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男女比1:5の世界でサバイバル  作者: 桃野産毛


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第62話 老いてなお、猛獣

 電気がついたと同時にエレベーターを動かした。

コイツ、箱が空の時は地下で待機するらしい。

さっきと違ってすぐ開いた。

 俺は笑顔で手を振る3544569に別れを告げて、

エレベーターの箱に乗り込む。


「止まるなよぉ。

頼む、頼む、頼む。」


 管制塔へあがるまで、気が気じゃない。

不確定要素満載だからだ。


「人心なんて一番わからんもん相手にするんだ。

『予想外が予想通り』だよ。」


 決められた手順と材料を用意すれば、

誰がやっても成立する科学とは全く逆。

社会不適合者の俺には難解すぎて踏み込みたくなかった。

それが人心。

 エレベーターは、無事に管制塔へ到着した。

俺は急いで黒い箱を取り出し、

近くの監視カメラを確認した。


「……バネロ、機械室で座り込んでやがる。

大丈夫か?

後で看守を向かわせよう。

 看守は……、守衛室にいないな。

うわ、二人とも外に逃げ出してやがる。」


 気持ちはわかるが、

地下の仲間とチップを助けに行くぐらいしろよ。

 俺は管制室への道順を覚えて駆け出す。

とりあえず、何をするにせよ施設を掌握してからだ。

たどり着いた管制室は、宇宙戦艦のような部屋だった。

時間があれば触りたいが、

グッと我慢してアドミニストレーター権限を行使する。


「俺だ。

アドミニストレーター権限を使って、

この施設の設備稼働権限を全て俺に付与してくれ。

他の人物の権限は削除だ。」


 一言で作業は終わる。

ここからは、一分一秒が惜しい。

多分、さっきのシャットダウンで黒幕に俺がバレた。

あんなことまでするヤツが俺を見逃してくれるはずない。

とにかく急がなければ。


「……軍用に良いのがある。

緊急用局地対応型装甲車。

『オメガ』に関係した事故などで生存者を探しに行くための車両。

最高速度は三百キロ。

水陸両用。

 暴風域まで耐えきれるか微妙だが。

最悪、片道でも良いんだ。

向こうに着いたら帰りはまた考えれば良い。」


 俺はこの装甲車を探す。

この管制塔の地下の駐車場にあるようだ。

俺は情報端末を取り出して操作する。


「長期間放置されてる。

整備がいるか?

その辺はロボットたちに頼もう。

 整備依頼を出して、バニラを管制塔へ呼んで。

……わかったって。

お前らが車の整備してる間、整備してやるから。

バニラはもう近くまで来てたのか。

入り口を解放しよう。」

「何をする気だ?」


 監視カメラから声が聞こえた。

バネロだ。

俺はマイクをオンにして返事をする。


「秘密。」

「フッ。つれないなぁ。

仕方がないか。

 今、私の端末に連絡が来た。

ライトとリンキーだ。

 ライトからは、

さっきのシャットダウンで街に影響が出たこと。

レオが他の円卓と協力して、

フル稼働で給電灯のチェックをしているそうだ。

 リンキーからは、『オメガ』の異常。

ある場所で『オメガ』が停止している、と。

 ……君は『オメガ』に向かうのか?」


 なんと言うか、さすがだ。

俺はマイクに口を近づける。


「今の見たろ?

黒幕は、まだいる。

お前らを見ている。」

「……死者、ではなさそうだ。

君が我々を滅ぼそうとしたのは、このためか。」


 そこまでわかったのか。

機械室で天をあおぐバネロ。


「あのアンドロイド、恐ろしいな。

ただただ、セックスができるだけ。

 あれだ、サキュバスだ。

七つの大罪、淫蕩。

大昔の架空の話。

 いや、あれは逸話と言うか、

為政者の自戒のお話だったのだろう。

ほとんど失伝しているが、

私は知っているぞ?」


 すげぇなぁ。


「私がこうやって解き明かすのも、

黒幕の思う壺なのかも知れんな。

 できれば、

私もそいつを一発殴ってやりたいが。

年寄りには冷や水か。」


 俺は何も言えない。

バネロの言う通り、

黒幕に情報が漏れる可能性が高いからだ。

 バネロは続ける。


「装甲車は使うな。

隠してあるが、

同じ車庫に対『オメガ』決戦用戦車がある。

私が念入りに隠していた。

いつかあの大災害を止めるために用意していた兵器だ。

 『オメガ』に追い付いて、

渦の中心まで突入、調査する前提で開発していたものだ。

装甲車より速く、飛行もできる。

海を渡るならそちらの方が早い。

 いつでも使えるよう整備済みだ。

急げ。」


 俺は、

バネロに礼を言えないことが悔しくてたまらなかった。

ここで俺が肯定してしまうのも、不味い。

唇を噛み締め、爪の跡が残るほど拳を握る。

 使わせてもらおう。

俺はマイクをオフにして、お礼を言う。


「ありがとう。

勇者はアンタだ。バネロ。」


 俺は魔王失格だ。

ここで高笑いをするのが魔王だが、

俺は笑えない。

 俺は街に緊急通信をして、

救助をここに呼んでから管制室を出た。

 車庫の戦車はすぐに見つけた。

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