第34話 譲れない一戦
「どうやら、出したい競技はもう決まったみたいね」
俺たちが競技を書き終えた頃、まるでタイミングを見計らっていたかのように、ミリアン先生が部室へ入ってきた。
「どれどれ……魔導具修理競争、魔導機械レース、障害救助競技……うん! ちゃんとうちの部らしさが出てるじゃない」
ミリアン先生は俺たちが書いた競技一覧に目を通し、満足そうに笑みを浮かべる。
「それじゃあ、五試合目に誰がもう一度出るかは決まったの?」
その言葉を聞いた瞬間。
俺たちは一斉に黙り込んだ。
今のところ決めたのは競技だけで、四人しかいない俺たちの中から誰が二度出場するのかまでは、まだ話し合っていなかった。
「もし俺たちが出した競技が選ばれたなら、俺が出てもいいぞ」
ハヴィックが自分から五試合目への出場を申し出る。
「その……!」
沙耶香が突然、手を挙げた。
「どうした、沙耶香?」
「で、できれば……魔法騎士団部と当たって、もし決闘が選ばれたら……私に出させてほしいの!」
魔法騎士団部との決闘……。
まさか……!
なるほど。
なんとなく分かった。
「俺はいいと思うぞ」
俺は真っ先に賛成した。
沙耶香がやりたいことは、たぶん単純だ。
俺たちは以前、花穂の実力も性格も見ている。
もし一対一の決闘が選ばれたなら、あの性格だ。花穂なら自分から出場する可能性は高い。
そして沙耶香は、自分の姉と決着をつけたいのだろう。
二人の間に何があったのかまでは、俺にも分からない。
ただ、姉妹の間には何かまだ言葉にできていないものがあるように見える。
もし沙耶香が、言葉の代わりに戦いで自分の気持ちを伝えたいというのなら。
俺は両手を挙げて賛成だ。
決して、自分が目立ちたくないから決闘を他の人に押しつけようとしているわけじゃない。
……決して!
「でも、私たちってまだ沙耶香ちゃんの本当の実力を見たことないよね?」
意外にも、そこで疑問を口にしたのはカミラだった。
「わ、私も……まだみんなを納得させられるほどの実力を見せられてないのは分かってる」
沙耶香は両手をぎゅっと握る。
「でも、どうしても魔法騎士団部との決闘には出たいの」
その目には、はっきりとした決意が宿っていた。
「だから……もし本当にその機会が来たら、いつも以上の結果を見せてみせる!」
「言いたいことは分かる」
今度はハヴィックが口を開いた。
「でも、理由くらいは聞いてもいいか?」
俺も、カミラとハヴィックが心配する理由は分かる。
一対一の決闘は、他の競技ほど失敗が許されるものじゃない。
真正面から相手と勝敗を決める競技だ。
相手が力加減を誤れば、以前のドナグとバルシュの決闘のようなことにもなりかねない。
あの時は、バルシュが重傷を負い、そのまま学院の医療施設へ運ばれた。
次にそこへ運ばれるのが沙耶香なんて、誰だって見たくはないだろう。
「部活動対抗戦の決闘にどれくらい制限があるのかは知らない。でも、出たいって言うなら、せめてちゃんとした理由くらいは聞かせてくれ」
ハヴィックは沙耶香を見た。
「じゃなきゃ、もし決闘が二試合以上になった時は、俺としてはヴィナ・シュンに出てもらいたい」
……え?
まさか。
カミラを助けた時、俺が一瞬でハヴィックの魔導装甲を停止させたことに気づいていたのか?
それとも単純に、俺が男だからか?
ハヴィックが何を考えているのか、さっぱり分からない。
「それは……お姉ちゃんが……」
「姉?」
ハヴィックが首を傾げる。
「前にあんたを地面に叩き伏せた雷女。あれが沙耶香ちゃんのお姉ちゃんよ」
カミラが横から付け加えた。
「あの雷女か……」
ハヴィックの表情が途端に険しくなる。
「俺も、いつかあいつには借りを返したいんだけどな……」
どうやら以前のドナグと花穂との戦いを、まだかなり根に持っているらしい。
「復讐ならまた今度にしろよ……これが最後の機会ってわけでもないんだから」
俺も思わず突っ込んだ。
「……分かったよ」
ハヴィックはまだ少し納得していない様子だった。
「姉妹同士のことなら、俺も反対はしない。ただし、無茶だけはするなよ」
「はい!」
沙耶香が力強く頷く。
ハヴィックはまだどこか不満そうではある。
それでも……。
こいつも少しずつ、この部の一員になってきているみたいだ。
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