久々に家に行く
「おじゃまします…」
「いらっしゃい」
久々に入ったコータの家は記憶の中のものと、あんまり変わらなかった。
なんだか、いろいろな物が小さく感じるけど……。
「……どうかした?」
「あ、いや、ひさしぶりだなあって」
「そうだね。来てくれてありがとう」
少し笑ってコータは言う。
その言葉と笑顔のせいで少し顔が熱くなる。
……こんなにコータってこんなにストレートに話すタイプだったっけ⁉️……割というタイプだった。
リビングに通されたのだけど、そのままコータはキッチンへと向かってしまう。
昔はソファにどーんと座ったりしていたような気がするけど、高校生になってもそんなふうにするわけにはいかないと思う。いや、年齢もだけど、いろいろな立場を振り返っても絶対にそんなふうにはできない。
……あれ、じゃあ私はどうすれば……?
え、今日なんで来たんだっけ。というか、おばさん……コータのお母さんは?え、今日、親いないんだよね……、ってこと⁉️いや、そんなこと言ってる場合じゃない。
えーっと、えーっと……。
「え、なんでそんなところに……?」
「……久しぶりで、テンパっちゃって……?」
「ええ……?」
困惑顔のコータに何もいうことができず、沈黙が流れる。
飲み物を両手に持って立ち尽くすコータと、その正面に正座する私。そして私の前には、マジックで使う道具が並べられている。
いや、なんでわたしこんなに綺麗に広げた……?
万引きでもしたのかってなるでしょこんなの。
「ぷっ…あははっ、そうはならないでしょ!変な商人みたいになっちゃってるじゃん」
変な商人……あ、露店みたいな感じかな。
恥ずかしくて頬に手をやると、自分でも熱くなっていることがわかる。絶対顔真っ赤だ。
……そうして、顔を冷やそうとして、手を当てている間、コータはくっくっと笑い続けてる。
「笑いすぎじゃない?!」
「ごめんごめん。いや、ほんと、見れば見るほど意味わからなく、ふふっ」
「もー……、ふふっ」
頬を膨らませてみたけど、それでも楽しそうに笑うコータを見て、わたしにもそれがうつる。
……楽しいな。
この楽しさが、わたしが取り戻すことができた物だのだということを、ふと、実感した。
コータの笑いが収まって、静かになる。
そして、改めてコータがこちらを見て言う。
「じゃあ、早速……、お嬢ちゃん、このコインは一枚いくらだい?」
「いや露店じゃないよ!」
もー!!
緊張していたのがバカみたいだ。
「あはは、ごめんごめん。てか、そんな急いで準備しなくても」
「テンパっちゃったの!」
「久しぶりだからってそんな」
ちゃんと準備してきて、ちゃんと着替えてからきて、心の準備もしっかりしてきたつもりだったのに、いざ来てみたら何て馬鹿なことやってるんだろうか。
「ほら、飲み物持ってきたよ。落としそうだったけど」
「むぅ……ありがとう」
楽しそうなコータにそう答える。
コータはお茶とりんごジュースを持って来ていた。
「ほら、座って座って。見せてとは言ったけど、それだけで帰っちゃうわけじゃないでしょ?」
「あはは、そうだね……」
テレビ番組じゃないんだからと笑うコータ。
促されて座ると、わたしの前にりんごジュースが置かれる。
「そういえばさ、なんで奇術部なの?」
コータが隣に座る。
「えっとねーー」
昔の、いつも通り、だ。
………
……
…
「あーー!!なんでぇ⁉️」
「このコースつるっつるだからね」
「コータはなんで落ちないの⁉️」
「経験ですよ、香奈さん」
「おんなじところで曲がってるのに!」
「使ってるカートの性能全然違うからね」
そのカートめっちゃ曲がりにくいから、と付け加えるコータ。
だから選ぶとき、ニヤニヤしてたんだ!言ってよ!
少しお話しして、マジックを披露して、その後に私たちはゲームをしている。久しぶりにやろうとコータから誘ってくれて、胸が暖かくなった。
……今は、頭が熱くなってるけど。
やっているのは超有名なレースゲーム。アイテムを使って、加速したり、相手を攻撃したりできるやつだ。
今の所の結果は、もう散々だ。
超強いアイテムを手に入れたと思ったら奪われたり、最強のアイテムを手に入れたと思ったら落ちていったり……今走っているコースではもう道の外に10回くらい飛び出している気がする。
そして、もうゴール前最後のコーナーだ。順位は最下位の一つ上。ここで落ちたら絶対に最下位になってしまう。
「今!」
「えいっ」
もうゴールしているコータの声に合わせてゲームのスティックを倒す。そして、わたしが操作するカートはコースの外側に近づきながら向きを変えていく。
また道から外れるかと思ったけど、ギリギリで踏みとどまって、曲がり切ることができた。
「やった!!」
「あだっ」
嬉しくて体を弾ませると、頭に衝撃が伝わる。そしてコータが小さく声を上げた。
わたしはいつの間にか体を傾けていたみたいで、喜んだ弾みにコータの方に頭突きをしてしまったみたいだった。
「ご、ごめん!大丈夫!?」
「え、あぁ全然大丈夫。びっくりしただけだから、……あっ」
「え?……あっ」
わたしが操作していたカートはゴール前のギリギリで止まっていた。そして、ちょうど最下位だったコンピュータが操作するキャラがゴールしていった。
「あー……、せっかくいけたのにもったいない」
「いや、それより肩大丈夫!?」
「大丈夫。びっくりしたけどね」
「よかった…、ごめんね」
謝るとコータは、クツクツと笑って答える。
「いいよいいよ。すごい傾いてて面白かったし」
そう改めて言われると恥ずかしくて、少し顔が熱くなる。
「むぅ、それも言ってくれればいいのに……」
「面白かったから、つい、ね」
画面には優勝カップが映されていて、コータが操作していたキャラクターが1番真ん中でポーズを決めていた。
「はー、全然勝てなかったなあ」
いろいろあったし、最後はゲーム外でのハプニングというまさかの幕切れだったけど、やっぱり悔しい。
「まあ、やっぱりうちにあるゲームだとね」
「わたしも買おうかな……」
「ゲーム機本体から買うとだいぶ高いよ?」
「あー…、そうだよね」
そう答えると、コータは携帯の画面を見せてくる。そこにはゲーム機の値段が書かれている。
流石に今の悔しさを理由には買えない値段だ。
コータの携帯の画面を見ていると、ゲーム機の下に、ゲームソフトの値段が書かれている。
これくらいの値段だったら、買えるんだけどなぁ……。
「……あ、じゃあ、今度新しいソフト買いにいかない?」
「あー、……それいいね。今度行こうか」
コータは携帯の画面を見て答える。
…………あれ、これって……、2人でお買い物に行くってことじゃない!?




