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お買い物

 香奈の家の前で待っていると、待ち合わせ時間の3分前にドアが開く。


 そして、白いふわふわしたシャツに黒いロングスカートという格好の香奈が出てきた。


「お、おはよう、コータ」


「あ、おは、よう……」


 ……な、なんか、ふわふわした服着てる……!!かわい……


 なんて感想で頭が埋め尽くされていたら、門から出てきた香奈が覗き込むようにして聞いてくる。


「どうしたの?」


「いや、なんでも……」


 無い、と言おうとして、やめた。


「ごめん、ちょっとびっくりしてた。すごく可愛かったから」


「ふえっ、あ、ありがとう……。コータも、かっこ、いいよ……」


「あはは……」


 母さんの、適当なジャージとかで行かないでよ?という言葉に従って、ちゃんとした格好をしてきてよかった……。元々ジャージで行こうとはしてなかったけど。


 少しソワソワしながら、俺たちは最寄りの駅へと歩き出した。


………

……

…


 2駅先のショッピングモールの一角の電気屋さんで、俺たちは早速ゲームソフトを探し始めた。とりあえず、今日の目的を済ませてしまおうということになったのだ。


 一つのソフトを手にとって香奈に見せる。


「これは?」


「ナシです」


「えー」


 俺が見せたのはホラーゲームの金字塔。ゾンビが大量に出てきて襲われるやつだ。パッケージには7作目であることが書かれていた。


「そんなに怖くないんじゃない?ほら」


「怖いよ!もうパッケージからして!てか見せないで!」


「怖がりだなあ。昔からそんな感じだったっけ?」


「だったよ!」


「お化け屋敷で大泣きして途中の出口から出て行ったのは懐かしいけどね」


 香奈のお母さんに手を引かれていく香奈の姿をよく覚えている。小学2、3年生くらいのだったと思う。


 ……あの時、お化け屋敷に行きたいって言ったの多分俺だな。そう考えると、まるで成長していない気がするな。ちょっと気をつけよう。


「覚えてるじゃん!」


「ごめんって、目についたからつい、ね」


「もー……」


 口をすぼめる香奈を見ると、また時々こうしてイタズラをしたいという気持ちが湧いてくる。……これが嗜虐心ってやつか。ほんとにほどほどにしないとな。


「あ、これじゃない?百山くんが言ってたやつ」


「どれ?……うん、そうだね。基本は協力ゲーだけど、ミニゲームで対戦もできるって言ってたっけ」


 ちなみにやったことはないらしい。


「これ可愛いね〜。私結構好き」


「そうだねぇ。2人プレイ専用って珍しいし、こういうのもいいかも」


 パッケージの裏面をじっと見つめているのを見ると、かなり気になっているみたいだ。


 とりあえず、第一候補ということで、他のソフトも見て回る。


………

……

…


「あ、これも可愛い〜」


「可愛いけど、それ2人プレイできるの?」


「うーん?……できるっぽいけど、基本は1人用なのかな?」


「あー……、まあ、交代でやってもいいけどね」


………

……

…


「ねえ、これどう?」


「何これ!?し、鹿……?」


「そう。見るからにバカゲーだけど」


「ふふっ、ちょっとやってみたいけど」


「ほら、こんな走り方してるよ」


「あははっ、なんでそんな胸張ってるの、鹿なのに」


………

……

…


 一通り見て回って、2周目。とはいえ、惰性で歩いているだけだけど。


「どれがいいかな?」


「うーん……、迷っちゃうねー」


「まーねー」


 そう返したけど、なんとなくあれじゃないかなと思うソフトがある。


「僕はもうこれかなってのがあるけどね」


「え、ほんと?……えー」


 香奈はこちらをじっと見てくる。


 目があったので、そのまま見続けていると、だんだんと香奈の顔が赤くなっていく。


 え、目を逸らしたら、負けなの……?


 

 この勝負は10秒しないくらいで俺が勝った。危なかった……。凝視していると、顔の各パーツに目が入ってしまって、めちゃくちゃ恥ずかしかった。……可愛くなりすぎだろこの子。


 熱くなった顔を冷まそうとして手を頬にやっていると、勝負に負けた香奈が、赤い顔でポツポツと何かを呟いていた。


「いや、2人で楽しい……、でもこれ、夫婦の……」


「どうした〜?大丈夫?」


「だっ、大丈夫!……私も、アレかなってやつ、決めたよ」


 香奈がムンッと覚悟を決めたように言う。


「じゃあ、違うやつだったらディベートしようか」


「そんな勝敗決める感じでいくの!?」


「ちゃんと審判呼ぶからね」


「がちのディベートだ…!部活でやるやつじゃん」


 ちなみに全然ディベートに詳しくはない。うちの高校にはディベート部があるので、多少は知っているけど、多分全然得意じゃない。でも、香奈とならいい勝負できるんじゃないかなと思っている。


「じゃあ、せーので指差す感じで」


「うん」


「「せーのっ」」


 俺たちの指は同じ方を向いた。


「あー、やっぱりこれだよね」


「そ、そうだよね」


 ディベートはすることなく買うゲームが決まったので、手にとってレジの方へと向かった。


………

……

…


 会計が終わって、店を出る。


 なんか、レジのお姉さんがやたらとにこやかだった気がするんだよな……。まあ、そんなことはいいか。


 ちなみに、こっそり例のホラーゲームも買ったら、普通にばれた。まあ、いつか罰ゲームとかでやってもらおうと思ってる。


「この後どうしようか。ちょっと他の店見て回ってからお昼にする?」


「そうだね!お昼にはまだちょっと早いもんね」


 早めにお昼を食べて早く帰って、早速ゲームをしてもいいと思ったけど、香奈の反応がいいので、言った通りにするか。


「じゃ、行こうか」


「うん!」

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