第36話 狂気の口撃
俺はカメラを睨み付けながら、
声に出さず二十数える。
沈黙が長続きされるのもよくないからだ。
今から二十数えてもなんのリアクションもないなら、
次の案に移る。
十五、十六、十七……。
「『私が一番給料が高い人物だ。』」
さっきとは違う声が外からした。
「『世界政府、軍部、元帥。
バネロと言う。』」
この世界の軍の階級の上下が分からないが、
前世だと元帥って言ったら一番上じゃねぇ?
しかも、世界政府ってか?
だが、俺が怯んだことを悟られる訳にはいかない。
「さすがに元帥が安月給なわきゃねぇな!
交渉だ!
俺はお前らの求めている情報を提供する!
その代わり、俺に俺のためのロボットを作らせろ!
材料から技術者も全部そっちもちでだ!」
「『その情報とやらが何か分からないね。
それでは交渉にもならないよ?』」
かかった!
俺はガッツポーズをしつつも、
マイクに叫ぶ。
「知恵だ!
記憶を操作できても、
俺の知識は取り出せない!
そうだろ?!」
記憶はデータだが、
知恵は経験と知識の合わさったものだ。
データ化できるとは思えない。
もし、できたとしたらこんな男女比にならないだろう。
「『なるほど。
知恵をくれると。
こちらには高性能なコンピューターがいくつもあるのに?』」
しゃっ! ここだ!
「だったら、なんでこんなんなるまでほっといた?
男女比がおかしいなんて、
いの一番に問題にするだろ?!
そのせいで、
お前ら明日に全滅してもおかしくないだろ?!
ナノマシンがいくら有用でも、
ウイルス全てに対応はできないだろうしな!」
向こうが沈黙した。
「先天性の病もどんどん悪化してるんだろ?!
平均寿命はいくらだ?!
五十年か? 四十年?
まさか、三十年とか?!」
返事はない。
だが、俺は押しきる。
「出生率はどうだ!?
なぁ、答えてくれよ?!
一人か? それともゼロコンマ以下か?!
今ここで俺を無視するには、
お前ら追い詰められ過ぎだろ!」
「『お前は私たちを救えると?』」
「お前たち次第だよ!」
俺は次のブラフを用意しつつも、
返事を待つ。
「『いいだろう。
交渉だ。』」
まずは交渉ができる状態にできた。
やっとスタートラインだ。
ここからは細かく話を詰める必要がある。
だから、今のうちに情報を集めて、
嘘でも話を詰められるようにする。
「よし!
続きはそっちで話そう!
お前のいるところへ連れていけ!
トラックの中の俺の荷物も一緒にな!」
「『いいだろう。
ただし、爆弾は解除してくれ。
心身の安全は私の名前で保証する。』」
「よっしゃ、聞いたぞバネロさんよぉ!
そっちの車に移るから少し待ってろ!」
俺は銃を構えながら、部屋を飛び出した。
向こうが口約束をどこまで守るか警戒は必要だ。
でも、情報を得るために俺は虎穴に飛び込む。




