7-48「臨界観測」
『干渉、成立』
その一言で、空気が変わった。
さっきまでの“測る側”の余裕が消えている。
代わりに生まれたのは——
“確かめるための本気”。
「……来るぞ」
クレージュの声が低く落ちる。
直後。
空間が、音もなく“折れた”。
「な——!?」
フレイが言葉を失う。
さっきまでの歪みとは次元が違う。
ねじれじゃない。
“折り畳まれている”。
距離が、消える。
回避という概念が、成立しない。
『臨界観測、開始』
その瞬間——
全員の身体に、重圧が叩きつけられた。
「ぐっ……!!」
膝が沈む。
空気が重いんじゃない。
“存在そのもの”を押さえつけられている。
「これ……やばい……!」
マリアの声が震える。
防御も回避も意味をなさない。
ただそこにいるだけで、削られていく感覚。
『出力調整——上限解放』
淡々とした宣言。
その直後。
“それ”の密度が、跳ね上がった。
姿がぶれる。
いや、違う。
“情報量”が増えすぎて、視認できない。
「……見えねえ」
エイドが低く呟く。
だが、次の瞬間には——
来ていた。
誰にも見えないまま。
クレージュの横腹に、衝撃が叩き込まれる。
「がっ……!!」
吹き飛ぶ。
地面を抉りながら転がる。
「クレージュ!!」
声が飛ぶ。
だが、追撃は止まらない。
見えない。
読めない。
リシェルの“予兆”すら——追いつかない。
「間に合って……ない……!」
リシェルが歯を食いしばる。
認識のさらに先。
“予兆の前の段階”で動かれている。
「ちっ……!」
フレイが踏み込む。
勘で、振るう。
だが——空を切る。
その直後、背中に衝撃。
「ぐっ……!」
「フレイ!」
連鎖的に崩されていく。
対応できない。
完全に、一段上の領域。
『適合率、低下』
その声が、冷たく響く。
まるで——失望するように。
そのとき。
「……まだだ」
低い声が、土煙の中から響いた。
クレージュが、ゆっくりと立ち上がる。
息は荒い。
ダメージは確実にある。
それでも——
目は、死んでいない。
「まだ……終わってねえ」
拳を握る。
その瞬間。
空気が、わずかに震えた。
『……反応増大』
まただ。
向こうが、わずかに引っかかる。
理解できない何かに。
クレージュは、ゆっくりと顔を上げた。
「見えないなら——」
一歩、踏み出す。
「見えるようにしてやる」
「……は?」
フレイが思わず声を漏らす。
次の瞬間。
クレージュの周囲で、魔力が“広がった”。
放出じゃない。
展開。
空間そのものを、塗り潰すように。
「これは……」
ティロが息を呑む。
「領域……?」
「違う」
クレージュが低く答える。
「“観測される側”のやり方だ」
魔力が、空間に満ちる。
見えないものを——
“浮かび上がらせる”ために。
その瞬間。
ほんの一瞬だけ。
“それ”の輪郭が、滲んだ。
「……いた」
クレージュの目が細くなる。
笑う。
「捕まえた」
踏み込む。
次の一撃は——
“届く”。
お読みいただきありがとうございます。
昨日は体調不良で投稿できませんてました。
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