表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もりとき怪談 第二集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/50

百物語


 この間、大学の友達と百物語をやることになったんだよね。

 友達の伯父さんが別荘を所有してて、使ってないから夏休みにみんなで遊びに行ったらどうだって言われたんだって。だから泊まりで遊びに行くことになったの。

 それでメンバーを10人集めて、ひとり10話怖い話をすると百物語になるって話になってさ。

 私は小さい頃からちょっと不思議な体験をすることがあったから、それを10話、携帯にメモしてた。

 小さい頃からの不思議な体験って言っても、バイト帰りに夜道を歩いてたら街灯の下で足踏みしている黒い影を見たとか、レストランにいたら誰もいないのに耳元でため息をつかれたとか、そんな感じ。直接的には怖い体験はしてないけど、ちょっと気味が悪いなぁ程度。

 でもそういう小さな体験を集めたら、ちゃんと10話分集まったんだ。


 で、うちはおばあちゃんと一緒に住んでるんだけど、おばあちゃんは霊感があるみたいなんだよね。

 私がそういう体験をすると、話す前から「あんた、なんか変なのがついてるね」って言いながら、塩をまいたり、肩を叩いたりするのね。

 おばあちゃんの口から「幽霊が見える」とは聞いたことない。でも時々、知らない人がおばあちゃんに相談しに来たりすることもあったんだ。


 まぁ、こんなおばあちゃんだからさ。

 大学の友だちと泊まりで遊びに行ってきますって言ったら、止められるかなぁって思ってたんだよね。

 おばあちゃんはさ、私の目をじぃっと覗き込んで「ろくなもんじゃないね。これ、持ってきな」ってポケットから取り出した紙を渡してきたの。

 おばあちゃんは「ポケットの中に入れて、ずっと持ってるんだよ」って言ってた。紙には何か文字が書かれていたけど、達筆すぎて全然読めなかった。

 とりあえず、おばあちゃんの言う通り、私は紙をポケットに入れておいた。


 友達の伯父さんの別荘は避暑地にあって涼しかったし、街にもすぐ出れる立地だった。別荘なんて初めてだったから、めっちゃテンション上がったよ。ちゃんと掃除もされてて、部屋決めするときもすごく楽しかった。

 それで夜になってから、いよいよ百物語を開始したのね。友達の伯父さんの別荘だし、火事が起きたらヤバいから、ろうそくは使わなかったよ。

 その代わり、個包装されたいろんなお菓子を100個用意して、1話語り終わるたびにそれを食べるってことにしたの。この時点で百物語のルールからは逸脱してたけどさ、私達は雰囲気を味わいたいだけだったから、それはそれで良かったんだよね。

 照明を消してランタンの光だけにしたら、かなりいい感じだった。


 話数がどんどん進んでいってさ、外で木の葉が風で揺れる音や、部屋のどこかがパキッと鳴る音で、みんないちいちビビったりしてさ。

 そのたびにキャーキャー言って楽しかったんだけど、私はなんだか話が進むごとに部屋の空気が重くなるような感じがして、それが気になってた。

 ランタンの光が届かない部屋の隅の闇が固まって、得体の知れない何かに変わるような気配を感じて、怖かった。もちろん、雰囲気にのまれただけで気のせいだったんだろうけどね。


 で、いよいよラスト1周で百物語が終わるってなった。晩ごはんを早めに済ませて話し始めたのに、時計はもう深夜の3時を回ってた。

 私の番が来て、携帯のメモを確認したら、メモしたはずの10個の怖い体験が9個だけになってた。

 あれ、なんで?

 仕方ないから最初に話した怖い体験をちょっとだけアレンジして、もう1回話した。

 眠そうにしてた人もいたし、みんな最初の方の話なんて忘れてるみたいで、誰にも「その話、最初にしたやつじゃん!」って言われることはなかった。


 そのままラスト1周が終わって、しばらく誰も何も言わなかった。「終わったけど、何も起こらなかったね」なんて言いながら、友達が電気をつけて、それでおしまい。

 私が部屋の隅に感じていた気配も消えていた。

 結局、私達は別荘での休暇を満喫して、何事もなく無事に帰ったんだ。


 それでさ、家に到着したら玄関の外でおばあちゃんが仁王立ちしててさ。

「あんた、またつまんないの連れてきたね」って言って、手に持ってた袋いっぱいの荒塩を全部私にぶっかけてきたんだよ。ひどくない?

 おばあちゃんが私の前にてのひらを出してきたから、私はポケットからおばあちゃんからもらった紙を取り出して返したの。

 そしたらおばあちゃんは満足そうに笑って「こいつは役に立っただろう。お陰で99話で済んだんだよ」って言った。

 おばあちゃんの言葉にハッとして携帯を見たら、メモしてた怖い体験は10個に戻ってた。

 もし百物語がちゃんと終わってたら、何か怖いことが起きてたのかなぁ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