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第03.5話 画策する研究者

 突然で失礼だが自己紹介させてもらう。私は高天原第一総合病院院長にしてネクスト研究部の統括主任。一言「これ以上は無意味だ」と言えば研究だけでなく実験、開発、スカウティングなどネクスト関連のすべてが凍結させれるぐらいの地位の、事実上高天原の存在意義を決める人間だ。自慢ではない、事実だ。


 本国、つまり日本列島にいる時は人体を専門にする医科学者で、いつも着ている黒い白衣から、なんと呼ばれていたかな、まあそれなりに名の通っていた人間でもあって、高天原創成メンバーとして選出されて今に至る。当時はなぜ理系の私が文系の独壇場であろう建国の話に誘われたのか分からなかったが、ここの正体を知ればその意味が納得できるだろう。


 私は、この狂った国に終止符を打ちたいと思う。


 世界を知るという大義名分の元で子供たちを実験台にする国を、狂っていると言わずになんと言う?


 それに、ここにいる子供たちは誰もが夢を抱いているわけではない。自分より才能に溢れた人間を見て意気消沈したり、能力が頭打ちになって悩む子供たちもいる。


 できればそういった子供も救いたいが、私が真に救いたいのはその両極に位置する子たち。つまり才能がありすぎる子となさすぎる子だ。


 私が知っているのは二人。その子たちは誰よりも大きく濃く深い闇を胸に抱いていて、いつか自壊することが目に見えていた。一目見た時から、私はその子たちを救おうと心に誓った。


 たとえ、何を利用しようともな……。


 おっとチャイムの音だ。どうやら私の部下が来たようだ。


 エレベーターのドアが開かれて入ってきたのは、たくましい体を和装で包んだやや老け顔にボサボサちょんまげの少年と、メッシュ入り金髪にジーパンタンクトップ、首元にはヨルムンガンドの刺青タトゥーというヴィジュアル系な少年のあらゆる意味で凸凹な二人だった。


「ただいま参りましたぞ」

「おーいバーさん・・・・来てやったッスよー♬」

「この私をバアさん呼ばわりできるのは君ぐらいだろうな。よく来てくれたなハカリくんに戦兵衛センベエくん」

「ったくよー、その中年男臭いしゃべり方やめろっつってんじゃないッスか。せっかくそんなキレーで若い見た目してんスよ? もったいないったらありゃしねーよ」

「それは私を誘ってるのかね。だとしたら喜んで受け入れよう」

「ハッ。俺ァ二十代のよーな見た目のババアより普通の二十代がいーッスね♫ つーかバケモンか神サマの親戚かなんかかよアンタは」

「こら天野、うぬは先生になんという口を聞くのじゃ」

「ヘーヘーサーセンでしたー」

「君たちを呼んだのは他でもない。少し問題が発生した。それの解決に取り掛かってもらいたいのだ」


 私はあらかじめ用意していた二枚の写真をそれぞれに渡した。


「この男は……」

「あん? 俺のはともかくベーやんのに写ってるヤローは誰だ? べーやん知ってっか?」

「皆目知らぬ。ただ、この国に似合わぬ平凡さ、いや無能さが臭えるが……先生、この男を儂はどうすれば?」

「戦兵衛くんはその写真の少年を殺したまえ。詳しいことはこの資料に書いてある。計くんはこれから私と一緒に脱走したその娘の確保に向かう。ついてきたまえ」

「御意」

「あいよー」


 ブリーフィングをまとめた資料を戦兵衛くんに渡すと彼は颯爽と窓から飛び降り、計くんは欠伸混じりに私の後をついてきた。


 あの娘が選んだ人間が、まさかあの少年だとは。フフッ、面白くなってきたじゃないか。


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