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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第17章
70/117

身体 -1-



   つぎはぎのカラダ

          ――呪いの象徴



         ++++++



「……」

「……」

「……ど、どこからつっこんでいいかわかんねぇ……!」

 セイジはひとまず、ビデオカメラの電源を切った。それから黙りこくっている2人の様子をうかがう。

「今のは、『5つの間』ができる前のサーカス団……だよな?」

「はい……10年前の光景です。間違いありません」

 先に復帰したのはサトルで、カナはまだ呆然としている。セイジはカナの肩を揺すった。

「カナ、そろそろ戻ってこい。……お前やっぱり札のこと知ってたんじゃないか。どーりで札の話が出ると変な顔するはずだよな」

「あ……だ、だって、実物見たわけじゃなかったし……」

「とにかく札がどういうものかってことはわかったな。にしても……このビデオ撮ったのって誰だ? “A”か?」

 もう1度観ようという気にはなれず、ビデオカメラを床に置く。

「なんかすっげー、複雑な気分だ……」

「あの猫覚えてる……なんか変だなとは思ったんだ。鳴かないし、体硬いし」

「『猛獣の間』で見た黒猫に、ちょっと似てなかったか。あれもロボット……?」

「そういった考察はまた後にしましょう」

 サトルが遮って、カナを見た。

「何か他に思い出せることはありませんか。ユエがあの札を今も持っているのか、それともどこかに隠したのか。それによって私達のとるべき行動は変わります」

「そんなの……わからないよ。あの後くらいから、ユエとはあんまり会わなくなったんだ……」

 カナは床に視線を落とした。

 つかの間あって。不意に、セイジは勢いよく立ち上がった。

「思い出した――『玩具の間』に入る前、俺ホームページに書き込みしてたんだ。札のこと知ってる奴いるかって」

 言いながらもう歩き出しているセイジに、サトルが声をかける。

「どこに行くのですか」

「悩んでる間に動こうぜ。とりあえず、もう1度リアラのとこに行ってパソコン見せてもらおう。ビデオはもう少し借りててもいいかな。……あ、そういやヨシタカにたのまれてた人形のこともあった」

「ちょっと……セイジ」

「ほら行くぞ。時間もったいねーよ」

 まずサトルが、続いて釈然としない顔のカナが、セイジの後を追った。

 『左腕』通路に出る。と。

 そこには故障したはずのララがいて、セイジ達を待ちかまえていた。

「ララ? お前もう治ったのか?」

「リアラが呼んでる。セイジのこと呼んでるよ♪」

 すっかり元気になったようで、ララはセイジ達のまわりをぐるぐると2周した。それからぴたりと立ち止まり、サトルの正面で首を仰向ける。

「……リアラ、いじめるな!」

「!」

「あーあ。嫌われたな、サトル。リアラに無理言ったりするから」

 セイジが言うと、サトルは思案するように口元を隠した。

「おかしいですね、ララにこんなプログラムは入れてないはずなんですが……」

「それだけリアラのことが好きなんだろ」

「ですが……」

 ララがつんと横を向いた。と思うや、セイジにとりついて手を引っぱった。

「早く。セイジ。リアラ、今だけ仕掛け止めてる」

「え?」

 導かれるまま『ひとさし指』の扉を開くと、そこはただ淡い黄色の壁に囲まれた空間だった。正面には、それこそおもちゃのようなかわいらしい小屋が建っている。

 サトルがいぶかしげに目を細めた。

「リアラが自分からこの仕掛けを解いたのは初めてです。何か急ぎの件でしょうか……」

 それを聞いたセイジは、足を速めた。

「――リアラ、どうした!?」

「あ……セイジさん」

 奥の部屋で、リアラはパソコンの前に座っていた。変わった様子はないが、少し困った顔をしていた。

「何かあったのか」

「ごめんなさい、呼びつけちゃって。……どうしてか分からないんだけど、私のパソコンにセイジさん宛のメールが届いたの……」

 サトルとカナも追いついてきた。リアラがもう1度同じ説明をし、セイジとサトルが揃ってパソコン画面をのぞいた。



=======================================

 From:くま

 To:セイジ

 

  約束の人物がもう来てる

 君も早くおいでよ

  ウヒヒッ☆

=======================================



「……………」

「私のメールアドレス、どうして知ってるのかな。なんだかちょっと怖くて……」

「いや、うん。俺、こいつ知ってると思う……」

 不安そうなリアラに、セイジは引きつった笑みを向けた。

「心配すんな。あんたに害はないはずだ」

「……変態人形遣い?」

 後ろでカナが激しく嫌そうな声をもらした。セイジ達の妙な空気に、リアラは一層戸惑った風だった。

「あ、あの……?」

「ほんと気にしないでくれ……変なヤツだけど、悪いヤツじゃない、はず――」

 言いかけたところで、セイジは気づいた。

「って、え? ……『くま』!?」



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