エピローグ『世は全てこともなし』(終)
エピローグ『世は全てこともなし』
ここは中央病院。オレっちらは三階へ行くため、階段をあがっている。
「じゃあなにか。オレっちが強くなったのは」
「ええ。僕の中にいた『ガムラの一部』が、あなたにとりついたせいです」
「ちぇっ。なんてこったぁ」
聞けば、死神の鎌にとりつかれる寸前に、ネイルは自分の命を支えているガムラを放出させてしまったらしい。ガムラの意志に邪悪な念を近づけさせないための、やむをえない処置なのだそうだ。しかし、それと引きかえに、ネイル自身の命は危ぶまれていた。皮肉なことに、死神の鎌がガムラの代わりに命を支えてくれたので生きのびることができたのだという。つくづく運がいい男といわざるをえない。
「でもよぉ。なんでオレっちなんかにとりついたんだ?」
「僕を助けてくれる一番心強い人間に思えたのだそうです。それに身近な存在であることも大きな理由だとか。近くにいれば、命を支えるための霊波を僕に送りこみやすいし、死神の鎌から解放されれば、すぐに僕の身体へもどれる。まさに依り代としてうってつけの人間、とべたほめでしたよ」
「依り代としてほめられてもなぁ……。あっ、ところでよ。お前がガムラの助けを必要としているのは前にも聞いたが、でも、なんでガムラがそこまでお前にかた(肩)入れするんだ?」
「けいやく(契約)を交わしましたからね。彼はそれを守ってくれているんですよ。結構、律義でしょ?」
「けいやく、って、どんな?」
「ないしょです。まぁ、ソラが関係する内容じゃありませんので、その点は安心してくださっていいですよ」
答えをはぐらかされた。『でもまぁ、気にしないですむというなら』と、これ以上、追求するのはやめた。
「で? 今は?」
「ちゃんともどっていますよ。ここにね」
そういってネイルはむねのあたりを、ぽん、とたたいた。
「そうか。よかったなぁ」
いつものやつにもどったわけだ。それはそれでうれしい……のだが。
「お前の話どおりだとすれば、オレっち自身が強くなったわけじゃなかったんだな」
ちょっとがっかり、みたいな顔をしていたかもしれない。ネイルは、ふふっ、と笑う。
「ですがね。ガムラが力を貸してくれたとか、そういうことではないみたいですよ。元々、ぼくにとりついていたガムラの一部って、きわめてかぎられた力しか持っていませんから」
「へぇ。じゃあ、どうやってあんな力を?」
「ソラ。あなたのせん(潜)在能力、つまり、ねむっている力をしげき(刺激)した結果、だそうです」
「ってことは」
「そう。今後のあなた次第。努力とか精進とかいうものをつづけた果てにえられる……かもしれない力ってわけです。
どうです? ソラもこの際、先生の元で僕といっしょに修業をする気はありませんか?」
「修業をオレっちが? ふふっ」
「どうですか?」
たたみかけてくるネイル。もちろん、返す言葉はひとつだけ。
「いやなこった」
「やっぱりね。そういうと思いましたよ」
ネイルの顔に笑みがうかぶ。
(ちえっ。食えねぇ野郎だ)
「判っているなら、いちいち聞くんじゃねぇや」
オレっちが着ている作務衣は、下衣のこし(腰)あたりに左右ひとつずつ内袋がついている。ここに両手ををつっこみ、急ぎ足で階段をあがっていく。
「そんなに急がなくてもおひめ(姫)さまはにげやしませんよ」
「だれがおひめさまだ」
呼びとめるネイルを無視して、三階まであがりつづけた。
「ソラ。ここですよ」
オレっちらは、とある病室の前に立つ。
「カスミはこの中か……」
「ええ」
カスミの遺体が中央病院へ運ばれた数日後、オレっちはセレンの姉ごに呼びだされた。実はこの間、一度も見せてもらうことができないでいた。ネイルのいうとおり、助かるのか、それともだめなのか、やきもきしながら時を過ごしていたのだ。
病院へつくやいなや、オレっちは地下階へと案内された。最初は地下一階のことをいっているのだろうと思ったが、とんでもない。自動しょうこうき(昇降機)なるものに乗って、地下深いところまでおりていった。とまった階にある一室でオレっちはひさびさにカスミの遺体と会った。すでにばらばらではなく、ひとりの人間の姿となっていた。聞けば、呪と薬を使って、こまぎれになった『さいぼう(細胞)』の持つ記憶の活性化とともに、ぞうしょく(増殖)をうながしたのだという。『さいぼう』は記憶をたよりに『れいし(霊糸)』とよばれる管を発生させて、つながっていた『さいぼう』と結びあう。また欠けた『さいぼう』は、『ぞうしょく』によって補われた。つまり、だ。『さいぼう』自らに、本来あるべき姿へともどさせた、というわけ。つなぎ目部分は整形の呪を用いれば、きれいになってしまうとの話だった。
「じゃあ、入るか」
「おっと。その前に」
ドアの開けようと手をのばしかかったオレっちの前にネイルが立ちふさがる。
「なんだよ」
「実は……カスミさんはベッドの上でねています」
「そりゃあ、一応、病人だからな」
「かけぶとんをかけずに目をつむっています」
(はて?)
