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クライドとの再戦

更新遅くなりすいません。

「なんだおまえ? 俺の事知ってるのか?」


 そうだった、俺は懺悔の涙の中で何度も戦っているけど、あいつにとっては俺は初対面。

 もしかしたら、顔はみられているかもしれないけど、クライドにとっては手合せもしてないし、記憶に残っていないだろう。

 もし、あの襲撃の時に記憶に残っているとしたら、俺よりリーダーだったフライヤさんだと思う。

 これはチャンスか……?


「……まぁいい。どうせどっかで襲ったときの生き残りだろうよ。それよりサラ、おまえこんな事して、どうなるか分かってるのか?」


 俺が無言を貫いた為、クライドは俺の後ろでカナタを抱きしめているサラに興味を移す。

 クライドは口では非難しているようだけど、表情はニヤついている。

 その顔はどちらかというと、『おもしろい事をしてくれて嬉しいぜ』って感じだ。

 こいつ……。


「あぁ、分かってるさ! 私はもうおまえらに手を貸すのは嫌なんだ! 私はカナタとここを出る!!」


 サラはクライドに向かって叫ぶ。

 でも、その言葉と裏腹に、身体は震えている。

 負けた時の事でも思い出したのだろうか?


 その様子を見たノアが、サラとカナタの前に出てきた。


「PKするのを嫌がっている人に協力させるなんて酷いです!! サラさんとカナタ君は私たちと一緒に帰ります!!」

「なんだぁ? この女?」


 クライドはノアの事を見据える。


「そうだぜ、女性が嫌がることをさせるなんて男のする事じゃねぇぞ!」


 ノアに続いて、ラウルもサラとカナタの前に出てくる。

 二人とも……。


 サラはその様子に少し驚いたような表情を浮かばせている。

 おそらく、PKに協力していた自分達の為になんでここまでしてくれるんだと思っているんだろう。

 でも、本当にノアもラウルもいい奴だ。


「……その男がサラに勝ったやつか?」


 クライドはそう言ってバトルアックスを構えているラウルを見据える。

 なんだ? サラが負けたと知ってたのか?

 ……いや、違うな。

 誰かに聞いたとかなら、サラの相手の特徴とかでだいたいの見分けはつくはずだ。

 俺とラウルは見た目も使う武器も違う。

 きっとこいつはさっきのサラの言動で怪しいと踏んでたに違いない。

 それでサラを泳がせたって訳か……。


「……違う。サラに勝ったのは俺だ」


 俺は一歩前に出てクライドに告げる。

 クライドの勘違いでラウルに被害があったら俺はいたたまれない。

 俺が名乗り出た方がいいだろう。


「へぇ~、人は見た目によらないって言うけど、まさかサラに勝ったのがそんな優男とはねぇ~。サラ、おまえ腕が鈍ったんじゃねぇのか?」


 クライドは笑いながらそう言ってサラの方を向く。

 サラは歯を食いしばり、悔しそうに堪えている。


「いや、おまえこそ腕が悪いんじゃないのか? 不意打ちしたのに俺を仕留められないなんて。よくそれで、偉そうに言うもんだ」


 俺はクライドを挑発するように言葉を放つ。

 今はクライドの意識を他のメンバーじゃなくて、俺に向ける方がいい。

 俺は懺悔の涙で何度もクライドと手を合わせたけど、こいつは口だけじゃない。

 実力がある。

 

 そして、今はサラの武器、ティルフィングのスキルを使ってサラが能力を底上げしても、クライドに勝つことが出来ないって事はこいつはあの時よりも強くなっているはず。

 おそらく、ラウルでは荷が重いだろう。

 それにノアも魔法使いだから、クライドみたいな一流の戦士相手と一対一で、この距離での戦闘は危険だ。


「……あぁん?」

 

