第19話 穴ぐらの異変
俺は解放軍のボスと話をする。
周囲の軍服が睨み付けてくるが、
今の俺にはなんとも感じない。
「君は中央の軍事施設から逃げ出した。
そうだね?」
「あぁ。」
尋問だろうか。
なんと言うか、
コイツの聞き方がおかしくてケツの穴がムズ痒い。
演技臭い感じだ。
「君の身柄は我々が保護した。
情報提供に協力してほしい。」
はじめからそう言えば良いのに。
「君の生まれは?」
「施設だ。」
俺は可能な限り簡潔に答えることを心がける。
「そうか。
では、君の名前は?」
「4125774。」
毎日呼ばれて、
嫌でも覚えた転生後の俺の名前だ。
「その、それは名前ではないと思うんだけど。」
「そう呼ばれてた。
それ以外では呼ばれない。」
ボスと取り巻きは困った顔になる。
真意はどうあれ、
彼女らの想定した回答ではなかったようだ。
「あー、っと。
じゃぁ、質問を変えよう。
施設ではどんな風に生活してたのかな?」
俺は回答に困る。
素直に話しても、
コイツらで理解できるのか?
そもそも彼女らは知識として、概念として、
男性を知らないようだ。
そんな相手にどう話したものか。
思わず眉間にシワが寄る。
それを見たボスは何を勘違いしたか、
質問を変えた。
「やっぱり、
施設からどうやって逃げたか教えてほしいな。」
「施設のグラウンドに外出するときに、
暴れて逃げた。」
俺は意図的に色々省略したが、
嘘はついてない。
「軍事施設だよ?」
「詳しくは知らねぇが、
逃げられたからここにいるんだよ。」
俺の回答に納得いかない顔をするボスと取り巻き。
「聞きたいことがあるんだろ?」
思わず俺が聞き返した。
埒が明かない、とはこの事だ。
彼女らの対応は慣れてなさすぎる。
まぁ、相手は同意もなく実験台にされていた、
不幸な被験者。
色々と配慮しつつ、ってのはわかる。
それにしたって、奥手すぎだ。
ボスは少し黙り、意を決した顔になる。
「分かった。
聞くよ。
『君はなんだい』?」
なるほど、そう来たか。
女医が色々言っていたが、
何となく違和感を察したヤツもいたのか。
「漠然とした質問だな。
時間はあるか?
話し出したら、しばらくかかるぞ。」
「飲み物と、お茶菓子を用意させよう。」
俺の茶くらいだせよ、の皮肉に、
お茶菓子を付けて返してくれるようだ。
奥から取り巻きが紅茶とマフィンを持ってきた。
久々に見たゼリー以外の食べ物に飛び付きそうになるが、
それを許さないとばかりに轟音が辺りに響いた。
建物も揺れて、紅茶が盛大にこぼれる。
「なんだ?」
俺の質問の回答と言わんばかりに、
爆音が響く。
「『君たちは包囲されている!
抵抗は無意味だ!
速やかに武器を捨て、投降せよ!』」
俺は自動音声じゃないだけましか、
と思ってしまった。




