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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第26章
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レクイエム -2-


 ユエの様子を確認した後、しばしの沈黙を経て、セイレーンがため息をついた。

「話し合うというのは、あれでは確かに無理ね……」

「試しにつついてみたいって気もしますけどネ」

「危険だ。今は比較的落ち着いているが、どんなきっかけでどう変わるか分からない。最悪……その場で戦いになってしまうのではないか?」

 コウを諌めたビッグもまた、難しい表情をしていた。

「ありえるわ。あの状態のうちは刺激しない方がいいのかもしれない。――長期戦になりそうね」

「ここで様子見ながら待つんデスカ」

「あの……それなら、1度ここから出てしまってもいいんじゃないかな? セイジさん達にもこのこと、教えてあげた方が……」

 リアラがおずおずと提案した。セイレーンが、首を振った。

「それも選択肢のうちだけれど、その後で、もう1度ここに入れる保証がないわ。様子が分からないまま、万一ユエが急な破壊行動をとったら? そうなったら歯が立たないどころじゃない……サーカス団そのものにも一般の団員にも、被害が出かねないわ」

 セイレーンは息を継いで、恐縮気味のリアラに苦笑を向けた。

「可能性がゼロではない限り、あらゆる想定をしておかないといけないのよ。分かってくれるわね?」

「は、はい……」

「あ。じゃあこういうのはどうデショウ」

 コウが手を挙げ、にっこりと笑んだ。

「僕がここに残りますカラ、みなさんは先に戻ってクダサイ。そんで状況が変わったらお知らせすればいいんデショ? これで万事解決デス」

「……あなたが? 1人で?」

 一斉に怪訝な視線が集まった。その中でアオイが口を開く。

「残ってどうするつもりだ」

「どうって……のんびり見張り役に徹しマスヨ。動物の世話は人に頼んできましたし」

「……」

「なんデスカ? なんならその間、ユエさんを慰めときマスカ?」

「コウ。……僕は承諾できない」

 アオイは歩み出て、コウの正面に立った。

「僕達がいなくなったら、お前は――1人でユエを殺しにいくつもりだな?」

 ざわりと、空気が波立った。

 紅い眼が猫のように細められる。軽い口調は変わらないまま、声がわずかに低くなる。

「いやだなあ。誰がそんなこと言いマシタ?」

「お前がユエとの繋がりを早く断ち切りたいことは、分かる。だが無謀だ」

「……そう言うお前は、ユエさんともう1度契約を結び直したいとか思ってないでしょうネ」

「それは……」

「やめるんだ。ここで非難し合っていても仕方がない」

 ビッグが間に割って入った。そしてその目が、コウに向けられる。

「ユエは強大な力と不死の身体を持っている。お前ももちろん知っているのだろう。残すのならば、最低2人だ」

「……。やっぱ裏切り者は信用できないってことデスカ?」

 つまらなそうにコウが言うと、ビッグは苦笑した。

「そうではない。お前を心配しているんだ。同じ『5つの間』の仲間なのだからな」

「……コウさん……」

 リアラにまで気遣うような顔をされて、コウがうっと詰まる。

 セイレーンはそれを眺めながら、思案するように、唇に指を当てた。

「でも、結局それしかないのかしら。誰が残るかという問題はあるけれど……」

 その時だった。

「あ……っ!」

 リアラが悲鳴のような声を上げ、自分の身体を抱いた。

「どうした、リアラ?」

「……いや……何か、嫌な予感がする……!」

 リアラは血の気を失っていた。ビッグが手をかけると、細い肩は震えていた。

「まさか……サトちゃん……!」



         ++++++



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