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序章
序章
――目の前で人が死ぬのは嫌だな――
その瞬間頭によぎったその言葉と、身体が動き出すのはほぼ同時だった。
―キィー…ッ―!
まさかその代償に、自分が吹っ飛ぶとは思わなかったけれど。
「そういう瞬間」というのは、人間誰しも一度は経験するのだろうか。
つまり、「あ、死んだかも?」と思う瞬間をだ。
少なくとも私は、22年間生きてきて始めての経験だ。
吹っ飛んでいるその時間に見えたもの――…
クールビズ仕様の、けれど気品ある男が私の元へ走ってこようとする姿。
そして、
吹っ飛んでいる私に向かって泣きながら必死の形相で手を伸ばす、
恐らくは私が助けることができたであろう、車椅子に乗った少女だった―…