4-20「初の出動」
協力任務の最初の依頼は、意外なほど地味だった。
その中でクレージュはどう行動するのか…
すべての人々が注目していた。
協力任務の最初の依頼は、意外なほど地味だった。
「南門付近、魔物三体出現」
報告は簡潔だ。
だが場所が悪い。
王都外縁とはいえ、商隊の出入りが多い区域。
「六彩殿、出動可能ですか」
軍部の若い伝令が、やや緊張した様子で問う。
“殿”。
もう、ただの少年ではない。
クレージュは小さく頷いた。
「行きます」
城門へ向かう途中、視線が刺さる。
兵士。
魔導士。
民衆。
好奇心と、期待と、警戒。
(枠の中)
自分の立場が、はっきりと分かる。
南門外。
魔物は三体。
大型ではないが、動きが異様に速い。
「影牙種か」
フレイが低く言う。
「数は少ないが、油断するな」
衛兵がすでに応戦している。
だが押されている。
クレージュは一歩前に出た。
(六彩を使えば、一瞬)
火で囲み、風で圧縮し、土で拘束。
だが――
(違う)
これは“証明の場”。
六彩に頼らなくても守れると、示す場。
「フレイさん、左を」
「任せろ」
「アーニャ、後衛支援」
「了解」
クレージュは風を選ぶ。
足元を滑らせる程度の圧。
影牙種の一体が体勢を崩す。
そこへ土でわずかに足止め。
フレイの剣が、正確に急所を断つ。
二体目が跳ぶ。
雷を使えば早い。
だがクレージュは水を選ぶ。
空気中の湿気を一瞬凝縮。
視界を曇らせる。
その隙にアーニャの短剣が走る。
残る一体。
衛兵が倒れかける。
(間に合え)
今度は光。
だが最小出力。
一瞬だけ目を焼く閃光。
魔物が怯む。
その隙に、クレージュ自身が踏み込む。
剣を抜く。
六彩ではなく、ただの剣技。
鋼が交差し、
最後の魔物が崩れ落ちた。
静寂。
風が、城門を抜ける。
「……終わりだ」
フレイが息を吐く。
衛兵たちが立ち上がる。
一人が、呟く。
「六彩は……」
「使ってない」
魔導士が言う。
「最小属性運用のみ」
軍の監視官が、冷静に記録する。
クレージュは、剣を収めた。
息は荒れていない。
だが胸はざわついている。
(今なら、全開できた)
でもしなかった。
それは抑制ではない。
選択。
城門の上から、誰かが見ていた。
白光の王女。
リシェルは、静かに目を閉じる。
(あなたは……)
強さを誇示しない。
必要以上に使わない。
枠の中でも、自分で決めている。
南門の民衆が、小さく拍手を送る。
歓声ではない。
安堵。
それが一番大きい。
軍部代表は報告を受け、低く言った。
「……扱いづらいな」
魔導院長はわずかに笑う。
「理想的だろう?」
エイドは塔の上で呟く。
「……制御は完璧だ」
だがその目は、まだ試している。
六彩の少年は、
枠の中で動いた。
だが枠に従ったわけではない。
第四章は、ここで新段階へ入る。
制度は整った。
実力も証明された。
次に揺らぐのは――
思想か、それとも真実




