閑話 検閲
バネロは執務室でチップとレオの報告書を眺めながら、
マリーから直接話を聞いていた。
「……本当に、
あのロボットはただただセックスをするためのものか?」
「はい。
私はあれの作業をつぶさにみておりました。
あれが眠っているときにシステムの中身も確認しています。
また、うちのシステムにクラッキングしたり、
バックドアを設置された形跡もありません。
……その、ただ。」
マリーが言いよどむ。
バネロは彼女に発言を促した。
「どうかしたか?
本当に気になった程度の情報でも良い。
是非に聞きたい。」
「……えっと、ですね。
そのー……。なんと言いますか。
本当にこんなことをするのか、
と思ってしまうような使い方がごまんと登録されておりまして……。」
マリーの言葉を聞いて、バネロは理解した。
バネロはちょっとたじろぎつつ、深掘りしてみる。
「……それは、そう言う行為のか?」
「はい。
戦闘や情報の破壊、テロ行為など。
そう言うものには繋がらない。
『純粋な性的興奮』、
『純粋な性的快楽』だけを追求したような。
ええっと。
卑猥を通り越えて、圧巻でした。」
顔を赤らめてマリーがそう言った。
「強いて言いますと、
あのロボットは一般的なネットワークにアクセスできます。
あのロボット自体に機密情報へのアクセス権はありませんが、
あの男にはアクセス権があります。
ロボットにキーボード等の入力デバイスがないので、
できるのはせいぜい機密情報の閲覧くらいかと。」
「情報の改編や破壊ができないなら問題ない。
あれも自分の提案したものの進捗くらい見たいだろう。」
バネロは苦笑いしつつそう答えた。
マリーは駄目押しをするように付け足す。
「私はあの男と言うものが信用なりません。」
「そうか。
だが、信用できないほどの高い能力だ。
利用しない手はない。
君たちも彼がロボットの整備をしていたので、
助かっていたと聞いたが。」
彼がいた百二十三日で、
整備が放置されていた日常労働ロボットたちのかなりの数が整備、修理された。
所員十人分の働きをしていると報告書にも記載されている。
「それとこれとは話が別です。
あれの技術と知識には感服いたしましたが、
あれは人ならざるものです。」
「……マリー君。
あれは人間だよ。
女性と男性の違いはあれど、人間だ。」
マリーがバネロの言葉を理解していないのが、
顔を見るだけで分かる。
だが、
バネロが今ここで何を言っても彼女は変わらない。
変えられない。
バネロは焦燥感にかられる。
この女尊男卑の概念をどう覆せば良いか。
ただでさえ時間がなく、
計画は全て急ピッチで進めている。
お陰で人員のほぼ全てが睡眠不足だ。
バネロはマリーを労い、下がらせた。
そして、バネロは執務室に一人残された。




