レクイエム -1-
今は、あなただけのために。
++++++
獣調練場から出たアカネは、ちょうど『左腕』から出てきたヨシタカとエリに行き会った。ヨシタカはぱちぱちと瞬いた。
「おや~? どうしてあんたがそこから出てくるんだい?」
「久々に獣達の相手をしないといけなくなったの。今、顔合わせを済ませたところ」
「伝説の女猛獣士の復活か☆ じゃああんたはそっちにかかってくれればいいや。いざという時に猛獣をどうするかってのも懸案事項だったからねッ☆」
アカネは、不敵に微笑した。
「ありがとう。あなたも動くの?」
「セイジくん達が『運命の間』に向かったからねぇ。いつ何が起きてもおかしくないんで、せいぜい人払いをしておかないと。ま、ビビリはもう逃げ始めてるけどね☆ ただのピエロゲーム対象者だと思ってたセイジくんが『新団長かも』なあんて噂が流れちゃね~☆」
「……せっかちなピエロさんだこと」
アカネは独り言のようにつぶやいた。続いて膝を折り、エリの顔をのぞき込む。
「こちらのお嬢さんは……」
「聞いたことあるかな? 『巨人の間』に居座って粘ってたお嬢さんさ☆ その根性を見込んで、ちょっと手伝ってもらおうかと思ってね~」
「そう。……あなたお名前は?」
「エリ」
「エリちゃん。この人時々変なことを言うから、そういう時は深く考えてはダメよ?」
「? うん」
「じゃあ行こうか、エリちゃん☆ 歩きながらおしゃべりをしよう。セイジくんが次の団長に決まった話――大きな声でね」
何か重要なことを任されていると悟ったらしく、エリは真剣な顔でうなずいた。にっと笑い返したヨシタカに、アカネは一応言っておくことにした。
「アキノリさんの様子も見ておいて。あの人もしかして、ここで終わるつもりかも」
「ご心配なく☆ この話で逃げ出さない奴には、ひととおり声をかけとくよ」
「……最後に1つ、聞いていいかしら」
「なんだい?」
「あなた、人形にしか興味がないって言ってなかった?」
――一瞬、間があって。ヨシタカは肩をすくめた。
「単純に、次の就職先を確保しておきたいだけサ☆」
「そう……それなら、ここでお別れかもしれないわね」
「あんたは来ないんだ?」
「私はあの子さえ解放されれば、それでいいの」
「ふーん。それじゃああとは奇縁を待つばかりだね。ま、次に会うまでお元気で☆」
ヨシタカはエリと手を繋ぎ、控え室の方へ歩いていった。
スカートをつまんで「着替えが必要ね」とつぶやいたアカネは、これからステージに臨むかのような昂揚を感じていた。
++++++




