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92.帝国の至宝

ギールの手には、暗がりでも良く分かる程に光輝いた槍が握られていた。

大きさは二メートル半程で柄を含めれば三メートルは越えるだろう。

……なんだあれ。


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【『プロト・ロンゴミニアド』ランクA-】

【亜音速で槍を打ち出す、帝国の技術の粋】

【その速度ゆえ通常弾頭では空気摩擦で燃え尽きるため、魔力で槍を構成する。】

【動力炉の魔石の数は完成品とは違い、七つではなく二つ。】

-ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それは……!?」


「……前職のツテで手に入れましてな。七星武装が一つ、『帝国の聖槍』の、型落ちです。装填に一月掛かる上に威力は本家の比較になりませぬが、アレを仕留めるには十分でしょう。」


光槍の穂先がドレットフィンブルへ向けられた。

えっ……切り札ってそれだったの?ギール強くね?それ使えば俺なんて消し炭さえも残んないだろ。


「……帝国の至宝、お目にかけよう。……聖槍、発射!」


「グロォォォ!」


フィンブルもマズイと感じたのか、目の前に特大の盾を形成した。

空気が弾ける音と共に光の槍が発射される。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【『アイスシールダー・アイギス』B+】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


轟音が鳴り響き盾と槍がぶつかり合い、拮抗する。

なんだよこれ……もう俺着いていけないよ。


「ガァァァ!?」


槍が盾を溶解させ、フィンブルの胴体を貫く。

威力はそれに留まらず、洞窟の壁を貫き外から光が差し込む。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【『経験値1800を得ました。』】

【『斎藤健一のレベルが40から43へと上がりました。』】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ドレットフィンブルが死んだと同時に、俺の体が再生した。

おお、術者が死んだら魔力変質も復活するのか、と言うかギール強いな。あんなの持ってたら俺必要無いと思うんだけど。俺は後ろの方を向いた。

ギールは何故か、洞窟の壁に叩きつけられ、血塗れで座り込んでいた。

ギールゥゥゥ!?大丈夫か!?


「おいどうした!?大丈夫か!」


「お……や、騎士殿、動けたのですね。ははは……これはいらぬ手助けをしてしまったかもしれませぬなぁ……」


血の塊を吐きながら、ギールが自嘲気に笑った。

な、なんで、そんな瀕死になってるんだ……?


「どうして……」


「貧弱な身で廉価品とは言え聖槍を放った反動ですな……腕が千切れなかっただけ幸運でしょう……」


そう言った後、ギールは糸の切れた人形の様に項垂れた、……どうやら意識を失った様だ。

弱いが脈は有るし、命に別状は無さそう。

俺はギールを背中に背負い、ドレットフィンブルの下敷きになっていた目の無い白い蛇を肩に担いだ。


ーーーーーーーーーーーーーー

【『スノーワーム』ランクD】

ーーーーーーーーーーーーーー


……よし、こいつが討伐対象のやつだな。

本当はドレットフィンブルも持って帰りたいけど、流石に馬車に積めなそうだ。

俺は洞窟から出た。


「離しなさいよキンジ!ギール死んじゃうじゃない!?」


「俺達が行ってもケンイチの足手纏いになるだけだ!お前はあの狼の動きが見えたのか!?」


「……悔しいですけど、ここで祈るしかありません。精々回復剤の準備をしておきましょう。」


馬車の影で、3人が揉めていた。

いや、むしろどっちかって言うと俺がギールの足手纏いだったぞ。


「終わったぞ。」


「け、ケンイチ?腹の傷は平気なのか?」


「え……ギールは!?ギールは大丈夫なの!?」


アンリがヒステリックな叫び声を上げながら走ってきた。

おおう……必死だな、こいつ絶対ギールの事大好きだろ。


「意識を失っているだけだ。命に別状は無い。」


「本当に!?うう……よがっだぁぁぁ!ギールが死んじゃったら私は……!」


ヘナヘナと座り込み、アンリが泣いている。他の二人もとてもホッとした顔をしている。


「ケンイチさん、これ回復剤です。使ってください。」


「私は平気だ。ギールに使ってやれ。」


「いえ、腕の骨が折れてますので下手に投与しちゃうと変な形で癒着しちゃいます。回復魔法でも使えれば別ですが、あれはバリスヒルド王家の相伝ですからね……。」


そうなのか。

魔力変質だと粘土いじりの要領で治してるから、見た目はともかくちゃんと治るけどな。

便利なものだ。


「……あれ、ケンイチ、その脇に抱えてるのはなんだ?」


「スノーワームだ。さっきの狼に殺されて食われる前だったみたいだな。」


腹が減っていなかったのかほとんど欠損は無いし、フィンブルの冷気のお陰で腐敗もしていない、中々運が良かったんじゃないか?


「じ、じゃあ一応依頼達成ってことになるのか……。ラッキー、だな。」


俺達は馬車に乗り込み、村に帰る事になった。

ギールは意識を取り戻さないが、静かに寝息を立てている。


「よし……何はともあれ!冒険者チーム風牙の刃!初めての討伐依頼達成だ!うぉぉぉ!」


「私たちほとんど何もしてませんけどね。」


「それを言うなよ……。」


俺も、ちょっとした達成感みたいな物を感じていた。

……あれ、でもなんか大事な事を忘れてる気が……。


~その頃、ブラウ邸


「ケンイチさん……お水持ってきてくれるって、どこまで行ってるんですか……?……ううっ、頭が……がくっ。」



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新作はじめました。 現代日本で騎士の怪物になってしまった男の物語です。 貌無し騎士は日本を守りたい!
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