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幕間「管理者の見る未来」

エイド視点で見たクレージュや六彩について。

どんな思いがこの管理者にはあるのか。

夜明けの風は、冷たい。


 丘の上に立ち、

 エイド=クロウフォードは

 遠くの街を見下ろしていた。


 ルーン塔の白い影が、

 朝の光に浮かび上がる。


(……六彩)


 その言葉は、

 彼にとって

 希望でも、憧れでもない。


 統計だ。

 結果だ。

 失敗の積み重ねだ。


 エイドは、

 腰の魔導端末を起動する。


 淡い光の中に、

 いくつもの記録が浮かぶ。


『六彩・記録第七号』

『都市消失』


『六彩・記録第十二号』

『精神崩壊』


『六彩・記録第二十一号』

『管理失敗/殲滅』


 彼は、

 それらを一つ一つ、

 無言で閉じていった。


(……全員、

 最初は“いい子”だった)


 家族を守ろうとした者。

 国を救おうとした者。

 誰かを癒そうとした者。


(だが、結果は同じだ)


 



 


 エイドの脳裏に、

 十五年前の光景がよみがえる。


 ――灰色の村。


 家々は崩れ、地面は焼け、人の声は、もうどこにもなかった。


 中心に立っていたのは、

 一人の少年。


 六彩に包まれ、泣きながら、

 必死に何かを叫んでいた。


(……遅すぎた)


 あの時、

 エイドは判断を誤った。


 「様子を見る」

 「成長を待つ」


 その“優しさ”が、

 何百人もの命を奪った。


 だから――彼は決めた。


(もう、同じ過ちは繰り返さない)


 



 


 ルーン塔を、再び見る。


 あの少年――クレージュ。


 六彩を恐れ、拒み、

 それでも学ぼうとする存在。


(……異常だ)


 六彩は、

 選択を許さない。


 力が、

 人を引きずる。


 意思など、摩耗する。


(それでも、彼は“選んでいる”)


 エイドは、目を細める。


(だからこそ、危険だ)


 もし彼が成功すれば――

 六彩は“希望”になる。


 だが、

 もし失敗すれば――


(……世界は、二度と耐えられない)


 背後で、

 気配がした。


「……迷っているようですね」


 部下の声。


「迷ってはいない」


 エイドは、即座に答えた。


 


「だだ、判断を急がないだけだ」


「管理に、移行しますか」


 エイドは、しばらく黙り――

 首を振った。


「……まだだ」


「彼は、境界線に立った」


「越えたのではない」


「今はただ踏みとどまっているにすぎない」


 部下は、息を呑んだ。


「……例外を?」


「例外ではない」


 エイドの声は、

 低く、重い。


「最終確認だ」


「彼が――」


「世界よりも、誰かを優先した瞬間」


「その時は、私が手を下す」


 



 


 丘の上に、

 風が吹き抜ける。


 エイドは、背を向けた。


(……フレイ)


 かつて、

 同じように“希望”を信じた男。


 同じように、

 剣を捨てた男。


(お前と、同じ道は行かせない)


 それが、

 彼なりの慈悲だった。


 


──管理者は、

 冷酷ではない。


 


──ただ、

 結果を知っているだけだ。


 


──そして彼は、

 その責任から、

 逃げない。

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