表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/23

第十話 防御と守護のサファイア


 街の一角にある、落ち着いたカフェのような共有スペース。

 大きな窓から暖かい日差しが降り注ぐここは、誰でも自由に使用できる場所だ。割と本格的なキッチンも備えられている。


「今日の玉露も大変美味ですね。サファイアさんの創り出す清らかな水が、お茶の味をまっすぐに伝えてくれています」


 今日は誰もいない広々としたスペースで、鮮やかな緑の瞳をした宝石のトルマリンが言った。瞳の虹彩に桜の模様をきらめかせる彼女の、薄茶色のポニーテールが僅かに揺れる。


「あ、ありがとうございます。お気に召して頂けたなら、何よりです」


 そんな惜しみない称賛にはにかむのは、トルマリンの向かいに座る女性。深く美しい青の瞳の虹彩に桜の模様を宿す、艶やかな短い黒髪のサファイアだ。

 彼女はいわゆる四大元素の水の能力を有しており、美味しい水を創り出すことができる。


「でも、お茶を淹れたのはマリンさんですから……淹れ方がお見事だからですよ」

「お褒めに預かり光栄です。では、私たちと素材の力のコンビネーションという訳ですね」


 ふわりと微笑むトルマリンに、サファイアもつられて『そうですね』と笑みを返す。

 そんな穏やかなひと時に――


「トルマリーン!! 助けてえーー!!!」


 嵐のような叫びと勢いで、一人の宝石が共有スペースに飛び込んできた。


「うわ、ここめっちゃ気持ちいい! 暑くない! 寒くない!」


 ――助けて、という第一声は何だったのか。

 と、突っ込みたくなるほどの切り替えで感動する彼女は、コーネルピン。瞳の色をくるくると変えながら、スペース内をきょろきょろと見回している。


「コーネルピンさん、どうかしましたか?」

「こんにちは、ルピンさん」

「トルマリン、流石だよねー。サファイアもヤッホー!」


 トルマリンたちに近づくルピンは、元気な笑顔で二人に手を振った。彼女が流石と言ったのは、共有スペースの空気についてである。風に関する強い魔力を持つトルマリンは、エアコンの如く空間の空気を調和させることが可能だ。よって現在の共有スペース内は、常に快適な温度や状態に保たれている。


「恐れ入ります。ところで、手に持っていらっしゃるのは……ソーラーマスコットでしょうか?」

「あっ! そうそう、これ見てトルマリン!」


 トルマリンが尋ねると、ルピンはようやく用件を切り出した。そうしてトルマリンたちの前に差し出されたのは、デフォルメされた恐竜が可愛く揺れる、ソーラーマスコットである。


「可愛いですね」

「でしょー?」


 サファイアが微笑んで感想を言えば、ルピンは嬉しそうに笑った。

 これはルピンが最近、外界のおもちゃ屋で購入してきたものらしい。しかしお気に入りだったそれは今日になって、光を浴びても動かなくなってしまった。ソーラーパネルで発電するのだから、光さえあれば動くはずなのに。


「…って訳で、電気と電化製品に強いトルマリンに直して貰おうと思ってさ」

「なるほど、事情は把握致しました。マスコットを少々、お借り致します」


 ルピンからマスコットを受け取ると、トルマリンは小さく電気エネルギーを通してみる。彼女は和名を『電気石』と言い、摩擦などによって静電気を帯びる性質がある宝石だ。電気に関連する優れた能力に加え、機械にも精通している。


「電気回路の途中で、コーネルピンさんの変身能力のエネルギーが膜を張っています。この膜が絶縁体になっていて、電流を遮っていますね。マスコット自体に故障は見当たりません」

「えっ、私、何もしてないよ!?」

「このマスコットの近くで、ルピンさんが変身したりとかは……」


 サファイアに尋ねられ、ルピンはハッとして彼女を振り返った。


「いっぱいしてる! そっかぁ、私のエネルギーがこの子に飛んじゃって、変な風に『変身』しちゃったんだ」

「そのようです。ですから、このエネルギーを取り除けば直るかと」


 そう言いながらトルマリンは、パチッと自身の電気エネルギーで絶縁体の膜を貫く。すると膜になっていたエネルギーは消滅し、マスコットがゆらゆらと動き出した。


「動いた! やったー、ありがとうトルマリン!」

「とんでもございません。お役に立てて何よりです」

「良かったですね、ルピンさん。あの、もし宜しければ、外部からの干渉を受けないように防御をかけても……?」


 歓声を上げるルピンにサファイアが提案すると、ルピンは勢い良く首を縦に振る。


「是非是非! ありがとう、サファイア!」

「じゃあ、かけておきますね」


 ルピンの返事に、サファイアは安心したように微笑んだ。

 サファイアはダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、高い靭性も誇る強靭な宝石である。防御に関連した魔力が卓越する彼女は、様々な守護を得意としていた。


「外部エネルギーからの保護と、物理的な衝撃にも耐えられるようにしています」

「わあ、何かリュウちゃんが凄い強くなった感じする!」


 繊細な防御が施されたマスコットを見つめ、ルピンがまた瞳の色を変化させている。ちなみにリュウちゃんとは、ソーラーマスコットの恐竜のことだ。


「流石です、サファイアさん。それにしてもソーラーマスコットというのは、癒されるインテリアですね」

「トルマリンも欲しい? それならオススメのおもちゃ屋さん、あるよ!」

「あ、私も欲しいです」


 そうして後日。

 トルマリンとサファイアがソーラーマスコットを探しに行くのは、また別の話。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