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91.近しい死

「……着きましたぞ、ここが目的地の洞窟です。」


しばらく馬車を走らせた後、俺達は洞窟の前に立っていた。


「な、なんか洞窟の中から冷気が溢れでてないか?」


キンジが怯えた目で言った。

確かに凄まじい冷気と威圧感みたいな物を洞窟の中から感じる。

す、スノーワームってD級だよな?目茶苦茶怖いんだけど。

……なんか、嫌な予感がするな。


「……ギールさん、先頭の松明は誰が持ちますか?」


「私が持つ。」


俺は半ばユナから奪い取る様に松明を受け取り、穴を見据えた。

潜入の並びは前から、俺、ギール、キンジ、アンリ、ユナに決まった。

松明は先頭の俺と、まん中のキンジだ。


「行くぞ。」


俺は左手に松明を持ち、洞窟に入った。

進む度、冷気が強まる。

……何が居るんだろうか、スノーワームじゃないと思う。

明らかにDランクの放っていい冷気じゃない。


「……!しっ、何か居ますぞ。」


ギールに言われ、目の前の暗闇に目を凝らす。

……うっすらと、白い蛇を下敷きにして眠る白狼の姿が見えてきた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【『ドレット・フィンブル』ランクB-】

【主である上級の魔族をも喰らう、歴戦の『フィンブル』が至る姿。その冷気は全てを凍てつかせ、存在するだけで周囲は氷点下と成る。】

【魔物でありながら魔力炉心である魔石を擬似的に保有しているため、永遠に機動力が落ちない。】

【人間の武器を氷で再現し、打ち出してくる。】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ひでばっ……!?」


び、Bランク!?ビックリしすぎて変な声出た……気付かれなくて良かった。

……ヤバイよな、ぶっちゃけ俺こいつの進化前に昨日殺され掛けてるし。

逃げよう、それしかない。


「……騎士殿?なにが居たのですかな?」


「ドレットフィンブルだ。逃げるぞ」


「どれっ……!?嘘でしょう!?早く帰って騎士団を呼ばなければ……!」


ギールの顔が真っ青になっている。

俺達は、ゆっくりと後退の準備を始めた。


ズブ


「……あれ、騎士殿、暗くてよく見えませぬが、腹に何かついてますぞ。」


え?

俺は自分の腹に目を写した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【『アイスブレイド・カリバーン』B+】

【魔術により作成された『擬似聖剣』退魔の力を持つ。】

【その投擲は、数多の城壁を貫いてなお敵の大将首を貫いたという。】

【空気中の水分を凍結することで、使用者の思い通りに形状を変化させる。】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「グラァァァン!」


起きてたぁぁぁ!?

急いで、腹に刺さった剣を抜き取る。

魔力変質で傷を塞ごうとしたが、凍ってもいないのに上手く塞がってくれない。と言うか魔力変質が使えない。

も、もしかして説明文の『退魔の力』のせいか!?

どうしてだ!俺はこんなにもピュアなのに!そもそも俺勇者だからどっちかって言うと『聖』側だろ!?


「に、逃げろ!私が食い止める!」


ど、どうせ出口が狭い問題で脱出は俺が一番最後なんだからやってやるよ……!

でもとりあえず腹が痛い!うん!だって治んないもん!


「アンタなにしてるのよ!逃げるわよ!死んじゃうじゃない!?」


「……行きますぞ、アンリ。……騎士殿、私は貴方の本質を全く分かっていなかった。騎士殿は、根っからの英雄なんですな。」


「ケンイチ……。」


4人が逃げたのを確認し、バイルバンカーを……あああ!魔力変質使えないのか!

俺はハルバードを手に取り、久々の『刺突』を使いドレットフィンブルの皮膚に穿つ。洞窟内に金属音が鳴り響きハルバードの尖端が砕けた、当然向こうの表皮は無傷だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【『刺突』のレベルが2から4へと上がりました。】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


刺突のレベル上がってもハルバードの尖端無いから使えないんだってば!

今度は刃で殴ろうかと思っていると、ドレットフィンブルの背後に無数の半透明な武具が展開されているのに気が付いた。


「あっ無理……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【『アイスランス・アラトヴァル』B】

【『アイスステッキ・アイムール』B-】

【『アイスハンマー・シャルーア』B+】

【『アイスチェイン・グレイプニル』A-】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやぁぁぁ!?」


無数の武器が、俺へと向けて発射される。

なんだこれ、勝てるわけ無いだろ!?

俺はなんとか捕まるとヤバそうな鎖だけを全力で迎撃し、他は全弾食らってしまった。

鎖とぶつかりハルバードが根本からへし折れる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【『痛覚遮断』のレベルが4から6へと上がりました。】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


傷口から血が噴出し、意識が遠退く。

……ああ、いてぇ。

聞いてねえよこんな化物、きっとブラウならワンパンすんだろうけど。

俺は折れたハルバードを杖にしてなんとか立ち上がり、全身に刺さった武器を引き抜いた。

更に出血が増える。


びちゃ、


……昨日の今日でまた瀕死かよ。

更にドレットフィンブルが近付いてくる。

……ただじゃ死なねぇ、最後に龍腕でぶん殴ってやる。

俺は全力で右腕を振りかぶった。


「ガウッ!?」


見事頭部にヒットし、怯ませる事に成功。

……ああ、でももう動けないわ。

以外と、呆気ないもんだな。


「ーー私は戦闘は苦手ですが、切り札の切り時なら多少心得ていますぞ 。……そして、恩人に恩を返す程度の礼儀も。」


その時、洞窟内に何者かの声が響きドレットフィンブルの注意がそちらへ向いた。

ギール、か?何しに来たんだ……。

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新作はじめました。 現代日本で騎士の怪物になってしまった男の物語です。 貌無し騎士は日本を守りたい!
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