7-45「観測への拒絶」
『高反応個体、複数確認』
その言葉が、頭の内側に沈む。
評価されている。
測られている。
まるで——実験材料みたいに。
「……ふざけんなよ」
小さく、だがはっきりとクレージュが吐き捨てた。
全員の視線が集まる。
だが、クレージュは空を見上げたまま、目を逸らさない。
「勝手に見て、勝手に測って……それで終わりか?」
応えるはずのない“何か”に向けて、言葉を投げる。
それでも——
無視することは、できなかった。
このまま黙って観察されるだけなんて、ありえない。
『——応答、確認』
返ってきた。
わずかに、間を置いて。
それは初めての変化だった。
ただの観測ではない。
“会話”が成立している。
その事実に、空気が張り詰める。
「クレージュ、やめろ。あいつのペースに乗るな」
エイドが低く制止する。
「分かってる」
短く返す。
だが、止まらない。
「でもな……ここで黙ったら、“そういう存在”だって認めることになる」
「……」
「俺たちは、ただ見られて終わる側じゃない」
言い切った。
その瞬間。
空気が、わずかに歪む。
さっきとは違う。
もっと——直接的な圧。
『意思、強度上昇』
声が、ほんの少しだけ変わった。
ほんのわずか。
だが確実に——“興味”が混じる。
『対象、再分類』
「……分類?」
ティロが低く繰り返す。
嫌な予感しかしない言葉だった。
『観測対象から——干渉対象へ移行』
次の瞬間。
世界が、弾けた。
「っ!?」
地面が消える。
いや、違う。
感覚が切り離された。
視界が真っ白に塗りつぶされる。
上下も、前後も分からない。
「離れるな!!」
クレージュが叫ぶ。
だが——
手応えがない。
仲間の気配が、一瞬で遠のく。
『分離処理、開始』
「……ちっ!」
舌打ちが漏れる。
やられた。
これは——
「試験、ってことかよ……!」
その言葉に応えるように。
白い空間の中に、“影”が一つ、形を成す。
ゆっくりと。
確実に。
逃げ場はない。
これは戦闘でもない。
訓練でもない。
もっと冷たいものだ。
選別。
選ばれるか、切り捨てられるか。
その境界線の上に、今——立たされている。
クレージュは、静かに息を吐いた。
恐怖はある。
だが、それ以上に——
「……上等だ」
口元が、わずかに歪む。
こんな形で、誰かに値踏みされるなんて。
気に入るわけがない。
なら——
「ぶっ壊してやるよ。その基準ごとな」
白の中で、魔力が灯る。
試すつもりなら——
試される側にも、やり方がある。
その瞬間。
影が、動いた。
お読みいただきありがとうございます。
次回もお楽しみに。