「どうして?」
ここでネイルが、ぷふっ、と笑う。
「ねむれるお姫さまは愛しの王子さまの口づけで目ざめるそうです。
『そして二人は末長く幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし』
とまぁ、これがカスミさんの描いた台本でして」
「なんだとぉ。ってことは」
「お判りのようですね。あなたですよ、王子さま」
「ほぉ。で? 中にいるのはカスミだけか?」
「いえ、『かいきとくそうぐみ(怪奇特捜組)』、全員です」
(全員ってことは、ハイネにレイコにマリエに……)
「おい、エリカはもう退院したのか?」
「いや、まだですよ。でもね。マリエさんに聞いて、ぜひ、自分も見たいって、無理をおして」
「無理をおして来るんじゃねぇ!」
「僕におこ(怒)ってもしょうがないと思いますが」
「カスミのやつめ。つまらねぇお芝居なんぞ考えやがって。しかも、ひとさまの前でやるつもりか」
「友だち同士じゃないですか。そんなに気にしなくたって」
「お前には判らねぇよ。オレっちの気持ちなんてな」
(このままに(逃)げちまおうか。……いや、待てよ)
目をつむっているカスミにそっと近づいて、期待させるだけ期待させてから、『なにやってんだよ、お前は!』って、どなりつけて頭つきをかますという手もある。いきなり首をしめて身体をゆさぶるっていう手もある。
(さて、と。どれにしようか)
ふと、かべにたたきつけられた過去の自分の姿が頭をよぎる。
(そうだ。これがいい。仕返しをするなら今だ)
思わす口元ににんまりと笑みがうかんでしまう。
「どうしたんですか? うれしそうな顔をして」
(さとられたらまずいな)
「あたりまえだろう。久々に幼なじみに会えるんだからさ」
「そうですよね。なにかたくらんでいるとか、そういうわけじゃありませんよね」
「ははは。あたりまえじゃねぇか。ははは」
(相変わらず、するどい野郎だ。でもまぁ。なんとかごまかせそうだ)
がちゃ。
オレっちはドアを開ける。
「ううっす」
いつものように声をかけると、ベッドに横たわっているひとりをのぞいて、部屋の全員がこちらをふりむいた。みんな、ベッドの両わきに置かれたいすに座っている。どの顔にも、なにかを期待しているように目をきらきらと輝かせている。
マリエもそうだが、レイコは、はだが白いだけに、ぽっ、と赤らんでいるほおが余計に目立って、なんとも可愛げ。
(なるほどな。みんな、『ぐる』ってわけだ)
エリカもいた。むなもと(胸元)をのぞけば、包帯を巻いているのが一目りょう然。顔色もいくぶんよくない。にもかかわらず、みんなと同じ目をしている。
(本当に……無理をおして来ていやがる。
そんなに見たいか? オレっちのぶざまな王子さまを)
『うん』とうなずいているような気がした。
女の子どもの声が聞こえる。ひそひそ話にしては大きな声。聞えよがしにしゃべっているとみた。
「ねぇ。来たわよ。でも本当に彼、知っているの?」
「ネイルがしゃべったはず。エリカ、心配はいらない」
「よぉくにげださなかったでちゅわあぁぁん。わたちぃ。感激でっちゅう」
「でも、本当にやるのかしら」
「ためらうなら強引に、という手もある」
「レイコっち。あんたにしては、めずらしく乗り気じゃない。どうして?」
「くやしさをまぎらわせたい」
「はて? なんかあったの?」
「リイゼルが怪しい。そうにらんでいた」
「へぇ」
「で、調べてみた」
「ふぅん。そんなことをやっていたの。それで? なにかつかめた?」
「村役場の書庫に死神の鎌関連の本をきぞう(寄贈)したのが彼女だと判った」
「そうだったんだ」
