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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第一部
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#008「かごめ中学」【小梅】

#008「かごめ中学」【小梅】


 窓の向こうでは運動部が汗を流して青春してるが、こちらもこちらで別の形の青春を謳歌している。

「今週号のオジョタンは、もう読んだの、英里ちゃん」

 オジョタンとは、「お嬢さまは探偵ですの」という少女マンガ。現在、七話まで連載中で、近々単行本化されるとか、されないとか。

「もちろんよ。もはや私の身体は、毎週金曜日にショタ分を補給しないと維持できないんだから」

 白昼堂々、教室の片隅でショタコンを宣言してるのは、私のクラスメイトで、同じ美術部に所属する英里ちゃん。ショタ画像一枚で、白米が五合は平らげられるそうな。たとえが、よくわからないけど、とにかく小さい男の子が好き。

「今週は、特に助手くんが大活躍だったわね」

 オジョタンには、ヒロインのお嬢さまの他に、彼女の助手を務める少年が出てくる。英里ちゃんの目当ては、こっちのほう。ヒロインと推理とか、そっちのけでのめりこんでいる。

「そうなのよ。エキセントリックなお嬢さまの言動に振り回されながらも、真犯人を特定しようと奮闘する姿が、健気でいじらしいかったわ。小梅ちゃんも、そう思わない」

 そんな、鼻息が荒く詰め寄らなくたって良いのに。

「私も、そう思う」

「でしょう。さすがは、我が生涯の同士」

 窓の外から、一人の地黒で大柄な少年が枠に手をついて身を乗り出し、二人に声を掛けた。

「何だ。二人で盛り上がってるみたいだな」 

「あぁ、吉川くん」

 彼は同じクラスの吉川くん。陸上部員で、ハードル走と走り高跳びの選手で。

「吉川くんには、到底理解できない話よ」

「ひっどいなー」

 英里ちゃんに絶賛片想い中。でも英里ちゃんは、年下で色白で小柄な病弱の男の子が好きだから、五月生まれで百七十センチ近い長身を誇る健康優良児な吉川くんには、なかなかチャンスが無いかも。障害が多くて高いほど恋は燃え上がるとは言うけれど、ここまで望み薄では、ちょっとねぇ。

 遠くから「陸上部男子、集合」との掛け声が聞こえる。

「おっと、いけない。サボってるのがばれると厄介だ。それじゃあ、またな」

 吉川は声のしたほうへ走って行き、一度立ち止まって振り返り、二人が窓の外を見てないのを確認し、部員が集まる場所まで駆けていった。 

「それで、あのあと原稿は仕上がったの」

「えぇ。お姉ちゃんたちと従弟の男の子にアシスタントをしてもらったから、手早く片付いたわ。まだ小学生なんだけど、塗り絵のセンスがあってね」

「まだ小学生の従弟の男の子、だと」

 しまった。変なスイッチを入れないように隠してたのに、つい口が滑っちゃった。

 英里は、鼻息荒く小梅に詰め寄った。

「その話、詳しく聞かせなさい」

 さぁて。ショタコンのツボを刺激しないようにするには、どこから話したものかしらねぇ。

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