表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男女比1:5の世界でサバイバル  作者: 桃野産毛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/89

第68話 神の定義

 このクジラは、『オメガドライブ』は、

そもそも黒幕の用意した救済プランか。

俺は思わずうなずいてしまう。


「何て効率がいいんだろう。

そう、思いましたね?」


 女神に図星をつかれる。

思ったよ、確かに。

すげー、ばつが悪い。


「ふふっ。

貴方はもしかすると、

アレに似ているのかも知れませんね。」

「うるせぇ。

まだ終わりじゃないだろ。」


 女神は続きを語り出した。


「女性だけの世界、と口にだして言うと、

誰もがまず思い付くのは繁殖の問題です。

 当時、今より科学が発達していましたが、

それでもIVG技術では遺伝子的多様性を確保できませんでした。

その技術の発展を待つ間は、

『オメガドライブ』から適宜新しい遺伝子を補充するのがアレの案だったのです。」


 俺は専門じゃないので、IVG技術について詳しくない。

詳しくないが、単純に考えると。

 男性は染色体をXとYの二種類二つ、

女性はXの一種を二つ持つ。

なので、男性同士の受精卵なら男児も女児も出生可能だ。

だが、女性同士では女児の受精卵しかできない。

 X染色体をY染色体に変える。

もしくは、受精卵のDNAを直接操作しないと、

IVG技術では遺伝子的多様性を確保できないと思う。


「それでも限界はある。

そうだろ?

『試験管の中のDNA』じゃ、限界がある。

 それと、

この『オメガドライブ』の動力源は無関係じゃない。

そうだろ?」


 俺はため息のように言い放つ。


「貴方は本当に、頭がいい。」


 女神の顔がほころんだ。

そして、真っ白な部屋の壁一面に映像が写し出された。

 映像を良く見ると、

海ぶどうやスズランの花のように赤い粒が太いチューブにぶら下がり、束になっている。

その赤い粒のような物を、女神が拡大して表示した。


 そこには、人間が入っている。


 赤ん坊のように四肢を折り畳み、

身体中から無数のチューブを生やした人間だった。

俺も予想はしていたが、

実際に目で見るとかなりのショックを受けた。


「人類の遺伝子的多様性を保持するため、

人間を『保持』しています。

その意識は仮想空間で管理しています。

 人類史の二十世紀後半から二十一世紀の中頃までをループさせた世界に彼らの意識はいます。

あの映画と同じものだとイメージしていただいて結構です。」


 黒いロングコートを着て来ればよかった。

なんて、思えるだけ俺には余裕があるのか。


「仮想空間で外の世界と同様に産まれ、

育ち、生活して、恋をして、子を成す。

 ちゃんと夫婦の受精卵を作成して人工子宮で育て、

産まれた子もこのカプセルに繋ぎます。

死亡したら、その身体は溶解。

無機物を生成する原料にします。

 それで生成されたミネラルは、

別で生成したタンパク質などと共に生きている人々へ配給します。

 焦がさないよう鍋をかき混ぜるがごとく。

遺伝子的多様性を保ちながら、

TFR、合計特殊出生率を2前後で緩やかに増加させつつ。

人類を『保存』ではなく、『保持』する。」


 無駄がない。

俺には素晴らしいシステムだとすら思えた。

だが、吐き気がする。


「そして、

彼らの発する生体電気を動力源にして、

『オメガドライブ』は動いています。

貴方のご想像の通りですよ。」

「嬉しくない答え合わせばっかりじゃねぇか。

本当に嫌だ。

嫌だが、聞きたい。

『俺、ここにいたんだよな?』」


 女神がもう一度、言う。


「おかえりなさい。」


 そして、大きく写し出されたのは、

赤いカプセルに入った前世の俺の顔だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「黒幕」は何を考えてるんでしょうねえ? 主人公以上の天才で、今も世界を監視しているなら「女性だけの世界が既に詰んでる」って事を理解しているだろうに…
ううーん、なるほどなあ! 終わった世界が偽物で、主人公の前世の世界が別にちゃんとあるって先入観があった しかし、よくここまで現実世界ボロボロにできたな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