第10話 明日の光を抱いて眠る
日記帳を閉じる。革表紙の感触が、確かな手応えを伝える。彼女は深呼吸をした。
窓の外で、最初の星が強く輝いた。コレットは読み終えた日記帳を抱え、窓辺の腰掛けに座った。目が輝きすぎて、視界がにじむ。
瞼の裏が熱く、瞬きが乾いている。頬に火照りが滲み、肌が張っている。
唇が乾いて引っ張られる。眉間に汗の粒が集まる。
彼女は日記の最後の数ページを繰り返し見つめた。セーラとの会話の記録。誤解の記録。
「……こわかった」
窓ガラスに囁きが吸い込まれる。恐怖の正体は、目の前の相手ではなかった。自分自身の勘違いだった。
まつげが重く、焦点が定まらない。顔全体が熱く、皮膚の下で血が走る。
記録が彼女を変えた。受け身だった身体が、前を向き始めた。
彼女は日記帳を閉じ、胸に抱きしめた。革の温もりが、高ぶる鼓動をなだめる。
窓の外、遠くの海に灯りが一つ浮かぶ。それは彼女の立てた計画の、最初の目印のようだった。日記の最後のページが閉じられた。革表紙がカチリと音を立てる。
コレットの指先に、微かな震えが残っている。今しがた書き記した文字が、皮膚の下で熱を持った。
彼女は机の上を見渡した。散らばった羽ペンとインク壺。乱れた羊皮紙。
一つひとつを元の位置に戻す。指が道具に触れるたび、確かな手応えが伝わる。
「……よし」
囁きが、静かな部屋に落ちた。彼女は肘掛け椅子から立ち上がる。足の裏が冷たい石を踏む。
窓辺に目をやる。闇の中に浮かぶ星が、一つ、また一つと増えている。
胸の奥で固まっていたものが、ゆっくりと溶けていく感覚。呼吸が深くなる。
彼女は最後に日記帳を手に取った。重さを確かめるように、掌で量る。
革の温もりが、ほてった頬に似ている。
「これでいい」
机の引き出しを開け、日記をしまう。金具がかちりと鳴る。
彼女はその音に耳を傾けながら、ゆっくりと深呼吸をした。
夜の空気が肺を満たす。冷たさが、体の内側にあった熱を静めていく。
まぶたを閉じると、明日の光がまぶたの裏に浮かんだ。日記をしまった机の上が、やけに広く見える。コレットは肘掛け椅子から立ち上がった。足の裏が床の冷たさを吸い込む。
胸の鼓動が、静かなリズムに落ち着いている。呼吸が深く、夜の空気が肺の奥まで届く。
彼女は窓辺から寝室へ歩き始めた。足取りに、ふらつきはない。
ベッドサイドのランプが、柔らかな弧を描く。天蓋の影が、壁に長く伸びる。
彼女はドレスワードローブの前で立ち止まった。指先がボタンに触れる。一つ、また一つ。
布が肩から滑り落ちる。冷気が肌にまとわりつく。
「……明日からだ」
囁きが、ランプの灯りに揺れる。彼女は寝間着に袖を通した。布地が肌に吸い付く。
ベッドの端に腰を下ろす。マットレスの弾力が体を支える。
彼女は最後に窓の外を見た。星々が、遠くの海を照らしていた。
ランプの芯を消す。闇が静かに部屋を満たす。
まぶたを閉じると、セーラの声が耳朶に残る。アルヴィンの言葉が、胸の内側で温かい。
彼女は深く息を吐いた。体が沈み、布団の重みが安心を運ぶ。
闇の中、明日の光がまぶたの裏で膨らんでいく。日記をしまった机の上が、やけに広く見える。コレットは肘掛け椅子から立ち上がった。足の裏が床の冷たさを吸い込む。
胸の鼓動は静かだが、目がぎらつく。顔が火照って熱い。疲れが骨の髄に染みる。
彼女は窓辺から寝室へ歩き始めた。足取りにふらつきはない。
ベッドサイドのランプが柔らかな弧を描く。天蓋の影が壁に長く伸びる。
ドレスワードローブの前で立ち止まる。指先が背中のボタンに触れる。一つ、また一つ。
布が肩から滑り落ちる。冷気がほてった肌にまとわりつく。
「……明日からだ」
囁きがランプの灯りに揺れる。寝間着の袖を通す。布地が肌に吸い付く。
ベッドの端に腰を下ろす。マットレスの弾力が体を支える。
最後に窓の外を見る。星々が遠くの海を照らしている。
ランプの芯を消す。闇が静かに部屋を満たす。
まぶたを閉じると、セーラの声が耳朶に残る。アルヴィンの言葉が胸の内側で温かい。
深く息を吐く。体が沈み、布団の重みが安心を運ぶ。
闇の中、明日の光がまぶたの裏で膨らんでいく。
***
リネンの寝間着が肌に吸い付く。冷たい布地が、ほてった皮膚を少しずつ鎮めていく。
コレットはベッドの端に腰を下ろした。マットレスが重い体を優しく受け止める。
窓の外を見上げる。ガラス越しに、星々が遠くの海をぽつり、ぽつりと灯っていた。
ランプの芯を指でつまみ、そっと消した。闇が、音もなく部屋の隅々に流れ込む。
まぶたを閉じる。セーラの穏やかな声が、耳の奥でかすかに残響する。アルヴィンの言葉が、胸の内側でほのかな温かさを保っていた。
深く、ゆっくりと息を吐いた。体が布団の中に沈み込んでいく。重い羽毛の掛け布団が、全身をそっと包み込む。
闇の中、明日の光が、まぶたの裏で静かに膨らみ始めた。
***
リネンの寝間着が肌に吸い付く。冷えた布地が、ほてった皮膚を少しずつ鎮めていく。
コレットはベッドの端に腰を下ろした。マットレスが重い体を優しく受け止める。
窓の外を見上げる。ガラス越しに、星々が遠くの海をぽつり、ぽつりと灯っていた。
ランプの芯を指でつまみ、そっと消した。闇が、音もなく部屋の隅々に流れ込む。
まぶたを閉じる。セーラの穏やかな声が、耳の奥でかすかに残響する。アルヴィンの言葉が、胸の内側でほのかな温かさを保っていた。
深く、ゆっくりと息を吐いた。体が布団の中に沈み込んでいく。重い羽毛の掛け布団が、全身をそっと包み込む。
闇の中、明日の光が、まぶたの裏で静かに膨らみ始めた。
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