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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第13章
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玩具の少女 -5-


『ねえ……サトル。もう1つだけ、聞いてもいいかな』

「はい」

『あたしの身体、今もあなたが隠しているの?』

 アンティークに責めるつもりはなかった。しかしサトルは、恥じるようにうつむいた。

「はい。今も遺体は、この館の奥に……」

『……そっか。きっとそれで……この館ではあたしの声がみんなに聞こえるんだね』

「すみません……結局のところ、私も狂っているのかもしれませんね。昔も、今も……」

 アンティークは人形の身体をもどかしく思った。

 表情があったなら、サトルに微笑んで見せたかった。

『そんなことない――とは言えないかな。でもあなたは、もう充分苦しんだんでしょう?』

「アン……」

『あたしは長い時間、とても幸せだったよ。だから……』

 ふと胸がつかえて、アンティークは言葉を切った。

 想いに応えられなかった自分に、こんなことが言えるのかどうか――

『……だから。あたしはサトルにも、幸せになってほしいよ』

 思い切って言えたのは、セイジに倣ってのことだった。引いては、彼の祖父に。

 サトルは片手で目を覆った。

「アン、あなたは昔から……優しすぎますよ……」

 サトルは涙をこぼすができるのだろうかと、アンティークはふと思った。

 悲しみの道化師である『ピエロ』の彼は、いつも涙のメイクをしている。それでも、彼自身はいつも笑っていて、一生懸命人を笑わせて。

 笑顔しか――思い出せない。

『サトル。あのね――』

 何を言おうとしたのか分からない。

 とにかくサトルに笑ってほしいと思ったことは確かだった。しかし、言葉を繋ぐ前に。

「――!!」

 サトルが急に立ち上がった。

 その視線の先で、ぴしりと、出入り口の時計に亀裂が走った。



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