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第二十三話 街の創始者パラスティックペリドット


 清々しい朝の空気を吸い込み、美しい青の瞳が気持ち良さそうに閉じられる。そして再び目を開けたユークレースは、ゆっくりとシキオンの街中を歩き出した。


 散歩しているCCクリソベリルに遭遇したら挨拶を交わし、ベニトアイトたちのパン工房に寄って新作のパンを頂戴する。カフェのような共有スペースの前を通れば、窓辺には今日も硝子の一輪挿しに薔薇が生けられていた。


 そんな風にして歩くユークが辿り着いたのは、どこか神秘的な雰囲気の建物。優しくて不思議なエネルギーに満ちた、街の創始者パラスティックペリドットの居処である。


「いらっしゃい、ユークレース。今日は美味しいおやつがあるんですよ」

「ありがとうございます、ピーさん」


 何の約束もしていなかったが、ペリドットは当然のようにユークを迎えてくれた。太陽のような暖かさを感じる黄緑色の瞳が淹れてくれるお茶は、今日も玉露である。


「街にはもう随分、慣れたようですね」

「はい、お陰様で。毎日、凄く楽しいです」

「それは何よりです。貴方とシキオンの縁は、とても自然でしたから」


 そう言って柔らかく目を細めるペリドットに、ユークも穏やかな笑みを返した。そのまま彼女は、静かに言葉を続ける。


「ピーさん。私、日本産の宝石なんです」


 ユークには、この街に来る前の記憶がなかった。自分という存在についてはそれなりに覚えているものの、ここまでの道筋が分かっていない。しかし彼女は持ち前の深く考えない性格により、今も特に気にせず過ごしている。

 ただ何となく、己の好むものに傾向があることに気づいたのが最近。そうして不意に蘇ってきたのが、自分の源流だった。


「日本由来のものによく惹かれるんですけど、それって自分の礎から影響が来てたみたいです。理由が分かると、それはそれでスッキリするなって思いました。他は相変わらずあんまり思い出せないんですけど、そこは『まあ、いっか』って感じで」


 いつかのようにへらりと笑い、ユークは優しく耳を傾けてくれるペリドットを見つめる。


「ピーさんの言う通り、私がシキオンの街と縁があって来たのは確かだと思います。他の皆さんと一緒ですね。だから私も、これからもこの街に居ても良いですか?」


 記憶があろうと無かろうと、この場所が好きだ。

 そんなユークの真っ直ぐな気持ちが伝わって、ペリドットはじんわりと心が温かくなる。


「勿論です。ここは貴方のような宝石に、のんびり過ごして欲しくて創った場所なのですから」


 これだから守りたくなるのだ。と、ペリドットは思う。

 この地と縁を持ち、『彼女』が大切に想う宝石たちのことを。


「えへへ、ありがとうございます」


 嬉しそうなユークと微笑み合うペリドットの瞳には、ユークを含め、沢山の宝石が街でのどかに過ごす様子が映っていた。

 シキオンの宝石たちに新たな思い出が積み重なっていくのは、また別の話。



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