 サラの方を向いて笑っていたクライドが、表情を凍りつかせ俺の方へ向き直る。

 ここはクライドの事を一番よく知っている俺が戦う方がいい。

 俺もあの時よりは強くなっているはずだし、神剣エアリアルも手に入れた。

 ……それでも、クライドだって強くなっているはずだし、スキルを使ったサラにも勝てるほどだ。

 今の俺で通用するかどうかは分からない。

 懺悔の涙で獲得した対人戦闘用のスキルもあるけど、過信はだめだ。

 ここは俺が対応している間にみんなを逃がすしかない。

 そして、いけそうであればクライドを始末する。


「おまえこそ実はサラより弱いんじゃないのか? 不意打ちでも俺に勝てないんだろ?」


「はぁ? ……いいぜ、やってやるよ」


 クライドは俺の言葉に挑発され、標的を俺に決めたようだ。

 よし、これで俺がクライドを止めているうちに……。


「ノア、俺がクライドを引きつけている間にみんなを連れてフライヤさんのところへ行け

 

 俺はクライドに聞こえないように小声で、一番近くにいるノアに指示を出す。


「えっ!? で、でも――」

「大丈夫だ。俺は奴と懺悔の涙で何回も戦っている」


 俺はノアを安心させるように言葉をつなぐ。

 そう言えば俺、いつもノアに心配かけてばっかりだな。

 でも、今回は相手がクライドだ。倒せるか分からないし、そうこうしている間にリーダーとかいう黒いローブの男も戻ってくるかもしれない。

 あのクライドがいう事を聞くくらいだ、リーダーという奴はただものじゃないだろう。それに得体も知れないし、どう強いのか分からない。

 そうなれば、数で勝っていても俺たちが不利になる可能性もある。


「……分かりました。隙を見てみんなで離脱します。……でも、私は必ずハヤト君の手助けに戻ってきますから」

 

 ノア……。

 そう言うノアの目には力強い決意が見て取れた。

 これは何を言ってもダメだろうな。

 なんとかそれまでにクライドを倒せるように頑張らないと。


「……分かった、頼む」


 俺がそう言うとノアは頷いた。

 それを見た俺はエアリアルを持つ手に力を入れ、深く息を吸う。

 ……よし!


「うぉぉぉぉおおおおおお!!!!」


 俺は深く息を吸うと一気にクライドに肉薄する。

 クライドは俺が動くのを待っていたようで、俺が動くとすぐにニヤリとして自らが持つ剣を構えるのが見えた。

 そして、次の瞬間に金属音が鳴り響く。


「くくく、いいぜいいぜ!! 見かけによらずなかなか骨がありそうだ!!」

「その強気の台詞、いつまで口にできるかな!!」


 俺はクライドに対して、エアリアルを一撃、二撃、三撃とクライドに息をつかせないように連続で剣を振るう。

 クライドは俺の攻撃速度が予想外だったのか、少し顔を顰めながらも俺の攻撃とすべて剣で弾く。


「思ったよりやるな……でもまだまだ甘いぜ!」

「それはこっちの台詞だ!!」


 俺とクライドは言葉とは裏腹に、まだまだ全力ではないような感じで剣を交えながらお互いの力量を測っている。

 そして、お互い少しずつギアを上げていく。


 クライドもまだまだ余裕があるのだろう、最初こそ顔を顰めたけど、今はそんな表情は浮かばせていない。むしろ、冷静に俺の動きを見ているようだ。


 このままではノア達が逃げる隙を作れない……。

 そう思った俺は、今の余裕のあるうちに隙を作ろうとチラっとノアに視線で合図を送る。

 俺の視線を受けたノアは一瞬びっくりしたような感じだったけど、俺の意図が分かったのかすぐに真剣な表情になり頷いた。

 よし、いまだ!


 「うぉぉぉぉぉおおおおおお!!」


 俺はノアが頷いたのを確認すると、一気にギアを上げる。

 

 「くっ……」


 俺が無数の斬撃を繰り出すのを、クライドは険しい顔をしながらも、すべて受ける。

 やっぱりこいつはただものじゃない……。


それでも俺は剣を止めない。

 俺の振るう剣線をエアリアルが、黄緑色の軌跡を無数に残していく。


「いいぜ……いいぜ! もっと俺を楽しませろ!!」


 どうやらクライドは、俺との戦いに集中し始めたようだ。

 そして、その様子を見たノアがみんなに指示を出し、離脱を始めた。


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