玩具の少女 -5-
『ねえ……サトル。もう1つだけ、聞いてもいいかな』
「はい」
『あたしの身体、今もあなたが隠しているの?』
アンティークに責めるつもりはなかった。しかしサトルは、恥じるようにうつむいた。
「はい。今も遺体は、この館の奥に……」
『……そっか。きっとそれで……この館ではあたしの声がみんなに聞こえるんだね』
「すみません……結局のところ、私も狂っているのかもしれませんね。昔も、今も……」
アンティークは人形の身体をもどかしく思った。
表情があったなら、サトルに微笑んで見せたかった。
『そんなことない――とは言えないかな。でもあなたは、もう充分苦しんだんでしょう?』
「アン……」
『あたしは長い時間、とても幸せだったよ。だから……』
ふと胸がつかえて、アンティークは言葉を切った。
想いに応えられなかった自分に、こんなことが言えるのかどうか――
『……だから。あたしはサトルにも、幸せになってほしいよ』
思い切って言えたのは、セイジに倣ってのことだった。引いては、彼の祖父に。
サトルは片手で目を覆った。
「アン、あなたは昔から……優しすぎますよ……」
サトルは涙をこぼすができるのだろうかと、アンティークはふと思った。
悲しみの道化師である『ピエロ』の彼は、いつも涙のメイクをしている。それでも、彼自身はいつも笑っていて、一生懸命人を笑わせて。
笑顔しか――思い出せない。
『サトル。あのね――』
何を言おうとしたのか分からない。
とにかくサトルに笑ってほしいと思ったことは確かだった。しかし、言葉を繋ぐ前に。
「――!!」
サトルが急に立ち上がった。
その視線の先で、ぴしりと、出入り口の時計に亀裂が走った。




