第63話 台風の目
俺は戦車の操縦席に座って、
視界に入った『オメガ』を見つめる。
ここは空の上。
対『オメガ』決戦用戦車の飛行モードだ。
「離陸、飛行、巡航がこんな簡単に操縦できるの凄い。
もう、ゲーム機じゃん。
ゲーセンにあるシュミレーションゲームじゃん。」
多分、認知能力の低い人間でも操作可能なように設計されている。
もう、ここまで来るとバネロが恐ろしい。
彼女が若かったら、俺負けてる。
あの頭脳に軍人の体力があったら、もう本当に魔王だ。
「巡航速度、812km/h。
一時間三十分で強風圏、および強磁場地域に突入。
突入後、更に二時間で『オメガの目』に接近する予定です。」
バニラには計器の読み取りと計算を頼んでいる。
機内は二人きり。
自動航行の高度まであがり、
操縦も必要なくなった今なら、
落ち着いて考えることができた。
今なら超冷静。すげぇクール。
そう、今なら。
そんな冷却済みの頭で考えるが、
やはり俺は追い詰められている。
あそこでロックを登録したのは賭けだった。
そして、負け気味の勝ちだ。
ギャンブルに一万円いれて、七千円返ってきた感じ。
ぶっちゃけ、他の方法もあった。
今なら二パターンくらい思い付く。
でも、あの場であの瞬間ではあれが最適だった。
「悔やんでも仕方ない。
トライ&エラー。
切り替えろ、俺。」
どう足掻こうが、俺のやることは変わりない。
それに、この先に待っているものは完全に予測不能。
世界を破滅に追い込んだ元凶の中へ向かう。
「俺の予想だと、『オメガの目』。
台風の中心に女神がいる。
どういう風にいるのかわからないが、きっといる。
百年以上世界を回った化物だ。
女神の正体がただ者じゃないのは確定。
考えられるのは、人工知能。
もしくは、
ちょっとした町かなんかがあって、
複数人が代替わりしつつ運用している、とか。」
どちらにせよ、
その女神がやりたかったこと。
それが、きっと俺がさっきやってしまったこと。
『行動を起こせる男』の存在を黒幕に示すこと。
だから、女神は行動すれば良くも悪くも、
と言う変な言い回しをしたと俺は見ている。
俺があの収容所で暴れるなりなんなりして、
騒ぎが起きれば黒幕が俺に気付く。
おそらくそれを合図に女神は何かをしようとした。
「でも、俺が上手くやりすぎた。」
だから、黒幕がなかなか動かなかった。
女神はこの自体をどう考えているのか。
後、黒幕が動いたら何をする気だったのか。
「俺がマイナス要素になっているなら、
俺が収容所に戻っても無視して別案を実施したろう。
そうせず俺にコンタクトをとったと言うことは、
きっと何かある。
何なんだ?
まさか、この世界のリセットボタン、
とか言わない?
『そんな良いもの』無いわな。」
俺は自虐的に笑う。
視界いっぱいに広がる嵐は、
今も俺を待っている。
機体が風で揺れる。
強風圏、暴風域は手動操縦でなければならない。
ここが最後の休憩だな。
俺はバニラに強風圏に入ったら起こすよう指示して、
椅子に深く座り込んだ。
「少し寝る。
ちょっとだけだ。」
思ったより疲れていたのか、
目を閉じるとすぐ眠気に襲われた。
俺は眠気に身を任せて眠った。




