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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第14章
59/117

人形 -1-




            にんぎょうがいれば ぼくはいらない



         ++++++



 時は少しばかり遡る。

 セイジとカナが、ヨシタカの部屋を訪ねていった頃――


 アオイはモニター室を出てからずっと、館内をさまよい歩いていた。セイジ達から1度完全に目を離してしまったため、彼らが今までに巡った道筋をたどり直して捜している。

 その間に何人もの団員とすれ違った。大抵の者はあさっての方を見て足早に去った。たまに目が合った者がいれば、悲鳴を上げて逃げていく。アオイはそれらを淡々と眺め続けた。

 順番では、次は『獣調練場』だ。立ち入ったことなど数えるほどしかないが、危険な場所ということはよく知っている。大鎌を持ち直し、ゆっくりと、扉を開く。

 同時に、獣達がざわりと殺気を放った。

「ん? ……ああ、アオイか」

 一番手前の檻の中で、ライオンと一緒にコウがこちらを見ていた。

「何をしている」

「いや、猛獣士志望だって奴がいたんでエサやり頼んでおいたんですケド、目を離した隙にいなくなっちゃいまして。逃げたんだか骨も残さず食べられたんだか……さて、どっちでしょうネ」

 コウはどうでも良さそうに笑ってから、落ち着かせるように、唸り声を上げるライオンの首を抱いた。

「で、そっちこそ何か用デスカ?早いとこドウゾ……お前に染みついてる死臭のせいで、こいつら大興奮デスヨ」

「……人形を捜している」

「人形?」

「リストNo,44『セイジ』が抱いていた、アンティークという人形だ」

 コウはぴんとこない様子だった。セイジにもアンティークにもすでに会っているはずだが、この分ではもう忘れているのだろう。

「ここにもいないようだな」

「僕に聞かれても困りマスヨ。それくらい分かるデショ? それにしても……自分でものを考えられない『人形』に探し物をさせるとは。ユエさんも相変わらず、意地が悪――おわっ!?」

 鎌を檻の中に突き入れた。手加減はしなかったつもりだが、コウは大げさな悲鳴にそぐわぬ的確さで刃の頭を押さえた。

「ユエを侮辱することは許さない」

「あーびっくりした……お前も相変わらずみたいデスネ」

「『アオイ』のことはまだ覚えているのだな」

 アオイは鎌を引き抜いた。

「……コウ。お前は今、どれだけ『とられた』?」

 問えば、コウはふいと横を向いた。

「そんなことはユエさんに聞いてクダサイ」

「お前が軽視している事からとっているはず。しょっちゅう自分の名前を忘れるお前は、よっぽど自分がどうでもいいのか……」

「好きじゃないんデスヨ、ユエさんにつけられたこの名前」

「……」

「とにかく、探し物なら他を当たってクダサイ。……ああそうそう、『右腕』の奥の部屋に、あやしげな人形遣いがいるらしいデスヨ。人形のことには詳しいんじゃないデスカ? 少なくとも僕よりはね」

「そうか」

 アオイはコウに背を向けた。

 ――が、もう1つだけ、確認しておく気になった。

「あの“約束”は……まだ覚えているのか」

 返事がなかった。首だけ回して見やると、コウはなんともいえず渋い顔をしていた。

「本当にどいつもこいつも……『覚えてるか』とか『忘れるな』とか……!」

「答えろ」

「ハイハイ。忘れてませんヨ。……まだね」

 コウが投げやりに言い捨てた。アオイは、うなずいた。

「お前を殺せるのは『アオイ』だけ」

「お前を殺せるのも僕だけデスヨ。……そんじゃ、さっさと出てってクダサイ。こいつらをこれ以上興奮させると後が面倒なんで」

 アオイは今度こそ、調練場を後にした。



         ++++++



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