「住所不明だった彼女の家をつきとめた。あと、カマギラの研究をしていたこともつかんだ」
「たいしたもんね」
「ネイルたちが行く数日前に、彼女が霊山『亜矢華』に登ったのを確認した」
「すごいじゃない。ああでも、それってレイコっちがひとりで調べたの?」
「ちがう。マリエといっしょ」
「あっ、マリエっちも関わっていたんだ」
「そおぉでぇぇちゅ」
「知りえた情報を元にひとつひとつきつもん(詰問)していくつもりだった。追いつめられると思った。ところが」
「ソラちゅわぁんに先をこされたってわけなんでちゅよぉ」
「『わりいな。その件はもう片づいちまったぜ』と上から目線で、さらっ、といわれた。くやしくてその晩はねむれなかった」
「『それは残念』というべきか。はたまた、『ごしゅうしょう(愁傷)さま』というべきか……。まぁ、なんにせよ、おつかれさまでした」
「無念を晴らしたい。もうしくじりたくない。それに」
「それに?」
「どんな風にせまるか興味がある。ぜひ参考にしたい」
「あんたがせまるの?」
「せまらなきゃ進まないかもしれない時は。彼、おくて(臆手)かもしれないし」
「だれの話?」
「大丈夫ぅ。わたちはレイコの味方でちゅわぁん。ずっとそばにいてあげてもいいんでちゅよぉ」
「えんりょしておく」
「うぅそぉ。やっだぁ。本当にぃ? つれないでちゅわああん。なら、エリカちゅわぁんは、どうでちゅかあぁ?」
「自分もえんりょしておくわ」
「うっそぉ!」
「にしても、あの顔で王子さまって……ぷふっ」
「顔は極悪非道。でも心は王子さま。この落差が女心をそそるのかも」
「レイコっち。じゃあ、カスミっちがそうだってこと?」
「わたちぃにも落差にゅわらぁありまちゅうよぉ」
「へぇ、マリエっちがねぇ。それで? 一体どんな?」
「見っかけは、かうわいい女の子でちゅわあぁん。でも中身ぃっはディィルュッドぉっ」
「はいはい」
「しっ。だまって。ほら、近づいてきた」
「いよいよ、始まるってわけね。いざとなったら加勢するわよ。
ようするに、ぶちゅっ、とさせればいいだけでしょ?」
「もちぃろぉん、わたちも手伝いまちゅよぉ」
「ありがとう、エリカ、マリエ。感謝のきわみ」
オレっちは目をつむった。
無念無想。聞こえてくる女の子どもの会話を意識の外に追いやると、ある答えを探し求めた。
暗いやみの中、答えはどこかと頭をめぐらす。そして……答えが出た。オレっちは目を開く。
(へん。お前らの思いどおりになってたまるかよ)
ねているカスミと話すのにちょうどいい席には、だれも座っていない。しかもすぐこの席に座れるよう、いすの両わきには不自然すぎるくらいの空きがある。
(ここまでぶたい(舞台)が整っているとはな)
オレっちは、自分のために……だと思うが……用意されたいすの前に立つ。
カスミの顔をながめた。ぴくぴくと動くまぶたのふちに、ほんのりと赤らめたほお。ひと目で、『うそね(嘘寝)』と判る。横からも見てみた。くちびるをちょっとつきだしているのがよく判る。まるで、『いつでもいらっしゃい』とさいそく(催促)されているような、そんな気配が、ひしひし、と伝わってくる。
(こうまでしてやりたいものかねぇ。判らねぇな。女心はよぉ)
ちょっと視線を遠のけて身体全体に目を向けてみる。身体が小刻みにゆれていて、心なしか強張っている風にさえ思えてしまう。
(こいつ、意識しすぎだぁ)
カスミがねているベッドに両手をつく。顔を間にはさむ感じで。少し身体をかがめ、顔をそっと近づけた。
(よぉし。始めるか)
先ほどの無念無想の中、ひとつの答え、いや、真理にたどりついていた。それは。
(期待は……うらぎるためにある!)
