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もりとき怪談 第二集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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11/11

笑い声

 高校の頃、友達のクミの家に泊まりに行ったときに、ちょっと怖いことがあったんだよね。

 クミとは高校で同じクラスになったのがきっかけで仲良くなって、学区が違っただけでけっこう近くに住んでたんだ。

 だからお互いの家でお泊り会とかをすることも多かったの。

 いつも通りに深夜までおしゃべりしたり、漫画を読んでだらだらしたりして過ごしてた。長かった夏が終わって秋が始まった頃で、少しだけ開けた窓から秋の夜の風が部屋の中に入ってきた。

 その風に乗って甲高い笑い声みたいなのが聞こえてきて、私は窓の外を見た。

 クミの家はマンションの4階。外を眺めて見たところで下の風景なんてあんまりよく見えなかったけど、街灯の照らしている範囲で誰かが歩いてる、なんてこともなかった。

 また、聞こえた。


「ひゃぁ〜〜、ひぃっひぃっひぃっ」


 文字にすると、こんな感じの笑い声。引き笑いみたいな感じだった。

 私は漫画を読んでいるクミに「ねぇ、今の笑い声、聞こえた?」って聞いたんだけど、クミはきょとんとして「笑い声? 聞こえないけど」って言いながら、私の横へ来て一緒に窓の下を覗き込んだ。

 それから何度か「ひゃぁ〜〜、ひぃっひぃっひぃっ」って笑い声が聞こえたけど、私が「ほら、聞こえた」って言っても、クミは首を傾げるばかり。

 笑い声は最初は風に乗ってかすかに聞こえる程度だったけど、徐々にこちらに近付いてきているのか次第にはっきり聞こえるようになった。でもまだまだ距離がある感じ。

 私が気味悪がっていると、クミは窓を閉めて「もう寝ようか」って言ってきた。

 私は頷いて、クミは自分のベッドへ、私は用意してもらった布団へ潜り込んだ。

 窓を閉めると、笑い声は聞こえなくなった。


 すぐに寝入ったんだけど、深夜にふと目が覚めたのね。

 外から「ひゃぁ〜〜、ひぃっひぃっひぃっ」って笑い声が聞こえた。マンションの壁に反響して、音はエコーがかかったみたいにボワボワしてた。

 笑い声は女性の声みたいだった。寝る前は遠くを歩いていたのに、ついにこのマンションの近くまで来たんだ。

 この不気味な笑い声の女がクミの家の玄関前まで来るんじゃないかと思って、私は怖くなった。窓に背を向けて横になるとクミのベッドが目に入った。

 常夜灯がぼんやりと照らす部屋で、クミは上半身を起こしてベッドに座っていた。

 もしかしたら、クミも笑い声で目を覚ましたのだろうか。

 そう思って、私はクミに声をかけようとしたの。その瞬間。


「やっと、聞こえた……」


 クミがそう言った。

 私が「え?」って言って起き上がるのと、クミが笑い出すのは同時だった。

 クミの口から、甲高い声で「ひゃぁ〜〜、ひぃっひぃっひぃっ」って笑い声が漏れた。

 クミは息をするのを惜しむように、ずっと「ひゃぁ〜〜、ひぃっひぃっひぃっ」って笑い続けた。常夜灯に浮かび上がるクミの横顔は目がこれでもかと見開かれて、開いた口の端からはよだれが垂れていた。

 窓の外からは、クミの笑い声に呼応するかのように甲高い笑い声が聞こえていて、不快な合唱みたいだった。

 私は呆然として笑い続けるクミを見つめてたけど、いつの間にか気を失ってたみたい。意識を取り戻したときには、もうすっかり朝になっていた。


 私は起き上がってクミを見た。

 まだ眠っていたクミを揺り起こしてみると、クミは眠たそうに唸った。

「なぁに、もう朝?」と言ったクミの声はガラガラになってた。クミも自分の声に驚いて「えっ、何この声。喉痛い〜」と言って自分の首元をさすっている。

 私は途中で気を失ってしまったからクミがどれだけ長く笑い声を上げていたのか知らないけど、けっこう大きい声で笑ってたし引き笑いだったから、喉に負担がかかったんだろう。

 クミは喉以外にはおかしくなったところはなかったみたいだし、私から見てもいつも通りのクミだったからちょっと安心した。もしかしたらクミが変なのにとり憑かれちゃったんじゃないかと思ってたから、そうじゃなくて本当に良かった。


 私は夜のことはクミには伝えなかった。

 それからはお泊り会はクミの家じゃなくて、私の家でやるようになった。私の家でのお泊り会では、クミが深夜に笑い出すなんてことはなくて、あの甲高い笑い声を聞くこともなかった。

 あの笑い声を今でもときどき思い出して、何だったんだろうって思う。



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