永きに渡りカルナザルに伝わる良き風習と言えよう。

なのでエリザベートは動きやすいチュニックとズボン姿だ。

支度と言ってもあまりする事も無いはずだが。



しかしエリザベートは大丈夫だろうか?

アウラ殿を疑う訳ではないがあのへなちょこ娘が優勝を目指すと言うのだ。

鋼断の剣閃は確かに本物だった。

だがしかし!

心配だ。

ひじょーに!心配だ。

ケガとかしたらどうしよう?

あの可愛い顔にキズでもついたら‥‥

やっぱ出場許可取り消すか?

イヤイヤ、そんなことをしたらきっと嫌われてしまう。

『父上なんて大嫌い!』

とか

『ダカン父さまのアホー!!』

とか言われたら、私は数日寝込む自信がある!


「それでは。父上、母上。姉さま、行って参ります。」

「頑張ってねぇ、アウラちゃんもエリーの事よろしくねぇ。」

「マリア母さま、大丈夫です。エリーは最強のお姫さまになったのです!」


姦しく女たちが挨拶を交わす。

止めるなら今なのだが‥‥


「父上、見ていて下さい。『アウラ流活殺術』をお目にかけましょう!」

「あ、ああ。しっかり励め。」

ああ!私のバカ!!

煽ってどうする。

だがあのエリザベートの燃える瞳に真っ直ぐに見つめられてはああ言うしかないではないか。


私は2人の「娘」の背中を見送る事しか出来なかった。



******


大会予選会場。


予選は城壁の外で行われる。

参加者が多いのだ。

この領の兵士、騎士のみならず冒険者たちも参加を許されている為である。

尚、他領の者は冒険者以外の参加は認めていない。


予選方法は1対1、各予選グループの上位2名が本戦に進む。

予選グループは全部で10組、本戦は20名で行われる。


エリザベートは予選グループ1組であった。

なんと初戦である。


相手は冒険者か。

な、何!

あの者は確かグエン、高位の冒険者だ!


まずエリザベートに勝ち目は無いだろう。

しかしグエン!

もしエリザベートにキズを付けてみろ、暗部を差し向けて亡き者にしてくれるわぁ!!



《これより予選グループ1組、第一試合を開始します。》


いよいよ始まってしまう。

エリザベートよ、どうか無事で帰ってきておくれ。


《みなさんご存じ、Aランク冒険者のグエン!流派は無手勝流!!》

ほう。大した人気だ。

歓声がなかなかのものだ。


《対しますはエリザベート・フォン・ギュスターブ、流派はアウラ流活殺術?》

おお!エリザベート、凛々しいぞ!!


「おい、あれって残念騎士さんだよな?」

「ああ、姫さまだ。」

「アウラ流活殺術ってなんだ?聞いたこともねぇ。」

クスクス

クスクスクスクス


『引っ込めー残念騎士-!』

《わはははははは》


ぐぬぬぬぬ。

おい、今叫んだ奴をいつでも確保出来るようにしておけ!


《おほん、では!第一試合。》

《始め!!》


おのれグエン!

完全に舐めておる。

エリザベートを前に棒立ちではないか!


エリザベートは‥‥


な、なんだあの踏み込みは!

あの距離を一気に詰めるとは!!


そして袈裟懸けに剣、一閃。

当然躱されるか‥‥ってなんだとおおおおお!?


何故グエンが場外まで吹き飛んでいるのだ?

剣を躱されたエリザベートはグエンに背中を見せていた。

あの体勢から何が出来た、何が起きた!


《し、勝者。エリザベート・フォン・ギュスターブ嬢!!》


会場に喝采は起こらない。

だか残心を解いたエリザベートは誇らし気に佇む。


みな自らの目を疑っている。

それは私も同じだ。

エリザベートよ、この一月でお前は何を得たのだ?


凄まじきは『アウラ流活殺術』よ。

私は我が娘たちの事ながら背筋に冷たいものを感じた。

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