深呼吸を一回したあと、オレっちは……思いのたけをぶちまけた。
「カスミぃ! もういっぺん、死んでこぉい!」
オレっちは予定した行動にうってでる。両手でカスミの左手を、むんずとつかむと、せおいなげの姿勢へと転じた。
「どりゃあ!」
「……ソラ! 王女さまをあま(甘く)みないでっ!」
カスミの声がやっと聞こえた。ここは、『よかったぁ、ほっとしたぁ』とすべきなのだろうが……、それどころじゃない。
あまくみてしまった。おかげで……。
(いや、やめておこう。想いだしたくもない)
ただこれだけはきもに命じた。『やっぱり強いな。こいつは』と。
(ほんの軽いじょうだん(冗談)のつもりでやっただけなのにな。
カスミのやつ、本気になりやがったぜ)
天空の村にしてはめずらしく、朝からやたらと寒かった。だのに、今はなぜかぽっかぽっか。窓から陽の光が射しこんできたせい、とも思えてくる。
(周りがやたらとさわがしいなぁ。あれぇっ。なんかつぶしたのかぁ。頭の後ろがぐっしゃりとぬれているみたいだ。あとでふ(拭)いとかなきゃな)
頭から首筋へとなにかが伝ってくる。でも、あまり気にはならない。
(……にしても暖かい。平和だなぁ。世は全てこともなし、か)
どうにもねむくてたまらない。
(人間は死んだらどうなるんだろう)
ねむけにおそわれながら、がらにもないことを考えていた。
かべにめりこんで動けなくなったままの姿で。
お・し・ま・い。 ……だっ!
「がっしょう(合掌)、にゃん!」
「がっしょう(合掌)、だわん!」
「……おい」
「まさかにゃあ。『5』番目にて、主人公の死で終わるとはにゃ」
「初のできごとだったわん」
「……お前ら」
「おいたわしいことにゃん。つつしんでおくやみを申しあげるのにゃん」
「おいたわしいことだわん。つつしんでおくやみを申しあげるわん」
「……死人あつかいしやがって、くそおもしろくもねぇ。
オレっちはまだ生きているっていうのによぉ」
「にゃんか、ぶつぶついっているのにゃ……。
にゃあ、ソラにゃん。あのエピローグじゃあ、どうしたって、『お亡くなりになっている』って考えるのがふつうだと思うのにゃけれども」
「本当本当。疑問のはさむ余地がまったくないわん」
「あのなぁ。現にこうやって命びろいをしたんだ。助かったんだ。
『大丈夫?』とか『どこか痛いところはなぁい?』って身体を気づかうのが、常識ってもんだろうが」
「といわれても。にゃあ、ミーにゃん」
「ねぇ、ミアン」
「なんだよ。なにがいいたい?」
「いわなきゃ判らないようにゃから、いうのにゃけれども。
あのにゃあ、ソラにゃん、自分が悪いのにゃろ? ベッドに横たわっているカスミにゃんをいきにゃり、なげとばすにゃんて」
「そうそう。ところが、カスミさんは床にしっかりと着地。反対に、せおいなげでかべ(壁)にたたきつけられちゃったのよねぇ。はたから見たらアホそのものだわん」
「やい、お前ら。いい加減にしろよ。オレっちはな。入院かんじゃ(患者)さまだぞ。大けがしているんだぞ。もう少し、いたわったらどうなんだ」
「自業自得にゃん」
「自業自得だわん」
「うるせぇ! っていうか……とにかくっ!、
話はいいから、さっさとオレっちのおなかからおりやがれぇ!
そして早くここから出て……ううっ!」
きゅうぅっ。ばたん!
