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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第一部
39/232

#038「再燃」【風華】

#038「再燃」【風華】


 竹美を連れて永井家に特攻を仕掛けたら、思わぬオプションが付いてきた。

 リビングのテーブルを、竹美、風華、長一、永井の四人が囲んでいる。風華の隣は長一で、向かいに座っているのは永井。

「ナガイ不動産は、十二月の頭から二週間、インターンシップがあるんだ。サマーに参加してなくてもウィンターだけ申し込めるけど、どうかな」

「うーん。不動産業界は、私に向いてそうに思えないんですけど」

 長一の提案に竹美が難色を示していると、風華と永井が背中を押す。

「十二月の前半なら文化祭も終わってるし、ちょうど良いじゃない。案外、やってみたら向いてるかもしれないわよ、竹美」

「そうだ、そうだ。インターンシップに参加してれば、面接のときに多少は優位になるからな。鶴岡だって、内定は一つでも多いほうが良いだろう」

 永井の発言を受けたあと、竹美は永井から視線を外し、表情を曇らせる。

 練習のときから思ってたけど、何かぎこちないのよね、竹美と永井先輩。前は永井先輩が竹美を避けてる感じだったけど、今は竹美のほうが遠ざかってるような。この前、初めてここに来たときから様子が変になった気がするんだけど、何かあったのかしら。竹美に聞いても教えてくれないし、永井先輩は心当たりが無いみたいだし。あー、もやもやするなぁ。ここは一つ、残る一人に聞いてみよう。

  *

「という訳で、傍にいると、どうもギクシャクしてる空気が伝わってくるんです」 

 秋風吹く中で、長一と風華は、共にベランダの欄干に凭れながら話をしている。

「ふーん、そっか。ちょっとタイミングが早かったかな。うーん。僕としては、二人が腹を割って話をする糸口になればと思ったんだけどなぁ」

 暮れなずむ空を見ながら、しみじみとした口調で言う長一。

 やっぱり、この前に何かあったのね。いったい、竹美に何をしてくれたのかしら。

 長一の発言を受け、風華は顔を長一のほうに向けて質問する。

「何か心当たりがあるんですね。知ってる範囲で良いので、教えてください」

「それは、出来かねるよ。会って二回目の君に話せる内容じゃないんだ。でも、時が経てば必ず良い方向に進むから、そっと竹美ちゃんを見守ってあげてくれるかな。次郎のほうは、僕が経過観察するからさ」

 知り合って間もない相手には伝えられないことって、何なのかしら。臨床試験でもしてるような口ぶりなのが気になるわ。悪いことが起きなきゃ良いけど。

「わかりました。竹美のことは、私に任せてください。その代わり、永井先輩のことは、しっかり頼みます」

「ごめんね。風華ちゃんのことを信用してない訳じゃないけど、こればっかりは当事者間だけに留めたいんだ。理解してくれるのは、助かるよ」

 そう言うと長一は、欄干から腕を外し、リビングのほうへ身体を向ける。

「そろそろ戻ろうか。もう心配いらないみたいだよ。ほら」

 長一はリビングの二人を指差し、風華は指差す先に注目する。その先には、永井と竹美が親密に歓談している様子が映っている。

「そのようですね。申し込みも出来たようですし、戻りましょうか」

 リビングに向かって歩く二人。

 わだかまりは解けたみたいね。私が蚊帳の外なのは気に入らないけど、二人の仲が温まったのなら、まっ、いいか。

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