「うわっ! あわ(泡)ふいて、ぶったおれてしまったわん!」
「大変にゃ! ミーにゃん。ウチはネイルにゃんを連れてくるのにゃ」
「じゃあ、アタシも」
「待つのにゃ。ウチがもどってくるまでにソラにゃんがお亡くなりにならないともかぎらにゃいから、ミーにゃんはここで留守番にゃ」
「いやだわん。死体なんかといっしょにいたくないわん。アタシも行くわん」
ずぼっ。ずぼっ。
「あっ、ミアン」
「どうしたのにゃ? ミーにゃん」
「入った時は気がつかなかったんだけどね。ほら、ドアの前に張り紙が。
ええと……、『絶対安静につき、面会謝絶』って書かれているわん」
「ミーにゃん。ウチらは急いでいるのにゃよ。そんなくだらないものを読んでいるひまはないのにゃん」
「それもそうだわん」
「にゃら行くにゃよぉ」
「判ったわん」
たったったったったっ。
ぱたぱたぱたぱたぱた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ミーにゃんミーにゃん」
「なぁにぃ? ミアン」
「ここは今のウチらから見れば、未来にあたる空間にゃよ」
「うん。まちがいないわん」
「こんなところに来てしまっていいのにゃろうか?」
「仕方がないわん。ここでのお話は『天空の村』の最新作。今の時点では最終作品になるわん。なのに、よ。アタシたちのおしゃべりがない、っていうのは、なんとも無理があるわん。でしょ?」
「にゃあるほど。ミーにゃんのいうとおりにゃん。『天空の村』全作品をとおしてのヒロインたるウチらがいにゃければ、どうにもならないのにゃん」
「もっとも……。過去のアタシたちが未来へ必要以上に近づくのは、どうかとも思うわん。だから、気をつけたほうがいいかもね」
「いや。ウチはかまわないと思うのにゃよ。過去の生きものが未来に、逆に未来の生きもの物が過去にかんしょうしても大丈夫にゃん」
「へぇ。初めて聞いたわん。ぜひとも、その理由を教えてほしいわん」
「実は……ネタばれににゃるからくわしくは話せないのにゃよ」
「えっ。どういうこと?」
「この理由に関しては、さるところで説明しているのにゃん。
でもにゃ。とりあえず話しておくとにゃ」
こしょこしょこしょ。こしょこしょこしょ。
「というわけなのにゃよ」
「ええっ! それってぼう大な数になるわん。あまりにも無茶な考え」
「なのにゃけれども、そうなのにゃん。にゃから、さっきいった過去もしくは未来へのかんしょうも、決してにゃにかを変えることにはならにゃい。どんな未来も存在するのにゃから。ある未来から別な未来の空間へ移動するきっかけを造った。ただそれだけのことにゃん」
「でもさ。それって証明できるの? ミアン。こんきょ(根拠)となるものをなにか示すことができるの? じゃないと単なる絵に描いたもちだわん」
「さるところでのミーにゃんも同じようなことをいっていたのにゃ」
「へぇ。それでどうなの?」
「手っとり早くいえば、なにもにゃい。大体これを最初に口にした時から、だいぶ経っているからにゃ。自分がしゃべっていることさえ、にゃにがにゃんだか判らなくなってしまっているのにゃん」
「なぁんだ。それじゃだめじゃん」
「まぁ、そこは、にゃ。『ねこあたま』ということで許してほしいのにゃけれども」
「いいわん。アタシとミアンは長いつきあいの親友同士。それで手をうってあげるわん」
「ミーにゃん!」「ミアン!」
ひしっ。
「にゃあ、ミーにゃん。ウチらはこれまでに何回、許しあったのにゃろう? そんでもって何回、こうやってだきあったのにゃろう?」
「きっとたくさんだわん。そしてこれからも」
「うんにゃ。ウチもそう思うのにゃよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ねぇ、ミアン。これから『天空の村』のお話はどうなるの?」
「多分、過去のお話を、って、ことになるのにゃろうけれども。果たしてにゃにが」
「というわけで……、満を持して私の出番となります!」
「マリアにゃん!」「マリアさん!」
「『天空の村』全作品をとおしてのヒロイン。それがこの私です」
「えっ。アタシじゃなかったの?」「てっきり、ウチだと思っていたのにゃけれども」
「ふふっ。いいですよ、みなさん。心の中ではだれもが主人公なんですから。
でもね。……本当のヒロインはこの私です!」
「いい切られたしまったのにゃん!」「いい切られてしまったわん!」
「天空の村では最初にいい切った生きものが全ての権限を持つ。となれば、にゃ」
「うん。マリアさんで決まり、ってことになるわん」
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
「ミアンさん、ミーナさん。認めていただいてありがとうございます」
ぎゅう!
「うわんにゃ! 急にだきしめないでほしいのにゃけれども」
ぎゅう!
「うわぁん! 本当本当。びっくりしたわん」
「えへへっ」
「それじゃあ、みなさん。次回のお題を声をそろえていいましょう」
「うんにゃ」「任せてほしいわん」
「いきますよぉ。せぇのぉっ!」
「天空の村4『天空賊の襲来』!」
「ところでマリアにゃん。いつごろから始まるのにゃん?」
「ミアンさん。うふん。
人は未来を予測することができるかもしれませんね。でも、知ることはできませんよ」
「ふにゃあ!」
「ミアンと同じようなことをいっているわん」
「……次回も我の出番(天空の村3『ガラン・ドール』)ではなさそうだ。しかも話の内容から察するに、いつ始まるか、それさえもまだ定まらぬよう。となれば……、
ふぅ。我が陽の目を見るのはいつのころに。
まぁ、『4』にも出ているから、かまわないといえばかまわないが……」




